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第6話 戻ることで出発する(最終話)【Ocean College 伊豆半島~三崎編 】

【Ocean College 伊豆半島~三崎編 OC01】 

⚓︎ この記事は2019年11月に伊豆半島で開催し、月刊Kazi誌に掲載された【Ocean College(オーシャンカレッジ) 】の長編記事になります。

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11/26 戻ることで出発する

戸田からホームポートの静浦までは約10マイル。すぐ目と鼻の先だ。今日は東の風が強くなる予定だけど、伊豆半島の影に隠れて海面はフラットになるはずだ。セイルを広げてダイナミックに帆走を楽しもうと思っている。時間もたっぷりとあるので、朝ごはんは昨日の鍋の残りでうどんと深海タコ飯。これが本当に美味しかった。たこめしは多めに作っておいて、お昼前に小腹が空いたらつまめるようにオニギリにしておいた。

いざ出港!桟橋の前のホステルのスタッフの人たちが、見送りに来てくれた。また来ます!陸地に囲まれた天然の良港、戸田。美しい景色の中帆船Amiはセイルを次々に上げて行く。きっと外から見たら絵になる光景だ。

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港の外に出て見てしばらくすると東の風が思っていたより強く吹いている。リーンリーーンとリギンが鳴る。これは相当吹いているな。山から降りてくる「おろし」だ。局所的にものすごいブローが船を大きくヒール(船体が傾くこと)させる。帆船はセイルの枚数で風を受ける面積を調整する。二枚あげたヘッドセイルのジブを一枚おろし、メインセイルとフォアセイルのシートを出すことで、キツすぎるヒールを直す。

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最新のヨットと違い、重たく、頑丈に作られた帆船Amiは強風下でも波に乗って跳ねるようなことはなく、ゆったりと波を乗り越えてくれるので安心感がある。

何よりもここは僕らのメインフィールド。風が治まる場所も波がこれ以上荒れないこともわかっているのでダイナミックなセイリングがとても心地よい。
静浦まではあっという間について、船をホームポートに無事返すことができた。船を岸壁につけ、船内の清掃を行い、帰り支度。航海を共にした仲間とやはりさみしいような、嬉しいような別れの時間が近づいていた。「潮出しに行こう」と近くの温泉にみんなで行き、寒さと揺れで緊張していた体をほどき、潮を洗い流す。「また会おう」とお互いに約束とも言えない言葉を交わし、それぞれ陸の世界に帰ることにした。

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沼津から自分の家まで車で高速道路で2時間。渋滞もなく快適なドライブだ。濡れないし、揺れない。3日かけて来た距離を一気に2時間でもどる。
「あの過酷で楽しかった時間はいったいなんだったんだ」と帆船の航海が終わるたびに思う。
難なく家に着き、時間も早いので街を歩くと、まるで自分がタイムスリップをして来た人間のように感じる。街の便利さ、快適さ、豊かさに目が回る。
なんでも手に入るし、その気になればものすごいスピードで移動できる日常に圧倒される。なんというか、“シャバに戻った感”がすごい。
同時に、ふと思う。「こんなスピードに合わせて普段は生活しているんだな。そりゃ疲れるわけだよ。」たった2時間で何の苦もなく目的の場所まで移動できることが当たり前の時代に、何日間も自然に翻弄されながら四苦八苦して海を渡った経験は、人間が自然に合わせて生きる時間の流れを教えてくれる。
そして「もう少し、気楽にゆっくりと進んでもいいんじゃないかな。」と僕を現代のスピードから少しだけ解放してくれて自由な気分にさせてくれ、本来の自分のペースや生き方を取り戻させてくれる。
僕はそんなことを魅力に感じて海での活動をずっと続けているのかもしれない。

もっとたくさんの人に海の冒険の素晴らしさをを伝えられるように、これからも日本で一番楽しい航海を作っていきます。僕らと一緒に航海に出て見ませんか。

Ocean College 伊豆半島~三崎編の様子▼


帆船で大航海 伊豆半島を目指す!

https://youtu.be/iKkHGWKk7cA


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