ノーベル賞の研究に関わり、マッキンゼーに入社。起業して2年半でIPO。そんなCEOがSpiral.AIを創業した理由とは?
こんにちは、Spiral.AI note編集部です。今回は、CEOの佐々木にインタビューをしました。
佐々木は、素粒子物理学の研究者としてノーベル賞を受賞した研究に関わり、その後マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社します。そして、Neural Pocket株式会社の創業にCTOとして関わり、わずか2年半でIPOを達成しました。
このような経歴を持つ彼が、なぜ今巨大言語モデル(LLM)という領域で、Spiral.AIというスタートアップを起業したのでしょうか。詳しく話を聞きました。
プロフィール
「技術とビジネスの両面を理解できる人間になりたい」
素粒子物理学者からマッキンゼーに飛び込んだワケ
— キャリアのスタートについて教えてください。
私は素粒子物理学の研究者としてキャリアをスタートしました。物質を構成する最小の粒子、素粒子を研究する学問です。スイスにあるCERNという研究所が総本山の一つなのですが、そちらで研究を行っていました。大量の実験データが生まれてくるので、それを機械学習を用いて解析する研究に取り組んでいました。
2012年には機械学習の新しい手法であるディープラーニングという技術が誕生してきました。CERNでも積極的に活用しましたし、世の中では多くのベンチャー企業が立ち上がりました。この時期から私もディープラーニングが社会を変える可能性を感じており、その渦に飛び込みたいと感じていました。
ただ、研究者としてのキャリアだけでは社会へ出せるインパクトも限定的だと感じ、まずは技術とビジネスの両面を理解できる人間になることを目指しました。
ー 「技術とビジネスの両面を理解できる人間になりたい」という思いが、コンサルタントという次のキャリアに繋がってくるんですね。
そうです。その後、マッキンゼーというコンサルティング会社に入社し、主にデータ分析から戦略策定へとつなげる役割を担いました。経営とデータ分析の間に存在する文化的なギャップは想像以上に深く、いわゆるDXの難しさを感じるとともに、その大きな可能性についても再認識する機会になりました。
キャリアの軸は「新しい挑戦」次の挑戦は、巨大言語モデルの社会実装
ー その後はスタートアップでCTOとして起業されIPOを経験されます。佐々木さんのキャリアで大切にされていることを教えてください。
振り返れば、私のキャリアは「新しい領域への挑戦」が一つのテーマになっています。
今は、スタートアップという領域でさまざまな挑戦をしています。最初はNeural Pocketという会社でスマートシティ向けの画像認識AIを開発し、社員3人から250人規模に成長させました。外乱の影響が大きい屋外での安定した画像認識、および、24時間365日稼働のエッジデバイス提供ということで、AI技術をインフラ水準まで向上させた企業として、世界でもトップクラスの技術を積み上げられたのではないかと思っています。
2023年3月には、新たにSpiral.AIを立ち上げ、今度は巨大言語モデル(LLM)を社会実装するというテーマに取り組んでいます。
ー IPOを経てもう一度LLMの領域で起業という選択をしたのはなぜですか?
もともと起業をしたいということは小さい頃から思っていました。なかなか思いきれなかったのですが、将来、死に際に「起業しておけばよかった」と思いたくなくて、いよいよ決断をした形です。
一つのきっかけとして、「37歳で独立する」ことはずっと根底にありました。前職の社長が37歳で会社を立ち上げた経緯を知っており、私もそれに影響を受けた形です。
LLMに特に興味を持つことになったのはその後です。2022年の夏頃から海外で言語モデルを利用した様々なサービスが出始めており、この技術を日本でもしっかりやってかないと置いていかれてしまうという危機感を持ったのが発端でした。
ー 研究者・コンサルタント・経営者と経験されて、それぞれの部分でLLMと関係している部分がありそうですね。
そうですね。私は元々研究職出身です。素粒子物理学を例に取ると、理論の提唱から証明まで数十年、場合によっては数百年規模の長い時間をかけて研究が行われることもあります。そして、その完成を目指すプロセスは人間の寿命や時間の制約になります。
しかし、LLM技術を利用すると、一人の人間が学ぶことができる知識や経験を超えた範囲をカバーできる可能性がありますし、一人の人間が学びきれない範囲の知識や経験を含むデータを処理できるようになります。
この技術は、人間の脳の機能や寿命を超えて、より広範な知識を取り入れることができる点で、私の人生のミッションと合致しています。振り返ってみると、一貫しているトピックに巡り会えて、本当に幸運でした。
ミッション「世界の技術進化を10年加速する」に込められた想い
ー Spiral.AIが掲げているミッション「世界の技術進化を10年加速する」を設定した背景を教えてください。
私が小学校の頃から持っていた夢がこのミッションの根底にあります。技術が大好きで、それに何らかの形で貢献したいと心に決めていました。ただ、小さな貢献では面白くないと感じ、私の存在によって技術進化が10年加速するほどの影響を与えたいと思っていました。冗談のようですが、小学校の頃から本気でそう思っていました。
それをどうやって実現するかと考える時、キーワードになるのは「Exponential Technology」です。「他の技術発展を加速させる技術」のことで、例えば3Dプリンターなどが該当し、プロトタイピングの速度を上げる点で、新しい技術の誕生を加速させるものです。技術進化を加速する技術を作ると、技術進化は全体的に指数関数的に加速していきます。それがExponential Technologyと呼ばれる所以です。
— 小学生の時から「他の技術発展を加速させる技術」に興味があったのですね!
