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そのクロスを止めるには。 松本山雅FCvsヴァンフォーレ甲府 レビュー【2021 J2 第8節】

どーもこんばんは、すぴっちです。

第8節ヴァンフォーレ甲府戦のマッチレビューになります。

*筆が乗った結果いつもより分量多め。分析していくと、思ってた以上に面白い試合でした。

1. 試合結果、スタメン


[試合結果]
3-3、引き分け

[フォーメーション、スタメン]

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試合開始時は、甲府・山雅ともに「3-4-3」。ミラーゲーム。

2.試合の流れ・両チームの狙い

試合の流れを、まず「ゴール」から振り返ります。

 前半:山雅ゴール → 甲府ゴール*3
 後半:山雅ゴール*2
 結果:3-3 ドロー

なんというバカ試合(笑)。連続3失点してしまったことは間違いなくアカン。

続いて、「シュート数」から振り返ります。

[前半] 山雅 :5(5) - 甲府:11(8) 
[後半] 山雅:12(9) - 甲府: 3(3)
*()内=枠内シュート数。DAZNでのデータを参照

これだけで、どんなゲームか大枠は掴めますね(苦笑)。前半は甲府に押し込まれ、後半は押し返した。そんなゲームでした。

なぜこのようなゲームになったのか、詳細を振り返ります。

 2-2. 前半-1:甲府のストロングポイントを潰せず、徐々に劣勢に

開始早々、外山→国友の強力ホットラインで先制する山雅。相手の守備陣形が整っていた中、2人の力だけでゴールを奪いきりました。崩し切らない中で得点できるのはありがたいことです。

その流れのまま山雅がゲームを支配するか・・・と思った矢先にCKから失点。ここについては、圍と国友の連携ミス(まぁ・・・GKの役割か)。

しばらく1-1のまま進みますが、流れを掴んでいたのは甲府です。

要因としては、甲府のストロングポイント:左サイドの#39泉澤を絡めた攻撃を止められなかったから、かと思います。

・左サイドからスピードに乗ったドリブル。そこからシュート
・WBとのユニットでの時間を作る。そこからクロス

かなり好きにやらせてしまいました。今ノリに乗っている気がするので、泉澤ボールに触らせないような仕組みだったのではないかと思われます。

 2-3. 前半-2:甲府のクロスに振り回され、2失点目。そして痛恨の3失点目。

そして押し込まれ続けて・・・2失点目を奪われました。

ハイライトではカットされていますが、失点までの流れは以下の通りです。
 0. 山雅右サイドから、#39泉澤がファーサイドにクロス
 1.クリアするがセカンドボールを甲府に拾われる。山雅左サイドからCHがファーサイドの#39泉澤にクロス
 2.#39泉澤がフリーの左WBに預け、左WBはプレッシャー無いままファーサイドにクロス
 3.フリーのSHがヘディングシュート。ゴール

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複数回のサイドチェンジで振り回され、誰に誰がマークをつくかあやふやになってしまいました。結果、アシストのクロスを上げた左WBもフリー、ペナルティエリア内でゴールを決めたSHもフリーとなっていました。

甲府が「サイドからのクロス攻撃」に力を入れていることは分かっていたはずです。この失点は、チーム戦術として防ぎたかった所です。

さまざまな要因があるとは思いますが・・・これだけ楽にクロスを上げさせてしまっていることが問題かと思います(決してマークを離さず、どんなハイボールも処理できるようなスーパーなCBがいれば別ですが)。クロッサーに対して、常にプレッシャーを与えられる仕組みの整備が必要だと思います。

(*ここの改善ポイントは、「3.次節に向けて:複数失点をどう防ぐ?」にて詳細を述べます)


2失点目のショックから立ち直れないまま、すぐにCKから痛恨の3失点目。

これは・・・野々村くんの、そしてチームの授業料だと思います。マークをつききれなかった野々村くんの責任もあリます。また、ルーキーに強力ヘッダー・#40メンデスを任せた責任もあります。後々「安い授業料だった」と思えるぐらい、野々村君がさらに成長することに期待しています。

これにより・・・前半だけで連続3失点。痛すぎました。

 2-4. 後半-1:「3-5-2」システムで殴り続けた後半。甲府に攻撃の隙を与えず。

連続3失点、なおかつその後も甲府に数々のチャンスを作られ、前半はほぼ良いとこ無し。もうこのままなす術無く終わってしまうのか・・・

しかし、後半。山雅は不死鳥の如く息を吹き返しました。

ボールを保持し、セカンドボールを拾い、甲府を陣地内に押し込める。ほぼ甲府にチャンスを作らせないまま進め、2点を奪い、3-3の同点に。

なぜここまで前半から変化したのか。大きかったのは、「3-4-2-1」から「3-5-2」(リトリート時:5-3-2)へのシステム変更だと思われます。「3-5-2」システムで殴り続けた結果かと(この”システムで殴る”というのは結構好きな言葉。らいかーると先生の著書を参照)。

ポイントは2つあります。

ポイント1:[ボール保持] 中盤で数的優位を作り、相手を押し込めた。

ポイント2:[ボール非保持] 大外の監視役をSH→IHに変更し、大外への圧力を強めた。

  2-4-1. ポイント1:[ボール保持] 中盤で数的優位を作り、相手を押し込めた。

2枚の画像を使って説明します。

前半はミラーゲームであり、甲府は迷いなくプレスをかけられる状態でした。

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後半、3-5-2にしたことにより中盤で数的優位な状況を作りだしました。

