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スポンサーサイドでの価値創造の考え方【実践!スポーツビジネス道場#19】

←第18話

ポッドキャスト番組「実践!スポーツビジネス道場」の文字起こし記事です。
「実践!スポーツビジネス道場」は一般社団法人スポーツビジネスアカデミ(SBA)の公式オンラインサロン「THE BASE」が毎週木曜日に配信しているポッドキャスト番組です。
スポーツビジネス界で奮闘する若手ビジネスパーソン、酒井翼さん(東京都社会人リーグ2部所属のサッカークラブ「TOKYO.CITY.FC」でスポンサー営業を担当)が日ごろの業務での葛藤や悩み、アイディアをスポーツビジネス界の第一線で活躍し、SBA代表理事を務める荒木重雄さんに壁打ちし、成長していく様子をお届けしています。


酒井)みなさんこんにちは。TOKYO.CITY.FCの酒井翼です。
今回ちょっとお伺いしたいなと思っているのが、ちょうどチームは2020シーズンまっただ中で中盤戦を迎えているんですが、フロントは2021シーズン(来シーズン)に向けてスポンサーセールス契約更新をしている最中になります。
その中で来シーズン、より会社としても事業計画、予算を増やしていくという計画を立てているのでその中でスポンサーも今年より費用を増やしていかなきゃいけなく、既存スポンサー含めて値上げ含むアップセルをしていかなきゃいけないというところがあるので値上げの交渉をどうするべきか荒木さんの知見も踏まえてアドバイスいただければなと思います。

荒木)はい。

酒井)今の僕の意識していることとしては大きく2つあるかなと思っていて、一つがスポンサーの種類としてもタニマチ的な形で応援したいとスポンサードいただいている形で、もう一つはビジネスメリット優先でスポンサードしてもらって僕らを通じてどうビジネスメリットを返していけるかという形の2つがあるかなと。それぞれによってアプローチの仕方は変わってくるのかなと。
タニマチ的なスポンサーの場合ですと、どちらかというと来シーズンはクラブとして大きく成長していくことが求められるとか、経営人員のことや、地域の取り組みがこうなっていくとかのクラブ全体として成長していくところを伝えて共感してもらうところかなと意識しています。
もう1個のビジネスメリット優先の場合で言うとスポンサーさんがもともと求めていた成果に対して貢献できたのかの振り返りを踏まえて、来シーズン先方がどんな事業計画を考えているのか、取り組みを考えているのかというところをお伺いした上で、新しい取り組みも考えていくという事を意識した上でスポンサーセールスに望んでいます。
それ以外のところでもいろんな考え方のスポンサーに対しての交渉の仕方はあるのかなと思っているのでざっくばらんによりスポンサーに対して交渉としてはいいとかご意見を荒木さんよりいただけたら嬉しいなと思っています。

荒木)今の話しを聞くと値上げしなければいけないってことだったと思うんだけど、その値上げしなきゃいけない理由ってなんだっけ?

酒井)僕ら視点でいうと事業計画でより予算を増やしていかなきゃいけないという事、スポンサー視点で言うと僕らの提供できるメリットが増えていき、それが例えば新しい取り組みを一緒にやっていくことでもあれば、より認知が広がっていってファンが増えていくことによって、それに対してロゴを出すとしても見る人がより増えていくところかなと思っています。

