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アジア最終予選が教えてくれた(#サッカー日本代表観戦記)

なにやらnoteで「#サッカー日本代表観戦記」という企画がはじまったようで、日本サッカーファンの端くれとして、ちょっと参加してみようと思い、こうしてカタカタと打っております。

試合のレビュー・プレビューはもちろん、みなさんがこの試合で注目する選手やサッカー日本代表への熱い思いや、スタジアムやテレビを問わずこれまでに観戦した代表戦の思い出を綴ってください。また、自分なりの日本代表戦の楽しみ方・応援スタイルなども募集します。

という企画趣旨のようで、う〜んそうかぁと頭を悩ませましたが、
ちょっと白状しますと、最近の代表戦は「W杯やアジアカップ」のような「公式戦の本大会」意外はあまり見ていないのです。いや見ていたとしても、結構ボーッと見ていたりします。
言ってしまうと、そこまで気持ちが入らない。
もちろん、W杯はどんな時間であっても生で見ます。
アジアカップもそうです。
やっぱり本大会というのは、雰囲気含めて何か痺れるものがありまして、そこは今も昔も変わりません。

ただ、予選となるとちょっと話が変わって来てしまっているのが正直なところです。不謹慎極まりないのを承知でいうと、「予選?まぁ突破するっしょ」という慢心が俺の心に巣を作ってしまっているんですね。

1993年、当時中学2年だった俺には、自分が今のようにアジア予選をボーッと見る時代がくるなんて想像も出来なかったでしょう。

あの年は、サッカーを取り巻く環境が変わる「足音」がズシン!ズシン!と近づいているのが伝わってくるような年でしたね。

ここでもう一発、白状します。
ここまで言っておいてなんですが、当時俺は「バスケ部」でした。
そう、サッカーをプレイヤーとして経験してないんです。でも、当時、何故だかわからないんですが、俺にはサッカー部の友達が沢山いました。部活とは別に、クラスメイトとして仲の良かった奴らがサッカー部の連中だったんですね。

サッカー部の奴らが、やれ「Jリーグ」だの「W杯」だの、
カズだのラモスだの、読売だの日産だのと騒ぎ立てていたので、
「あ〜サッカー盛り上がってんだなぁ」なんて思っていました。
それで、「え、W杯って何?」から始まって、「へ〜そんなにすごい大会なんだ」となり、「え、日本って一度も出てないんだ」なんて感じで、
俺のサッカー・リテラシーも徐々に高まっていきました。

そして始まったアメリカW杯アジア最終予選。

カタール・ドーハでの一箇所集中開催。
6カ国が一回づつ戦って、上位2カ国がW杯出場という、今では考えられないレギュレーション。

そして最後のイラク戦。
勝てばW杯。

確か中継はテレビ東京だったような気がします。
あの日は何故か俺の家にみんなで集まって観よう!という事になりまして、
なんと俺以外サッカー部という、ヘンテコな環境で世紀の一戦を観戦する事になりました。

サッカー部のやつらは、みんな緊張の面持ちで試合を見つめていました。
俺はといえば、そこまでルールもわからないんで、
「オフサイドってなんやねん」とか言っていたのを思い出します。

そして試合は2-1で日本リードのまま進んでいきます。
サッカー部の連中は、それはもう胸の高鳴りを抑えきれないって感じでした。「すげー!すげー!」なんて連呼していた気がします。

ところが。
ロスタイム。今でいうアディショナルタイム。

イラクのショートコーナーからセンタリング。
世に言う「ドーハの悲劇」というやつを俺は自宅でサッカー部の連中と体験してしまったのです。

2-2になった瞬間、俺の部屋はまるで誰もいないかのように静まりかえっていました。みんな絶句。みんな今まで見た事のないような顔をしていました。顔面蒼白。目には涙。
でも、え!まだ試合終わってないじゃん!
「諦めたらそこで試合終了だよ!」とバスケ部の俺は思ったものです。今思えば、のんきなもんです。

それでも、サッカー部連中にも、日本代表にも、もう一点とる余力は残っていませんでした。そのまま試合終了。

こうして日本の挑戦はまたしても失敗に終わったわけです。

サッカー部の連中は、もうテレビなんて見てられないとばかりに、試合終了と同時にパラパラと帰っていったんですが、1人、部屋に残った俺はそのまま中継を観ていました。

実はそのあとの光景こそ、俺が最初に体験した最終予選だった気がします。

立ち上がれないカズやラモス。
中継がスタジオに切り替わった瞬間の解説者たちの顔、スタジオの雰囲気。

それとは対照的な韓国の騒ぎっぷり。

これがW杯か。これが最終予選か。

サッカーは怖い。

そして、現地に駆けつけたサポーターの応援と、
終了後の涙。

これがサポーターか。

当時の俺はサッカー部の連中よりも、少しだけ冷静にこの悲劇を体験しました。そのお陰で見えたもの、感じたもの、知った事があったんだと、今となっては思うのです。

これをきっかけに、俺はさらにサッカーにのめり込んで行くようになります。
ただしプレイヤーではなく、サポーターとして。
その後もやるのはバスケ、応援はサッカー。
そんな生活になっていきます。

