『堂々たる日本人 知られざる岩倉使節団』~胸熱!知られざる岩倉使節団の軌跡!~

知られざる岩倉使節団

なぜ、今、岩倉使節団なのか?

きっかけは、友人からのお誘いだった。
ちょうどコロナ騒動のギリギリの2020年2月にドバイに仕事で行ってきた。
それを知った友人が、急に興味があるかも…と岩倉使節団を長年に渡り研究している泉三郎先生の講演のお誘いを頂いた。

歴史の授業で「岩倉使節団」は知っていたが、海外にみんなで視察に行ってたんだなってくらいにしか印象に残っていなかった。
そして、多くの日本人は私と同じだろう。
幕末はよく取り上げられて、ヒーローもたくさんいた。
そして新しい時代を見ることなく、志半ばで命を落としたヒーローの話の方が私たちは好んでみてしまう。
しかし、明治維新になって今の日本のカタチを作ったヒーローたちの史実については、実はまったく知らなった。

友人のお誘いで、泉先生の講演前に予習として手に取ったのがこの本。

読みだしたら、胸アツポイントがありすぎて、震えるような感動があった。
今読み返しても、鳥肌が立つレベル。

岩倉使節団のここが凄い!

参加しているメンバーが大物揃い!
岩倉具視、木戸孝允、大久保利通、伊藤博文といった当時の政府の最も有力な人物が揃って加わっていた。

時期と期間にびっくり!
 明治4年の廃藩置県を断行した年に出発。なんと1年9か月余、632日に及ぶ途方もない期間。

明治維新の中心人物であり、明治政府の大黒柱が、革命直後にトップリーダーたちが揃って世界一周の文明見学に出かけるなんて壮挙であり、同時に暴挙でさえあった。
その時代の新しい国のカタチをつくるため、自ら目で見るため飛び出していった熱量を思うと、それだけで胸が熱くなる。

参加メンバーの多様性っぷり
平均年齢32歳という若い集団。
政府関係者以外にも使節一行に60人もの留学生がいて厚みと彩を与えた。
驚くべきことにその中に、5人の少女が参加していた。
有名なのは、のちに津田塾大学の創始者の津田梅。最年少参加の8歳だった。

世界一周する使節団のルート
アメリカの主要な都市をめぐり、ヨーロッパへ。
ヨーロッパの主要な国を回り、アジアを巡る壮大なルート。

異なる国の文化や歴史を巡る驚くべき旅であった。
移動手段も今と異なるあの時代に、このような壮大なルートを日本を背負って立つ大物や若者が巡ったなんて想像しただけで、胸が熱くなる。

まだ混沌としていた明治初期の日本が、いかにして近代化を進め「明治という国家」をつくっていくかという歴史的課題に、きわめて大きく影響を与えたのです。
それはまさに日本近代化の原点にあたる旅でした。

岩倉使節団がもたらしたもの

岩倉使節団の世界一周の文化視察がもたらしたものはなにか?
「日本の新たなカタチ」を探し求めて、得たものはなにか?
今に繋がる大きな功績であり、一気に近代化を進めてくれた。

使節団の功績で私が惹かれる点が二つある。
一つは、日本を外から見る視点が生まれたこと。
二つに、外から見ることで日本の特異点(強み)を自覚できたこと。

実際に自ら外に出ることで、実際に自分の目で耳で触れることで、膨大な情報が入ってきただろう。
当たり前が揺さぶられる体験を通して、自分たちの大事にしている強みを改めて知ることにもなっただろう。

多くの"世界を見てきた人"が生み出された。

"世界を見てきた人"が見ている世界

きっと一段高い視点で、広い範囲を見渡すことができたことだろう。
低い位置からでは、自分の周囲しか見渡すことができないし、見える範囲も限られてしまう。
その高い視点から見えた新しい国のカタチ、進むべき方向はきっと明確であっただろう。

日本地図しか持っていない人は、日本の中を動き回ることはできても、海外では動くことができない。
そして、どんなに抵抗して世界の近代化の波はやってきて、日本だけで完結する時代は終わり世界に開かれなくてはならなかった。
だからこそ、世界地図を持っている"世界を見てきた人"の存在は必須であった。

しかし、世界地図を持っている人と、日本地図を持っている人が、目的地を設定するにも、その道筋を設定するにも、話が噛み合うはずがなかった。

"世界を見てきた人"と"世界を見てきてない人"

その代表例が、大久保利通と西郷隆盛であった。
原因はそれだけではなかったにしても、仲の良かった二人を対立させてしまったのは、もしかしたら岩倉使節団に参加して世界を見てきたか、見てきてないかの違いだったかもしれない。
世界地図を見て進むべき道を示した大久保利通に、西郷隆盛は同じ地図を描くことができず、一緒に進むことができなかったのかもしれない。

そう想像するだけで、あの時代の人間模様の織り成す流れを知り、学んできた歴史が全く違って豊かな姿で浮かび上がってくる。

同じ地図を見せることはできなかったのか?

