装丁

私の好きな装幀本 6冊

昨日、『つつんで、ひらいて』という映画を観てきました。装幀家・菊地信義さんと、本をつくる方々のドキュメンタリーです。

帰省した際に叔母から勧められ、それ以来ずっとうずうずしながら大阪での公開を待っておりました。だってあまりにも自分好みそうだったから……。

結果、私の琴線に見事ヒット!
本当にすてきな映画だったなぁ。
本好きの人なら全員ときめくんじゃないかな。

映像や音に余白がありながら、仕事への哲学や美学が詰まっていて、とても贅沢な気持ちに。自分のふだんの仕事とも通ずるところがあり(というかありすぎて)、観ながら何度もうなずいてしまいました。

上映後は、大阪本町の小さな本屋・toi books磯上さんのトークショーがあり、「好きな装幀本10冊」を紹介してくださいました。映画を観、トークを聞き、本に対しての愛着が一層わいた私。

「あぁ、私も、自分の家にある好きな装幀本を紹介したい……!」

ということで、前置きはこのくらいで終えて、早速本題に入りたいと思います! あ、磯上さんおすすめの中から私が読みたいと思った3冊も後述しますね。

それではスタート!

「どこにでもあるどこかになる前に。」

著・藤井聡子
ブックデザイン・吉岡英典(セプテンバーカウボーイ)


お気に入りポイント
・遊び心ある仕掛けが満載
 表紙、背表紙と窓あきのカバー
 アルバムのように写真だらけの本体
 カバーの裏に潜む富山の地図
・カバーの空色

コメント
東京から地元・富山にUターンした藤井さんの、第二の青春エッセイ。地方で生き暮らすことのたのしさ、むずかしさがぎゅっと詰まった1冊。内容と装丁との温度感がばっちり。手に取ったとき、Web上の書影ではわからなかった仕掛けにおどろき、のちにニヤニヤしてしまいました。読むともれなく富山に行きたくなる。


「羊と鋼の森」

著・宮下奈都
装丁・大久保明子
装画・牧野千穂


お気に入りポイント
・深く、ぬくもりのある色合い。きれいな深緑。
・エンボス紙の肌触り
・装画の羊がかわいい

コメント
3〜4年前くらいにジャケ買いした本です。が、実は未読……(笑)。これを機に読もう。羊の絵が本当にかわいくて。店頭でこの絵が特別なものに見えたんですよね。ずっと眺めていたい。


「祝祭と予感」

著・恩田陸
ブックデザイン・鈴木成一デザイン室
装画・杉山巧


お気に入りポイント
・印象的な装画のうつくしさ
・帯の題字の金ホット
 白地に金ホットの上質感たるや……
・ピアノの鍵盤を思わせる、漆黒でツヤのある本体

コメント
装画があまりにも好みなので、額に入れて家に飾りたいくらい。『蜜蜂と遠雷』は文庫で買ってしまったので、続編のこれと揃えるために単行本を買いなおしたいなぁ。本の内容がピアノコンクールにまつわるお話なので、鍵盤を思わせる真っ黒な本体がストーリーを感じさせる。はじめてカバーをめくったときは感動しました。


「前略、前進の君」

作・鳥飼茜
装丁・川名潤+六月


お気に入りポイント
・迫力のある表紙
 すべて鉛筆線で描かれた本編の生々しさが全面に
・帯のグラデーション
 ピンクと水色のきれいなカラーリング
 表紙のモノクロが映える
・つるつるした紙質
 カバーも本体もなで回したくなる

コメント
鳥飼さん、絵がぐんぐんと大胆に、それでいて繊細になっているので、鉛筆線で描くという挑戦的な取り組みでもしっかり読者を魅せていてすごい。その大胆さも繊細さも、この表紙にすべて出ている。良い。


「二匹目の金魚」

作、装丁・panpanya


お気に入りポイント
・カバー、帯で異なるエンボス紙使用
・郷愁を誘う色使い、レイアウト
・窓ガラスを表現した本体デザイン
 指に吸いつくとぅるとぅるの手触り
 模様にはニス加工が施されていてキラキラ

コメント
漫画はほとんど電子で買うようになってしまったけれど、さっきの鳥飼さんの作品にしろ、この漫画にしろ、「あ、紙で買っとかなきゃ」みたいに思う作品もまだまだありますよね。それってやっぱり、装丁を見て判断するんじゃないでしょうか。この漫画はひと目見てジャケ買いしました。こまかいところが写真では伝わらないのが残念。本体の指への吸いつきは本当に尋常じゃないので、ぜひ購入してなでてほしい……。


「官能先生」

作・吉田基已
装幀・新上ヒロシ(ナルティス)


お気に入りポイント
・単行本風デザインの本体
 主人公が編集者兼小説家のため、文学チックな仕様
・リバーシブルカバー
 「あらやだ、表紙が刺激的だわ!」という方は
 カバーをひっくり返してかけなおせばOK。

コメント
既刊3巻とも、すべてリバーシブルカバー&文庫風本体表紙になっています。こだわりを感じる。吉田さんの作品はトーンをほぼ使ってなくて(ゼロなのかな?)線で書き込んでいるんですよね。こういうていねいさが装丁にも現れていて良いです。


最後に、磯上さんが紹介されていて、私も買いたいと思ったものを3冊。

「100年後 あなたもわたしもいない日に」
作・土門蘭(文)、寺田マユミ(絵)
デザイン・岸本敬子

短歌とイラストの本。
小窓つきの函に本が入っているのも良いし、紙面が切り抜かれていて、ページのこちら側とあちら側でひとつの世界がつくられる仕様らしいのも良い。

URLからサイトへ飛ぶと、詳細が載っているのでぜひ。


大人になれば
作、装丁・伊藤敦志

いやー、もうかわいい。イラストも色使いも。
セリフのほとんどない漫画とのことで、なんだか絵本みたい。
コデックス装という仕様で、背表紙の綴じがわざと見えているところもまた味(URL飛んだ先で見れます)。
自費出版とのこと。


たとえ、ずっと、平行だとしても
著・庄野雄治

コーヒー焙煎所・アアルトコーヒー庄野さん初の短編集。
インディペント音楽レーベルが立ち上げた書籍部門からの出版というのもおもしろい。フランス装(アンカット本)という、小口の一部、もしくは三方を断裁せず仕上げる製本法を採用しているらしい。そのため、1冊ずつ表情が違い個性があるとのこと。新潮文庫がちょうどフランス装なのだとか。わかります?(私は「新潮文庫」と言われて「あぁ!」となりました)


あー、早く本屋さん行きたい。
以前1度立ち寄ったら休館だったから、toi booksリベンジしたいです。


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