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甲府に誰がアンカー(サトカズ)にプレッシャーをかければ良いのか迷いを生じさせた。迷いが生じたため、アンカーへのプレッシャーが弱まった。プレッシャーが弱まったため、時間とスペースが生まれた。時間とスペースが生まれたため・・・相手の急所所にパスを出せ、相手をどんどん押し込めていけました。

また、山雅のボール保持の時間も上がった=甲府のボール保持の時間を奪うことに繋がりました。結果、甲府の攻撃回数を減らすことに成功しました。

  2-4-2. ポイント2:[ボール非保持] 大外の監視役をSH→IHに変更し、大外への圧力を強めた。

こちらも2枚の画像を使って説明します。

前半は、リトリート時は 5-4-1で守っていました。言葉でいうと、最終ライン: 5枚、1列前:4枚と隙がないように思えます。しかし忘れてはいけないのは、その4枚の外側はSHだという点。SHの戻りが遅ければ、ただの5-2-3。最終ラインの1列前が2枚という貧弱な並びです。

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実際、2失点目の要因の1つは、甲府左WBに国友がプレッシャーをかけられていなかったことです。(サボりにも見えなくないが)前線からハイプレスをかける戦術上、正直常に 5-4-1を要求するのは厳しい気がします。

後半から、リトリート時の配置を「5-3-2」に変更しました。
これにより、大外のケアの役割は「SH」→「IH」に変更となりました。

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SHが戻りきれない 5-2-3よりも、5-3-2の方が素早く大外にプレッシャーをかけられます(もちろんこれを常にやっていたらIHが過労死するとは思うが)。

特に#5前がよく動いてくれました。甲府左WBに素早く寄せて、自由を与えませんでした。結果、前半あれだけ苦しめられた甲府左サイドからのクロス攻撃を、ほぼ沈黙させることに繋がったと思います。

 2-5. 後半-2:押し込み続けて2点目。甲府の隙を付き3点目。

上記2つのポイントにより、甲府を押し込める山雅。最終的に追加で2点を奪うことに成功します。

まず2点目。ボールを保持しながら進軍し、

・相手最終ラインをかなり低い位置にまで押し込めた
・相手陣地内に人数をかけられた

ことが要因だったかと。(あと外山のナイスクロス)

そして3点目。#5前のいやらしいパスが起点となりました。

おそらく、甲府は1点差に追いつかれたことで焦っていたと思います。取り返そうとしてかなりDFラインが高くなっていた。その隙を前&国友が見抜き、ゴールを奪えたと思います。

そして、3-3でゲームセット。

3.次節に向けて:複数失点をどう防ぐ?

前節磐田戦(1-4)から引き続き、複数失点が止まりません。さすがにこれだけ失点を重ねていては勝てるわけがありません。

特に気になるのは、「サイドからのクロス」の対処。

ジュビロ磐田戦の2失点目。

ヴァンフォーレ甲府戦の2失点目。

どちらもサイドからクロスを楽に上げさせてしまい、失点しています。川崎フロンターレのジェジエウみたいなスーパーなCBがいれば話が変わるかもしれませんが、そうではない以上「良いクロスを上げさせないこと」が重要だと思います。

で、それを前提に踏まえた上で、ここ最近のクロスの失点の要因は「(前述した通り)SHが戻りきれずサイドで数的不利になっているから」だと思います。何も考えずに言えば「SHがもっと頑張れ」かもしれません。しかし、このハイプレス戦術をとっている以上、そこでエラーが出るのは当然です。仕組みが悪い。

ではどうするのか。

私個人の妄想としては、この試合で見せた「3-4-3⇄3-5-2の可変」が1つの解決策になると思いました。

そうすれば・・・

・大外のケアを、SHとIHで分担して行える(体力温存になる)。
・相手サイドプレーヤーは誰がプレスに来るか分からず、混乱を与える。

というメリットがあるかなと。(デメリットは「うまくコミュニケーション取れないと、混乱して誰もプレッシャーにいけない」ですが・・・)

今後、山雅が「サイドからのクロス」の対処をどうやって行っていくのか注目すべきかと思います。

4.あとがき

[今日の大野君]
この試合で特に輝いていたのは、後半3-5-2に変更してから。甲府の縦パスに対して、何度も何度も猛烈チャージをかけていた事。これがセカンドボール回収に繋がり、攻撃の厚みに繋がった。スピードがある大野くんだからこそ輝くプレーであると思う。今後も期待。

[MVP]
鈴木・ゴッド・国友さま

この試合は国友さま以外ありえない。1点目はフリーになるオフザボールの動きがお見事、2点目はよくぞ詰めていた、3点目は抜け出しのタイミングと冷静にGKを交わして決めるメンタルが凄い。今シーズン20得点ぐらいいけそうな気がしてきた。神様・仏様・国友様、コンゴトモヨロシク。

今回のレビューは以上になります。

現地で応援していましたが、前半立て続けに3失点した後・・・私の心は死にました(苦笑)。前半の最後まで、改善の兆しがまるで見えなかったこともあり・・・。そんな中でも諦めず立ち向かい続け、同点にした選手たちは本当に凄いと思います。

結果的には引き分けであり、勝ち点3を得られず上位との差が開く一方。しかし、水戸戦・磐田戦とは異なり、劣勢の状況をひっくり返しました。それだけの力はあるということを示しました。これが今後の自信となり、躍進のキッカケになれば良いなと思っています。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

次は愛媛戦のプレビューで!