荒木)今のは良いポイントで、やっぱりこのスポーツビジネスの基本の考え方としてどうしても最初の内って自クラブが主語になって、自分のクラブを何とか盛り上げるとかファンを増やすとか自己中じゃないけど自分中心の考えになっちゃいがちなんだけど、そこを何とかそうじゃない形で物事を考えるとだいぶ発想って変わってくるんじゃかなと思っていて。今の翼の考え方はだいぶそのスポンサーサイドの状況みたいなことを意識したとかのアプローチが聞けたのでそれはすごくいいことじゃないかなと思うよね。
一つおすすめなのが実際俺も昔球団いた時にやったんだけど結局営業って商品作りと後はそれをどうやって売っていくかっていう販売戦略みたいなことで。もちろんポストセールスがあるけど大きく分けると販売までに考えることのそもそもの商品づくりとそれをどうやってなるべく高い契約金で落としていくかっていう、こういう2つのプロセスがある中で、まず最初の商品作りのところを考えると製造業ではないので新しい価値を創っていくサービスの価値に目が行きがちなんだけど、それって一つじゃなくて複数あるサービスが出来上がる。つまり世の中にカタチついてスポンサーシップって言うものですっていう何となくの過去の事例でこういうのがあるとか、唯一無二というか必ずその商品が生み出すその価値っていうのは、どれ一つ同じサービス価値って無い。
例えば同じ車とか同じ時計とか同じTVとかは誰が買っても同じ一定の価値があるんだけど、スポーツクラブの生み出すサービスっていうのは全部違う。全て違うということはまずはそのサービス設計にこれはものすごい大きなポイントがあることがわかる。そこになったときにどうやって考えようかって出てくると思うのでメモに書きながら考えるのがいいんだけど、一つエクサイズとしておすすめなのが一旦その商品の原材料を全て棚卸するエクササイズを自分一人じゃなくてクラブのメンバーみんなで、それこそミニ合宿をして洗いざらいに棚卸する作業をすること。一つの方法として。日本語で言うと価値ってキレイな言葉だし戦略性もあるし、バリューとか価値っていいと思うけど、分解していくとより見える化というかイメージできてくると思うけど、切り口として現在価値と将来価値を一言で言うならば今TOKYO CITY F.C.における現在価値って言うのは、サービス・商品としての価値という風に考えると、その商品とお金をいただいている価値が少なくとも等価交換で本来はあるべき。クラブが影響する価値が高ければより喜ばれるし、喜ばれなければお金を払っている意味が無いし。

酒井)はい

荒木)まずその影響している現在価値を一回洗い出しをして、サービスお金を払っている人たちに関して購買バランスが取れていますかというところは一回話してみるといいかもね。そこでそんな価値で影響できてないよなあということもあると思うけど、それは現在価値に換算してやってしまうと長続きしないし、ましてや今がそういう状況なのにさらに上乗せしてアップセル狙うっていうのは長続きしない感じになっちゃう。もう一つの将来価値って視点で見た時に、さっきの現在価値が購買だとしたら、将来価値は投資になるので、投資ってことはROI(Return On Investment)が求められる投資に対するリターンは 何かというと将来価値の等価交換できているギャップが明確になる事、ギャップが頭を下げるだけじゃないよね。ギャップを埋める要素にはならない。
投資効果に対する将来価値が何なんだっけというところを考えることによってお客様に対して明確なプレゼンができる。これが入り口。それやるときにもう一つの視点として、原材料、そもそもそのサービスの価値をつかさどる原材料は何かというところがこれも一つ価値だと思うんだけど、レイヤーが違う価値。一番ベーシックな価値っていうのは有形価値と無形価値っていって、明らかにクラブが持っている価値。でもスポーツクラブの価値って実は無形価値がほとんどだったりするのね。例えばクラブのロゴって有形価値じゃん。だけどロゴ自体に価値があるんだっけ?ロゴにお金なんかつかなくて、ロゴの持っている無形価値が商品となるみたいな。

