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やりたい事ありきのプライシング_後編【実践!スポーツビジネス道場#29】

←第28話

ポッドキャスト番組「実践!スポーツビジネス道場」の文字起こし記事です。

実践!スポーツビジネス道場」は一般社団法人スポーツビジネスアカデミ(SBA)の公式オンラインサロン「THE BASE」が毎週木曜日に配信しているポッドキャスト番組です。
スポーツビジネス界で奮闘する若手ビジネスパーソン、酒井翼さん(東京都社会人リーグ2部所属のサッカークラブ「TOKYO.CITY.FC」でスポンサー営業を担当)が日ごろの業務での葛藤や悩み、アイディアをスポーツビジネス界の第一線で活躍し、SBA代表理事を務める荒木重雄さんに壁打ちし、成長していく様子をお届けしています。


荒木)俺が侍ジャパンで4年契約で常設会を作ってスポンサーを取ったときも実はそうで、侍ジャパンですら露出で勝負しなかった。グランドデザインを作って、グランドデザインをやるためにこれくらい必要なんでこれくらいくださいっていうロジックなんですよ、細かい事言えないけど。
全く新しい商品だから、試合だけで勝負したらそんなに金にならないんですよ、だって年に何回あるんだって話だし、大きな大会は4年に一回しかないのに、露出だけでそれで何十億集めるのは到底できないわけで。そこに対して年間通じて、4年間通じて活動する資金としてこれくらい必要なんでそこにサポートしてくださいっていうプライシングなので。
プライシングありきでなくやりたい事ありきで、企業の力を使って一緒にやらせてくださいというアプローチで、それは大も小も変わらないと思っていて。むしろ小の方がそっちじゃないと難しいかなと。変な話30万円を1回5万円にしたら上にあげるのは難しいんじゃないかという議論は違っていて、なぜならやりたい事が違ったら100口集めるのも1000口集めるのも違うと思うし。そこは意識しなくていいというか、そこはポイントではない。

酒井)ありがとうございます。確かに今まで営業していく中でいくら必要なんですという営業をしたこと無かったので。言われてみればそうですよね。スポンサードする理由も結局ベースは応援したいという気持ちがある。応援したいけど、どれだけ応援すれば君たちにとっていいの?っていうのも逆に企業側から見た時のポイントになるってとですよね。

荒木)そこの将来価値が夢だけでは限界があるというか、夢は良いけどさこっちも大変なんだよみたいな話が当然出てくると思うので、夢と彼らのやりたい事が交差する場所を見出だしていくってことが大事だし、そのためには広告宣伝とかCSRみたいなことだけではなくて、もう少し幅広く彼らの持っている予算感の中から見出して、新しい未来価値みたいなものを作っていくという、もうこれはビジネスクリエイティブの世界の話だけど。画をどこまで描けるか。そのグランドデザインに同調していただいて、その一旦を担っていただける企業さんにサポートいただくというスポンサーシップで、共に大きなゴールに向かって並走・伴奏していただけるようなパートナーを作っていくという商品作りだと思うんだよね。

酒井)お伺いしたいなと思ったのが、侍のスポンサーを取ってくる時に、グランドデザインを作るためにこれだけの費用が必要なんでくださいっていう言い方だと思うんですが、交渉の仕方ってまず最初にこれだけ必要ですっていうそこのベースのグランドデザインに対して企業の担当者なのか社長なのかそこにまず共感してもうことがポイントだと思うんですけど、順番としてはまずこういう夢を叶えたいです、これだけ必要ですという話でまず共感を得た上でじゃあ具体的にどうしていこうかっていう。それが広告なのかもしれないし、接待なのかもしれないしという細かい話には入っていくという順番で交渉していくことが多かったんですか?

荒木)そういう順番です。まずグランドデザインの共感、スポーツのスポンサーシップってエクスクルーシブビジネス、排他的な、今言うと古いモデルなので必ずしもそれだけではないものの、鉄板なんですよ、エクスクルーシブな環境を作っていくことは。

酒井)独占ってことですか?

荒木)そう独占。なのでどういう事かと言うと、こういう夢を叶えたい、こういう夢を叶える人のカテゴリーは2社にお願いしようと思っているんです、と。っていう独占化させるために何社って絞るわけだよ。例えば1億円集めたい時、1000万円で10社集めるのと、5000万円で2社集めるのどっちも1億円じゃない?そうなったときどっちの方が集めやすい?