そして出会った地元の赤いJクラブ。

これが決定的な出会いとなって、今も俺のサポーター人生は続いています。

ドーハから4年。

W杯の重み、痛みを知った俺は
ジョホールバルでのイラン戦を、ドーハのイラク戦とは全く違う気持ちで見つめていました。

だから、岡野のゴールは本当に嬉しかった。

俺にとってフランス大会の予選は、W杯という大会の重みを痛いほど知った上で、初めて体感した最終予選だったのかもしれません。

今、思い返してもアメリカ大会のレギュレーションは本当に厳しかったと思います。フランス大会の予選は3カ国が通過できたし、実際、日本は三番目での通過でした。アメリカ大会だったらアウトです。

そう思うと、当時は本当に狭き門でした。
日本の実力もギリギリの所だったので、それは痺れる試合が続きました。

さて、現在。

W杯に関して日本はフランスで初出場を決めて以来、6大会連続で出場しています。

日韓大会を除けば、5回、アジア最終予選を突破しています。

同時に日本の実力もアジアの中ではトップクラスに成長しました。海外組も増えました。
今ではW杯は「出て当たり前」の大会になってきています。
いや、「出なければいけない大会」といった方がいいでしょうか。

W杯に出場することが目標だった国が、数十年で、本大会でベスト4を目指す国になったのです。

レギュレーションが緩くなってきているとはいえ、これは素晴らしい進歩です。

一方、あの最終予選の痺れるような雰囲気は、あの水色のゴミ袋でいっぱいになった国立はもう戻ってこないでしょう。

しかし、実際は各大陸の最終予選は何が起きてもおかしくないんです。
イングランドやオランダなど、強豪と言われる国でも予選落ちの経験をしています。

だからこそ、気は抜けないんです。
と、口では言っていても、「まぁ平気っしょ」と思ってしまう。テレビでいくら煽られても、冷めた自分がいるのです。

もう、あの頃の最終予選ではない、と。

でも、それは同時に喜ばしい事でもあります。
W杯は夢ではなく、確実に目標となったわけです。
日本の実力が、そこまで来たという証です。

一方、今はあのドーハやジョホールバルでの感覚を本大会で味わう時代になりました。
前回大会のベルギー戦はまさに痺れる試合だったし、世界に近づいたようで、まだ遠い。そんなことを感じました。
最後のベルギーのカウンターの瞬間、テレビに向かって、「戻れーっ!」と叫んでいました。あんなに叫んだ代表の試合は久しぶりでした。

では、最終予選の価値はどうなっていくのか。

ひとつ思うのはレギュレーションの違いです。
やっぱり韓国と一度も戦わないで決まるってのも、ちょっと物足りないですね。
とはいえ、そこは日本だけの問題じゃないんでどうにも出来ないですが。
そうなると、気になるのはアジアのレベル。
近年、オーストラリアも加わって、日韓、サウジなどに加えて、カタールなんかも強くなってる気がします。
もちろん予選突破してほしいですが、アジアのレベルが上がると、日本もヤバい試合が続くわけで、そうなればギリギリの試合が続くんで、それはそれで痺れる試合が増えんのかな、とか。
ん〜これまた不謹慎な考えでしょうか。
でも、レベルの高い予選を経験することが、本大会での成績にも影響するんじゃなかろうかと思ったり。

というわけで、なんだか「昔は良かった」みたいな話になってしまいましたが、決してそんなことを言いたかったわけではないんです。
先にも書いたとおり、今の日本は強くなっています。
だからこそ、予選のハードルも下がっているわけです。

ただ、「ヌルい」と感じてしまうのも、これまた本音なんです。
やはり代表は痺れる試合を経験してほしいし、
そんな試合を見たいと思ってしまう。
だからこそ、これからはアジア全体のレベルがあがり、
「こりゃ一筋縄では突破できねーぞ」という試合が続くことが、
日本のさらなるレベルアップにもつながるはずです。

なんども言いますけどレギュレーション自体がヌルくなってるんでね。
あとは、そこに期待したいところです。

アメリカとフランスのアジア最終予選が俺にW杯の大きさ、予選の怖さ、そしてサッカーがもつ魅力を教えてくれたのは確かです。
いま、こうしてサポーターをしているきっかけにもなっています。

あの頃、選手たちは必死でした。
必死こかないと勝てない試合ばかりでした。
その必死さがこちらにもビシビシ伝わってきて、痛いほどだったのです。

今はサッカーがより戦術的になってきていますが、サッカーの魅力はエモーションな部分だと思っています。
選手とサポーターの気持ちがシンクロする瞬間ってのは、
意外とそういう部分だったりするんじゃないかと思います。

生きるか死ぬか。

そういったら大げさかもしれないけど、
俺が見たい代表戦とは、そんな試合なのです。

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