酒井)はい

荒木)メディア媒体に出るからとかユニに広告載せるとか、ゴールに何とかっていう価値はメディア価値で有形価値に属すると思うけど、じゃあ有形価値はどれだけの露出が担保されますかという事が求められてしまう。そうじゃなくで、目に見えない価値。この価値についてエクササイズやらないといけない理由っていうのが、自分たちではあまりわかっていない価値だったりするから。当たり前に自分たちは同じ円の中にいるので実は自分たちの価値はこういうところだよねってところに気が付かないので。
なので気の知れた信頼できるスポンサー入れるとか、お前らこうだぞと言ってくれる人も含めて有形価値と無形価値を全部洗いざらい価値の棚卸をするのがいいと思う。それが商品を作るための原材料を棚卸してカテゴライズした中で、価値を使ってを何をするかっていうのが将来的な商品になっていくという事になる。
もう一つは掛け算をして出てきた価値を商品化するプロセス。自クラブだけでできる事。自クラブだけで価値を組み合わせる事によって商品ができるケースもあるし、クライアントがいるからクライアントが持っている有形価値・無形価値と自クラブの有形価値・無形価値を掛け合わせることによって新しくできるサービス創造みたいなものが生まれる事もある。だからマトリクスで組めば自分たちの有形・無形とクライアントの有形・無形をマトリクスにおいて何ができるかということで、こういう視点で物事を考えると新しいサービスが生まれてくると思うので。今言ったアップセルで狙いたいところに関しても既存のものをさらに高めるという視点と、新しいサービスを作って新たなスポンサーを取る、あるいは既存スポンサーに新たな商品を加えるという売り方、基本はそういう事だと思うのね。一番最初の話だと既存のスポンサーに対して我々もっと価値あるから今の金額を上付けしたいとかの発想になりがちなんだけど、そこに固執すること無く、今のスポンサーさんにさらに新しいサービスを追加するという事も考えられるし、違う第三者の新しいクライアントに対してサービス価値を提供して、結果的にはクラブの収益が上がるみたいな事があると思うのでこのあたり是非。
今までやったことあるのかしら?

酒井)おっしゃて頂いた僕らの価値の棚卸といったところは個々人でやってはいるものの、僕個人で考えている事だけだったり。既存のスポンサーさんから、一回言われてはっとしたことがあって、TOKYO CITY F.C.とパートナー組んでいると社内の空気が明るくなったり、TOKYO CITY F.C.のメンバーは前向きな人が多いから元気をもらえるという話をもらえたことがあって、都度のコミュニケーションの中でたまにいただく事はあったんですけど、自分たちから情報を取りに行くとか僕らが気付いていないところの価値という所は聞いてはいるようでちゃんとまとめられてはいないなあと思いました。

荒木)今の例なんか本質的には象徴的な事かなあと思って。飲み会によく呼ばれる奴いるじゃん。こいついると盛り上がるみたいな。その人は飲み会に対しての場の盛り上げの価値がある。本人は気づいていなくて、なんだかわからないけどよく呼ばれる、みたいな。でも呼んでいる方は明確なその人に対する価値を感じていて、こいつ呼べば楽しくなるとか、盛り上がるとか、○○を呼べるみたいな価値。これは商売も一緒で。もちろん商品価値もものすごく重要なんだけど、それに至る購買行動って会社が決めるんではないよね。人が決めるじゃない?会社という人格は無いので、どんな会社であろうと、オーナー会社であろうと決めるのは人。人間系のところをどうマネジメントするかというところで、人間性に刺さるところはどこなんだろうとか。結構大事だったりするよね。


≪第19話 終わり≫

■登場人物
➤荒木 重雄 Shigeo ARAKI

一般社団法人スポーツビジネスアカデミー(SBA)代表理事。
株式会社SPOLABo、株式会社スポカレ代表取締役。2005年に千葉ロッテ球団の執行役員・事業本部長、パシフィックリーグマーケティングの取締役執行役員を歴任。日本サッカー協会(JFA)の広報委員をはじめ、官公庁のスポーツ関連プロジェクトなどにも多数参画。
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➤酒井 翼 Tsubasa SAKAI
J1から数えて8部に相当する、東京都社会人リーグ2部に所属するサッカークラブ「TOKYO CITY F.C.」にてスポンサー営業などを担当。
スポーツクラブで働きながら、1000万円プレイヤーになることを目指し、日々奮闘中。
TOKYO CITY F.C. 公式サイトはコチラ

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日米英に拠点を置き、スポーツビジネス界の第一線で活躍する理事4人が世界の最新スポーツビジネストピックスを発信する「理事会」や、スポーツビジネスの各専門分野に長けたゲストをお招きし、担当理事とのトークディスカッションをお届けする「サロン」など、スポビズパーソン注目のコンテンツを定期的に発信しています。昨今のコロナ禍を経て、オンラインでのコンテンツを強化し、直近のサロンはほぼアーカイブにて配信中!(いつでも何度でもご視聴可能!)
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