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アラサー、10年ぶりに声優を目指す

こんにちは!最近は暖かくなったり急に冷え込んだりして大変ですね。おはるです。

さて、突然ですが、この度めでたくオーディションに合格し、今年28歳にして声優養成所に通うことになりました!!!やった~~~!!!

「おま、役者の夢は諦めたんとちゃうんかい!!」と思われる方も多いと思いますが、このチャレンジに至った背景を今回はnoteにしたためていきたいと思います。

▼役者の夢を諦めた話

生きているといろんな挑戦の機会がありますが、それらのハードルが一日ごとに高くなるのを最近感じています。
学生だった頃よりも決断に責任や重みが増してきたような、やらない言い訳がしやすくなっているような…。
ただ、「やらない後悔よりやる後悔」ということで、今回なけなしの勇気を振り絞ってみました。
このnoteが、同じようにくすぶっている大人の背中を押してくれることを願って書きます。

人生最大の汚点


スタートアップで貪欲に成長を目指すと、何度も大きな壁にぶつかります。
そんな中でも印象に残っているのが「このままじゃプロジェクトから降ろさなくちゃいけない」という言葉です。

数年前に、全社を挙げて取り組む新しいプロジェクトがあったのですが、わたしのスタンスやマインドが会社の求める水準に届かず、上司に呼び出されて言われた一言でした。
気を抜いていた自覚もない中での言葉だったので、わたしにとってはまさに青天の霹靂。

本を読んで解決策を探す手もあったのですが、「自覚がないということは、自分でも認識できていない問題があるのでは?」と考え、一旦は過去を振り返り、その中から本質的な弱みを見つけることにしました。
振り返りテーマは「人生の中で、自分なりに一生懸命やったのに結果を出せなかったもの」。そして、わたしにとってそれは考えるまでもなく「演技」。そんなこんなで、演技にまつわる自分史を書くことにしました。

幼稚園のお遊戯会、楽しい思い出から始まった振り返りですが、高校時代に通った声優の養成所の話に差し掛かると筆が止まります。
わたしは高校時代に1年間、「声優塾」というプログラムに通い、賢プロダクションという声優事務所のレッスンを受けていました
ただ、当時のわたしは自分が可愛くて仕方がなくて、何もかもを舐めてかかるという超世間知らずのワガママお嬢様状態。「自分には才能がある、うまくいくに違いない」という根拠のない自信は、自分を奮い立たせる以上に、「うまくいかないことを自分以外のせいにする」という最悪な方向に表れ、もちろん、事務所所属なんてできませんでした
レッスン中に別のことをしたり、何の準備もせずにレッスンに行ったり、レッスンをサボったり、それに全部言い訳してた最悪すぎる過去を、自分で曝し、深掘っていく。本当に苦しくて、汗だくになりながら文章書いてたと思う。

わたしは、自分の弱点を見て見ぬふりして忘れていただけで、本質的な弱みはわたしの中から消えていない。し、たぶんこれからも一生付き合っていくことになる。そのことを改めてメタ認知する機会になりました。
この振り返りをしてからは、「わたしは弱い。でも、そんなわたしなりに、今度こそちゃんとやり切りたい」という一心で仕事に取り組み、結果として、無事厳しい局面も乗り越えられました。
人は簡単に変われません。ただ、そうしてなあなあで生きていくより、弱い自分を認識して、その上で行動を選択していこうと思えた一件でした。


わたしが「本当にやりたいこと」って?


演劇にまつわる自分史で自分の本質を見つめなおした結果、「一生懸命やりきろう」という気持ちにはなったものの、心のどこかがざわっと波立つのを感じます。

「わたしが元々一生懸命やりたかったのって、この仕事だったっけ?」

おそらくですが、わたしは多くの方から見て「かなり仕事に恵まれた、充実した日々を過ごしている人」に見えているのではないかと思います。
実際、わたしは自分の所属する会社を心から愛し、情熱を持って仕事にあたっています。そしてその時間が、わたしにとって非常に充実したものであるのも事実です。
ただ、「舞台に立ちたい」「演技がしたい」という熱を飼い殺しにしている感覚も、それらと同時に持ち合わせていました
仕事を通して、XRと芸術の未来を切り拓きたいという想いと、舞台の上で自分が表現者として活躍したいという幼少期からの想い。どちらも紛れもない本当だけど、残りの人生で一つしか選べないとしたら、わたしはどちらを選ぶのか?