酒井)なんとなく5000万円を2社のほうが集めやすい気がします。

荒木)それはもちろん物にもよるけど、基本的に高いスポンサーシップは絞れば絞るほどやりやすいんですよ。なので10社だったら別にそんな、うちの競合がスポンサーやっても(埋もれて)そこまで目立たないだろって環境作っちゃったら10社どころか1社も取れない事もありえるし、逆にここの一番デカい所で活動やるにあたって全面的に表に競合他社が出てくるとなると、競合他社の色にするわけにはいかないんだよってことで、”乗った!”って言ってくれるし。逆も真なりでそこまでは乗れないけど、ここは”いっちょ噛みしておきたい”とか”こっちのカテゴリーに入れさせてください”みたいなという話になったり。そこへの賭け方と絞り方と出し引きっていうのはこれは営業だよね。
そういう風にした方が極めて明快にスポンサーシップをお願いできるってこと。

酒井)そうですね。すごくわかりやすいですね。このお金どこに行くんだってことが明確にわかります。

荒木)”今年は何部に行きたいからこれくらいバジェットかけてやりたいんでどうしてもかき集めないといけないんです!”、”一口10万円で何口集めないといけないから一口乗ってくださいお願いします”みたいなことって全然良いと思う。最初のうちは。
だけどそれは昇格するという明確な夢があるし、昇格した暁にはこういう事ありますよとか、クラウドファンディング的な発想に近いかもしれないけど、それもスポンサーシップの最初のカタチの一つ。

酒井)ありがとうございます。一緒にクラブを作っていきましょうみたいな営業をしていたものの、具体的にあといくら必要とかの言い方を今までしてこなかったので、今回の話はぜひ今日・明日からやらせていただきたいと思います!

荒木)その方が逆に堂々と売れるしね。寄付されたお金どう使われるのか明確じゃないところになかなか寄付ってできないじゃん?こんなこと言っちゃいけないかもしれないけど、俺は赤十字に寄付しないんですよ。別のところではやってるんだけど。なぜかというと、特に震災の時に赤十字いろいろやっていたじゃない?それって何に使われてるかが全く分からないので。変な話、その寄付したお金が震災に行くかもわからないのよ、でかすぎて。直接的に具体的にいくら集めるって目的があれば、目的のために協力したいという気持ちになる人がいるだろうし。

酒井)そうですね。

荒木)そこはやっぱり公共財だし、ましてやこれから渋谷の区を入れて行政と二人三脚を目指していくのであればむしろ情報開示は大前提だし、顧客に明らかにする事によって、応援してくれるパートナーが取りやすくなるかもしれない。

酒井)ありがとうございます。

≪第29話 終わり≫

■登場人物
➤荒木 重雄 Shigeo ARAKI

一般社団法人スポーツビジネスアカデミー(SBA)代表理事。
株式会社SPOLABo、株式会社スポカレ代表取締役。2005年に千葉ロッテ球団の執行役員・事業本部長、パシフィックリーグマーケティングの取締役執行役員を歴任。日本サッカー協会(JFA)の広報委員をはじめ、官公庁のスポーツ関連プロジェクトなどにも多数参画。
SBAオンラインサロン「THE BASE」公式サイトはコチラ

➤酒井 翼 Tsubasa SAKAI
J1から数えて8部に相当する、東京都社会人リーグ2部に所属するサッカークラブ「TOKYO CITY F.C.」にてスポンサー営業などを担当。
スポーツクラブで働きながら、1000万円プレイヤーになることを目指し、日々奮闘中。
TOKYO CITY F.C. 公式サイトはコチラ


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日米英に拠点を置き、スポーツビジネス界の第一線で活躍する理事4人が世界の最新スポーツビジネストピックスを発信する「理事会」や、スポーツビジネスの各専門分野に長けたゲストをお招きし、担当理事とのトークディスカッションをお届けする「サロン」など、スポビズパーソン注目のコンテンツを定期的に発信しています。昨今のコロナ禍を経て、オンラインでのコンテンツを強化し、直近のサロンはほぼアーカイブにて配信中!(いつでも何度でもご視聴可能!)
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