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女ひとり、尾道旅(11/23〜24)

私が旅に出た理由はだいたい100個くらいもなくて、単純に「どこか遠くへ行ってしまいたい」という気持ちが抑えられなくなったからだった。とにかく、息苦しい大阪から飛び出したかった。

ここ数ヶ月、特に仕事面ではやることが常に山盛りだった。追い立てられては1日、また1日と矢よりも速くすぎて行った。光陰、もはやロケットのごとしである。毎月のように「えっ、もう○月……? うそやん……」と絶望を重ねた。そしてついに心が限界に。一心不乱にバスや宿を予約した私はこの度、ようやく尾道ひとり旅を敢行した。

尾道の街を歩き、深呼吸をすることで自分と向き合う時間ができ、改めて気づかされたことがあった。
自分が、なにに対して日々ストレスを感じているのか。なにが好きで、なにがきらいなのか。苦手なことはなんなのか。どうすれば私はもっと伸び伸びと日々をすごすことができるのか。

これは大きな収穫だったけれど、私のことよりも、まずは尾道自体の話をしたい。それぞれをキーワードでくくり、尾道の良さをお届けしたい。もうすでに500文字くらい書いているんだけれど、ぜひお付き合いください。

* * *

1.海と山に囲まれた景色

左を見れば山、右を見れば海。その真ん中を通る線路と商店街。数々の映画や小説の舞台になっている理由がわかった。景色がとにかく良いのである。

早朝のひんやりした空気、昼間ののんびりした雰囲気、夜の潮の香り。
そのひとつひとつにしっかり向き合うと、時間はゆっくりじっくりすぎていく。


ああ、私に足りなかったのは、この時間だ。
知らずのうちに入っていた肩の力が、すとんと落ちた。

昔ながらの銭湯を改築してできたお土産やさん&カフェ。
最高にかわいかったです。


2.おいしいごはん

忙しさにかまけていると、だんだん自炊をしなくなる。したとしても、なんだか決まったメニューになりがちで、新鮮味もおもしろみも感じない。昼ごはんを買おうと寄ったコンビニ。その棚の前でなにが食べたいのかわからなくなり立ち尽くすのは、4年半を超える社会人生活の中で、もう何回目だろうか。

ごはんを食べること。
それは私の生活の中でも、本来はもっと大事にされていたことだった。おいしいもの好きの父と、料理上手の母の元で暮らしていたときは。私と同じく、食べることが好きな彼氏と付き合っていた頃は。

久しぶりにおいしくて驚嘆したのは、お寿司だった。尾道に着いてはじめて食べたごはんだったけれど、このおいしさを共有する人がいないことをくやしく思い、ひとり旅を早速後悔したレベルだった。

鮨と魚料理 保広
こぢんまりとした入り口、料亭の雰囲気にビビり、入るまでに3回目の前を行ったり来たりした。入った1秒後にそんな自分を笑い飛ばしたくなるほど、あったかく威勢の良いお店でした。

尾道は「うまい」の宝庫だ。
食べたもの全部、おいしかった。

ネコノテパン工場
山の中腹にあるちいさなパン屋さん。店内はひとり入れば満員。店の外にはねこが待ち構えており、来店者に愛想を振りまいていた。
アーモンドクロワッサンとココア&オレンジのクッキーを購入。

LOG Cafe&Bar
アパートを改築した建物。宿泊施設やカフェ、ギャラリーなどとして活用されている。アイスコーヒーとケーキを。

瀬戸内洋食 ともしび
飲食店の閉店時間が早い尾道で、晩ごはん難民だった私に救いの手を差し伸べてくれた。レモンのオイルパスタ。レモスコをかけそびれました。カキフライも食べたよ。

パン屋航路
志賀直哉『暗夜行路』をもじった店名。朝7時の開店からすでに列ができていた。ベーグルが有名らしいが、私はカレーパンと、レンコンとチーズがのったパンを買いました。

みはらし亭
千光寺のすぐそばにある、ゲストハウス兼カフェ。
店名の通り、見晴らしがとても良い。千光寺参拝の帰りに寄りました。朝10時くらい。晴れていたらもっときれいだったろうなぁ!

拉麺 またたび
店名と外装に惹かれ、前日の夜に入ろうとしたらずっと混んでいて断念した。翌日、みはらし亭のあと、開店の11:30きっかりに入店。とりそばを食べました。柚子胡椒(かな?)が効いていてとてもおいしかった!


3.歴史や文化

年々存在がありがたくなる神社仏閣。
静謐な空気と荘厳な雰囲気を讃え、静かにそこに在る。

『千光寺』
ロープウェーもあるけれど、私はひたすらに自力で登った。2日目、朝6時に起き、パン屋航路をはさみ、8時半頃から参拝。人生でいちばん身につまされたみくじを引きあて、夫婦岩に感動しました。尾道にはここ以外にもなんと、25の寺があるらしい! たしかに至るところにあって、何箇所か行った。

文化的な場所としては、なんの気なしに、たまたまたどり着いた『志賀直哉旧居』。

ここが執筆部屋。窓からの景色、最高じゃないですか?