元々目指していた役者の夢には自分なりにケリをつけて、納得して今の仕事をしているはずでした。でも、舞台が、台本が恋しい気持ちがどれだけ待っても消えない
冒頭の振り返りは、社会人として大きな成長をもたらす半面、自分自身の人生に大きな違和感をもたらすことにもなってしまいました。
それでも今の仕事を辞めたいとは思えず、解は出せないまま、そのまま楽しく仕事をしていました。


どうして夢を目指さない?あなたはまだ若い


そんなこんなで、いつも通り採用業務をしている中、とあるポートフォリオに出会いました。
そのポートフォリオは「好きなことをやるんだ!」という想いに溢れていて、クリエイターとして非常に魅力的。早速日程を決めて、ポートフォリオの製作者とカジュアル面談を行いました。
わたしはカジュアル面談の最初、必ず自分の経歴(役者をやめて、XRに未来を懸けている)を含めた自己紹介をするのですが、その方はわたしの経歴を聞くや否や、「どうして今、役者の夢を目指さないんですか?」とド直球な問いを投げかけてきました。動揺して笑って濁すわたしに、追い打ちをかけるように続けます。

「どうして今、役者の夢を目指さないんですか?」
「えっ…」
「わたしが見る限り、あなたには十分な才能がある。滑舌だっていい。とても聞きやすい声をしてるじゃないですか。あなたはまだ若い。今すぐにでも役者の夢を追った方がいいですよ!!
「そう…ですね、やりたいですね…」

なんだかわたしが面談受けてるみたいな空気。
「あなたならできる」と心から応援してくれているのが伝わりました。きっと、彼自身がやりたいことを思いっ切りやってきたから、自分以外の人も「できる」と信じて応援できるんだろうなと。
有難いお言葉に感謝しつつ笑顔で面談を終え、近くにいた上司に自嘲気味に話しかけます。

「今カジュアル面談した人に、「なんで役者の夢を今目指さないんですか」って喝入れられちゃいましたw」
「へえ~、ええやんw やろうぜ
「えっ」
「別に、会社としてはやっても全然いいよ。パフォーマンスさえ出してれば」

確かに、「結果出せ」とは言われても、「仕事だけやれ」って言われてない……。
なんだか勝手に「両立はできない」って思ってたけど、別に誰に言われたわけでもなく、勝手に思い込んでいただけでした。ありがたい問いをくれた候補者さんと、気付きをくれた上司に感謝。


「実は、声優になったんだ」


そして2022年秋。演劇系大学に通っていた頃の友人から「今エステティシャンを目指しているから、その練習相手になってくれないか」という旨のLINEが届きます。
丁度空いている日だったので指定場所に向かうと、もう一人大学時代の友人が。

「わ!久しぶり~!○○も声掛けられてきたの!?」
「うん、そうだよ~!おはるに会えると思ってなかった!!」

再会を喜ぶふたり。
演劇系の大学を出た友人は、ほとんどが一般企業に就職したか今も演劇やってるかの二択なので、何の気なしに尋ねます。

「○○は今何やってるの?」
「実は、声優になったんだ~!」
「え!?声優!?どの事務所?」
賢プロダクションっていうんだけど…

賢プロ…!?!??!?!?!?(フラッシュバックを起こす)

みるみる蘇るクソな自分

声優事務所はいまやたくさんあるのに、ピンポイントで賢プロか…!と驚きつつ、エステの施術を受けました。ふわふわの泡で顔を包まれながら、思案に耽る。

エステティシャンを目指して、仕事と勉強を両立する友人、そしてしっかり努力して声優事務所に所属した友人。わたしはいったい何をしてるんだろう?

エステ後は賢プロの声優になった友人と二人でランチに行くことに。お仕事トークに花を咲かせました。友人はわたしが仕事を通して追いかける夢を応援してくれて、「やっぱりお仕事って楽しい!がんばろ~!」とさらに前向きになれた気がします。
ただ、そうやって会話をする中で、ふつふつと湧く思いに気が付きました。

わたしもそっちに行きたい。
まだ、役者の夢を諦めきれてない。

本当はずっと胸の中にあったのに、認められなかったこと。
ここまでの流れもあってか、この日はスッと認められました。自分で蓋をしていた思いに気付いてからはなんだか心も晴れやかで、帰り道、電線だらけの都会の空も気持ちよく感じました。

言い訳せず、行動に責任を取れるなら、自分のために夢を追ってもいいよね

悪いところだけじゃなく、自分のやりたいことも正面から受け止めてあげるのは気持ちがいいですね。わたしは、役者として、もっともっとたくさんの作品に携わってみたい!!!


もう、あの頃のわたしじゃない


「さ~て、早速何かするか!」そう思って、何の気なしに賢プロのHPを覗くと「スクールデュオ(養成所)25期生募集!」の文字が。レッスンは土日。お金も、社会人になって貯めたお金で通える額。

なんか…今ならできる気がするな…?