"世界を見てきた人"がもつ世界地図を、どうすれば"世界を見てきてない人"に見せることができるのか?

きっと全く同じ地図を見せることはできなかったかもしれない。
しかし、世界地図を基に実際に進めることで、実体となり、それによって初めて世界地図が見えるようになってきたのかもしれない。
みんなで同じ地図をみて進む方がスムーズだから、相手が同じ地図を見てくれるまで熱心に説明する必要はある。
一方で、新しい時代を創っていくとき、トップとして前に進むときは、まず実際に動いて前に進め、結果を出していくことで地図を見せていく必要がある。

その中で、西郷隆盛ほどの人徳者が本当に世界地図を見れていなかったのか?
西郷隆盛が起こした西南戦争は、新しい時代を拒否する人たちを導き過去の時代を終わらせるためにあったのかもしれないと想像するだけで、また違った歴史の姿が見えてくる。

"世界を見てきた人"が、新しい時代をひらき、今を作ってきた。
これはある種の教訓にもなりえるかもしれない。

今こそ岩倉使節団から学べる事

見るべきものを見て、自分で咀嚼し、帰国して活かすことができたか?

なぜ、あの時代の使節団のメンバーは、見るべきものを見て、自分で咀嚼して、国に戻ってそれを活用することができたのか?

一つに、目的意識が明確だったからではないか。
自分たちが新しい国のカタチをつくっていくんだという使命感があった。
そして、送り出してくれた国に残った人の存在が、更にその使命感を高めていた。
自分一人ではなく、多くの人が繋いでくれて使節団として出発することができたからこそ背負っている責任が違った。
手ぶらで帰れるはずもないからこそ、絶対絶対、見て、咀嚼して、戻って国で活かさなければならないという強い思いがあった。
迎え入れた海外の人たちもその熱心さ、勤勉さに驚いたと言われている。

同じ場所に旅しても、人によって見るもの、気付くもの、感じることは異なる。そこへの目的意識でも異なる。
だからこそ、使節団に多様な人を参加させることで、より多くの成果を得たのではないか。

では、今どこに使節団が向かえばいいのか?

明治初期、新しい国のカタチを見つけるために、岩倉使節団は壮大な世界を巡る旅に出た。
多くの成果を持ち帰り、今の国が出来上がった。
江戸時代が終わり、まったく新しい明治時代という近代化へ大きく変化を遂げた。

今、コロナの影響で大きな転換が求められ、世界規模で国の在り方が問われている。
岩倉使節団は日本の新しい在り方を探求するために、世界へ飛び出した。
では、世界規模で在り方を問われている今、私たちはどこへ使節団を向かわせればいいのか?

その向かう先は、ミクロの世界とマクロの世界ではないか。

ミクロの世界

すでに、目に見えないウィルスに対応するために、ミクロの世界に向かっている。体の中の免疫機能や細胞やワクチン開発など。
それはとっても重要で、自分を細胞レベルで考えることが、一つの答えかもしれない。
ミクロでの探求は続いているが、依然として新しい在り方を見つけるには至っていない。

マクロの世界

世界の外となれば宇宙である。
実際に、宇宙飛行士は、外から地球を見ることで、世界の見え方がまったく変わると言われている。
宇宙に行くには、特別な訓練が必要でそう簡単ではない。
しかし、私は一つ仮説を立ててみた。
コロナ以前から新しい在り方を提案している人たちがいた。
それは、ビル・ゲイツ氏だったり、「サピエンス全史」を書いたユヴァル・ノア・ハラリ氏だったり。
一つ共通しているのは「瞑想」していることであった。
「瞑想」中にふと何かが降りてくる感覚があると言う人は多い。
宇宙に実際に行けなくても、「瞑想」のような方法で私たちは宇宙に触れられるのかもしれない。

そして、"宇宙を見てきた人"が新しい世界を作っていくのかもしれない。

熱さを呼び覚ますために

この本を通して、自分の中でたくさんの気づきが生まれた。
そして、胸が熱くなるような感動が自分を前に動かす力をくれた。

泉三郎先生は本書の狙いとして、

このマンモスのような旅を描くことはまことにささやかな試みですが、これによってわれわれ日本人がひとしく誇るべきこの壮大な旅と使命感に溢れたサムライ・マインド(武士道精神)と、颯爽とした日本人の姿を知っていただければ幸いです。

とおっしゃっている。

今、なんとなく停滞した気持ちの人はぜひこの本を手に取ってみて欲しい。
大きな時代の変化を恐れるのではなく、ワクワクした気持ちで見れるようになる。
そして、忘れていた熱さを呼び覚ましてくれる。

このような機会がないと知らずにいた岩倉使節団。
お誘いしてくれた友人、そして熱い講演をしてくださった泉三郎先生に改めて感謝いたします。

一人でもこの熱さが届きますように!

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