お恥ずかしながら、日本史の教科書や国語の資料集でしか見かけたことがなかった彼のことを、係りの方が丁寧に教えてくださった。
東京に住んでいた彼が、29歳の時に尾道にきたこと。約半年の間、たまたま空き家だったここに住んでいたこと。のちに有名になる『暗夜行路』の前身小説をこの部屋で書き、『暗夜行路』にも尾道の描写が盛り込まれていること。ひとところに止まるのが好みではなかったのか、人生を終えるまでに23回も引越しをしたこと。

気づけば小説を購入していた。
あらすじを見たらなかなか暗い話であったけれど、読みはじめると妙に引き込まれる。早く読み切りたい。

それから、ちょっと暇つぶしに、なんて軽い気持ちで訪れた『おのみち映画資料館』。8mmカメラやフィルム、戦前の頃の映画のパンフレットやポスター、映画評論誌のバックナンバー、尾道映画の資料などが集っていた。

尾道が舞台の映画・『東京物語』を紐解きながら、監督・小津安二郎のこだわりを紐解いているコーナーがあり、これが特にすてきだった。彼の作品ではカメラはなるべく低くし、必ず「人間の目線」の位置から撮影していたのだという。

さらについでの気持ちで寄った『おのみち歴史博物館』もよかったなぁ。こぢんまりとした空間に詰まったロマン。尾道は古くから港町として栄え、商人が多く行き交っていたという。

江戸時代に描かれた瀬戸内の地図にグッときてしまった。こんな昔から、もう地名はいまと同じ。漢字の使い方も。そんなに古いものに感じられなかったのに、時代を超えていま私が見ていると思うと、不思議と心がざわついた。

広島銀行の所有物らしい。


4.新たな出会い

商店街の中にある、『おのみちクリエーターズマーケット』。尾道の作家作品や雑貨店の商品をピックアップしているらしい。たぶん、行く時々で品揃えが変わるんじゃないかなぁ。

私はここで、このペンケースと出会いました。かわいいでしょう。さっそく会社に持って行きました。

あと、これはまた別で詳細を書くつもりなのですが、たまたま知って参加したイベント・『本とおのみち』の「本と、まちと、カルチャーと」というトークショーが本当にすばらしかった。

高松で完全予約制の古本屋・『なタ書(なたしょ)』を営む藤井佳之さん、広島市で新刊と手仕事の器などを扱う『READAN DEAT(リーダンディート)』の店主・清政光博さんが、東京の出版レーベル・『アカツキプレス』の柴田隆寛さんの司会進行のもと、地方の個人書店にまつわるあれやこれやを繰り広げる。

本のことは大好きなのに、本屋さんのこと、特に個人で経営されているようなちいさなお店にはほとんど行ったことがなかった。本屋業界のあれこれをはじめ、これまで知らなかったことに触れる良い機会だった。でも、いちばん響いたのはお三方の仕事に対する姿勢。これが本当にすてきで。

「街のためにやっているのではなくて、気づいたら街に住む人、そして街のためになっていた」

いいなぁ〜。
藤井さんも清政さんも同じようなことを話されていたのが印象的だった。

私はこのトークショーが『本とおのみち』だと思っていたのだけれど、本当は街をあげた、本にまつわる大きなイベントだった。リサーチ不足なのが悔やまれる!

公式Facebookページをぜひご覧ください。
今年が記念すべき1回目とのことだったので、これから毎年やるなら、必ずこの時期に来ようかな。

これから地方に旅行する際は、街の本屋さんに寄ってみよう。


5.ねことおのみち

尾道と切っても切れない存在、それがねこである。
過去にこんなnoteを書いてしまうほど、私はねこを溺愛している。

尾道にはいたるところにねこがいる。
彼らもとてもひと慣れしていて、出会う子たちみんな、甘い声で「にゃっ、にゃ」と鳴きながら近づいてくる。かわいい。

写真を撮れなかった子も含めれば、2日で計6〜7匹ほどと出会った。
中でもとびきりかわいかったのは、このはちゃめちゃに図々しいこの子。どこからともなく現れ、にゃあと鳴いたかと思うと、私の食べていたパンがほしくてベンチに登り、しまいにはひざに鎮座してしまった。あ、厚かましい……! でもかわいい……。

「私はパンあげないよ。あっちのお姉さんたちのところ行ってみたら?」
あとから同じようにしてパンを買った女の子ふたり組がやってきて、私の近くのベンチに座ったので、ねこにそう言ってみた。すると、私のひざから降りて彼女たちのベンチへ近づき、なんと隣に腰掛けたのだった。この子は人語がわかるらしい。

にゃ、と話しかけることもなく、気づいてもらえるまでずっと寄り添っていた。のちのち気づかれていたけれど、たぶんパンはもらえていない。なでくりまわされたあと、撮影大会がはじまっていたもの。

あとさ、関係ないけど、泊まったゲストハウスがめちゃくちゃかわいかったから、最後に見ていってほしい。

秘密基地みたいなベッド!

改めてわかったけれど、私は他人の気配がする中では寝られないみたい(笑)。おそらく緊張してしまうのだ。少しの物音やいびきでも起きてしまう。ゲストハウスには不向きな性質だ。

けれどめげずに、またひとり旅をするときはゲストハウスに泊まろうと思う。そのうち慣れてくれ、身体!

あ、あと。これが本当に最後! 駅近くにあった激シブの映画館。味ありすぎ。思わず写真だけ撮った。街の文化を支えているのだろう。

書ききれなかったことは、後日談としてまたどこかで。
尾道、また近々、絶対に行きます。目当ての『USHIO CHOCOLATL』までたどりつけなかったから、次は離島ツアーをしよう。



最後まで読んでくれて、ありがとうございます!