Synamonというスタートアップで過ごした5年間には、苦しいことも、楽しいこともたくさんありました。
酸いも甘いも経験して、人間的にも社会人的にも成長した今のわたしなら、10年前のような失敗はもうしないんじゃないかと、自分でも驚くほど自然に思えたのです。気づいたときには、履歴書テンプレートのダウンロードボタンをクリックしていました。


10年ぶりの入所オーディション


ただ、「もう一度オーディションを受ける」と決めてからは、毎晩のように過去の失敗やトラウマがフラッシュバックして大変でした…笑

何度だって蘇るクソな自分

布団に入って目を閉じると、レッスンを蔑ろにする当時の自分の映像が勝手に再生されて、黒歴史に心臓がバクバク。汗も噴き出す。それらを必死に押さえつけては履歴書に書く内容を考え、何度も賢プロの公式HPを見たり、所属している声優の皆さんの自己紹介ボイスサンプルを聞いたり、代表の内海賢太郎さんが出演する動画を見たり、現役声優が語るオーディション対策動画を見たり…そんなことをしてるうちに朝になるような、不安定な毎日を過ごしていました。
ただ、10年前は「いうて何とかなるっしょw」と何も対策せずに舐めた姿勢で挑んで、普通にオーディション落ちてるので、時間はかかりましたがこれもまた成長(ポジティブ)。

そうして睡眠時間を削って書いた履歴書は無事書類審査を通過!ヤッター!
賢プロは非常にものづくりに真摯でファミリー感の強い素敵な事務所なのですが、その分人気も高く、養成所に入るのが難しい(養成所の東大という異名もあるらしい)ので、書類通過の時点で夢のよう。

1次試験の当日は1番に会場に到着して、課題を受け取り発声練習を行っていました。大体のオーディションで自己PRは必要になるので、それも練習していざ本番。会場に入り、真っ先に目に飛び込んできたのは、審査員席に座る、10年前に声優塾でお世話になった面々でした。

真っ白になる頭。メンバー、全然変わってない。自己PRのために審査員の前に立ったわたしの口からは、想定とは違う言葉があふれ出していました。

「熊谷春香です。…本当は、この自己PRのために言うことも考えてきていたのですが、皆さんの顔を見て、話す内容を変えることにしました。

わたしは10年前、声優塾というプログラムで賢プロのレッスンを受けていました。ただ、当時の私はあまりにも幼くて、甘えていて、結局、何にも結果が出せませんでした。
ただ、この10年間、スタートアップで仕事をしたり、たくさんの挑戦と失敗を重ねて、人間として大きく成長することができました。
きっと、いまのわたしならあの時の夢を叶えられる。賢プロの力になれる。そう思って、今日ここに来ました。

今度こそ絶対期待に応えます。どうぞよろしくお願いいたします。」

細かい言い回しは覚えてないけれど、大体こんなことを言った気がする。
終わったあとは「全力出し切ったな~」という心地よい疲労感で帰宅しました。


オーディション結果


とまあ、そんなこんなでオーディションの結果、基礎クラスに合格することができました!!わーい!!
実はレギュラークラスという演技経験者向けのクラスを最初受けていたのですが、そちらには残念ながら合格できませんでした。レギュラークラスの2次試験に関しては個人的にも色々悔いが残る…というか、やりきれなかった感覚があるので、これをバネに、基礎クラスでぐんぐん成長していこうと思います。
10年前は基礎クラスにも受からなかったんだから、きっと成長している、はず。

ちなみに、本当は基礎クラスに行くにももう一度オーディションを受けなければいけなかったんですけど、今回は不合格通知の後日電話が来て「基礎クラスに通いたいなら、オーディションは合格(スキップ)でいいですよ」というお電話をいただけました。「もうだめだ…」と思ってたから、棚ぼたなご連絡にアラサーはぴょんぴょんして喜んでしまった。頂いたチャンスをしっかり活かしていきたい…!

アラサーOLの夢追い物語に乞うご期待!!!


これからの話


そんなこんなで、2023年、28歳は改めてチャレンジの年にしていきます。
なんだかんだとやれなかった言い訳を繰り返してきた人生ですが、ようやくみんなに堂々と「頑張ります!」と言えるようになりました。

本当は、もっともっと大きな夢があります。それはXRやメタバースに賭けるものと同じ、「芸術が広く民主化した世界」。芸術全般やるのも見るのも、みんなが気軽に、心のままにできるような世界です。
それをまっすぐ目指すためにも、まずは自分がプレイヤーとして力をつけたい。なんにせよ、精一杯やりきってから論じられるようになりたい、と思っています。

そして夢とはまた少し違う話ですが、わたしの目標は「笑顔で死ぬこと」。
役者の夢に関してもやりきった感覚はまだないから、その感覚を得てから死にたいなと思っています。多分今のまま死んだら、「なんかあの時逃げちゃったな…」って思いながら死ぬことになる。それは嫌なので…。

28歳って、もういい大人だと思います。
周りには結婚して子供を育ててる人もいる。仕事で責任ある立場について、さらに頑張る人もいる。
でも、今が一番若いし、いつだってわたしは満足するまでわたしの人生を生きたいから、自分の責任で声優の夢に再チャレンジします!そんな今がすごく楽しいし、こんな今を積み重ねて未来をつくりたい。
大人のみんなも、やりたいことにはどんどんチャレンジしていこう。すごく楽しいよ。

まだまだ未熟なわたしですが、顔を合わせた時には明るく応援してくれたら嬉しいです!

入所式にて、賢プロ社長の内海賢太郎さん、スクールデュオ校長の野村道子さんと。
まずはスタートラインに立つぞ!おー!


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