AIもまさにExponential Technologyの一つです。一番分かりやすいのは、github copilotかもしれません。プログラミングを支援するツールですが、驚くほど開発速度が上がります。自分が全く勉強したことのない言語でもサクサク書けるようになります。この力を使うと、新しいプロダクトの開発速度も上がりますし、研究開発も加速します。その研究の中から、より性能の高いcopilotのような支援ツールが生まれてきたりすると、まさに指数関数的な進化が起きていきます。
我々も、もう少し実業観点からにはなりますが、その指数関数的進化の一翼を担っていきたいと考えています。
AI導入の課題は「精度」と「インターフェース」にある。AIの社会実装の現状と課題
ー 3月の設立から約半年が経過しようとしています。多くのお客様にお会いする中で見えてきた日本におけるAI活用の課題について教えてください。
これまでのAIブームとは比べ物にならない温度感で、日本の多くの企業がLLMの重要性を認識しています。ただし、具体的にどのようなツールを使い、どのように導入すべきかについてはまだ混乱が見られます。おそらく7割から8割の企業が、AIの可能性は理解しているものの、どのように活用すべきかについては未だ確固たる方針を持っていない状態です。
今後半年でさまざまな事例が増え、企業が自社でAIを導入しようという流れが生まれると予想しています。足元の動きで行くと、社内文書の整理や社内問い合わせの自動回答など、業務効率化を図るための導入が多く見られるでしょう。
ー AI導入後、企業が直面するかもしれない問題も見えてきましたか?
AI導入後には精度面とインターフェース面での課題が浮上すると思っています。過去のAIの歴史を振り返ってみても、この2つの要因で頓挫したプロジェクトは数知れません。
ユーザーがAIに持つ元々の期待値は非常に高く、それに応えるのは容易ではありません。しかし、そこをしっかり乗り越えることで、本当の意味での「社会実装」が実現されます。前職でインフラ水準までAIを押し上げた技術力がここで活きてくると考えています。実際、Spiral.AIを立ち上げて一番はじめに開発したのは、ChatGPTが生成した文章を定量評価するための評価ツールでした。それを作ることで、地に足付いたPDCAサイクルを回せるようにしています。
ー ユーザーの持つ期待値を超える精度を持ったAIが必要ということですね。インターフェースの課題にはどんなものがありますか?
インターフェースも重要な論点です。基本的に人間は怠惰な生き物です。これまで慣れ親しんだ業務オペレーションを変えることを快く思う人は少ないはずです。いかに人間に負担をかけずに、これまでの導線上にAIを配置していくかということが大きな課題となっていきます。
LLMについてよく言われるのはプロンプトの書き方です。実際にはそれほど障壁の高いものではないのですが、「プロンプトエンジニアリング」という名前が付けられてしまい、心理的ハードルが発生する要因となっています。
また、そもそもキーボードのタイピングが相当量欲しい時点で、スムーズな導線とは言いづらいかもしれません。Spiral.AIでは、後述するようにインターフェースをスムーズにする開発も進めています。
エンタメ領域にとどまらず、企業活用や日常生活への進出も!
「Character AI事業」が目指すもの
ー 新規事業であるキャラクター事業の内容と狙いを教えてください。
キャラクター事業では、従来の言語モデルが目指していた「正しい回答を提供する」ことを一歩進め、人間らしい親近感や面白さを持たせたキャラクター性を取り入れることを目指しています。これにより、ユーザーがAIとのコミュニケーションをより楽しむことができるようになります。また、特定の人物のキャラクターを読み取り、それを言語モデルに組み込む試みも行っています。
名前から連想されるように、はじめはエンターテイメントの領域でキャラクター事業を育てていきますが、それに並行して、企業や日常生活への導入も狙っていきます。
ー エンタメ領域以外にも進出していくのですね!具体的にどんな応用を考えていますか?
例えば、私はインターンの学生に「報告するときには、きちんと実験の目的・仮説・実験・結論・考察」をセットにするよう何度も繰り返し伝えています。アカデミア時代に、指導教官の先生に自分が口を酸っぱく言われたことを、インターン生にも伝えているわけですね。ただ、インターン生にとってはまさに今それを学んでいるところなので、いきなり完璧にできるわけではありません。
仮に私の思考や口癖を学んだキャラクターLLMが存在していれば、インターン生はそのLLMに対して壁打ちができるわけです。100回同じことを訊いても大丈夫な、まるで仏のような広い心を持ったLLMに、です。そういう使い方もあるのではないかと考えています。
こちらはあくまで一例で、実際にはキャラクターLLMは多くの産業や場面で活用できると考えています。例えば、店員が商品を販売する際や塾講師が授業を行う際など、人間との接点が存在するあらゆる場面でキャラクター設定が求められます。カリスマ店員や人気の塾講師などが一定人数いますが、その話し方をコピーするようなイメージです。
ー 幅広く事業の展開を考えていらっしゃるんですね!他にも何か構想はありますか?
自分自身の"コピー"を作成することも視野に入れて、これをTwin (ツイン; 双子)と呼んでいます。自分の特定の行動や発言を記録し、それを基にキャラクターLLMを作成するというコンセプトです。このLLMは、壁打ち相手にもなってくれますし、自分の代わりにECサイトで好みの商品を選んでもらうこともできます。旅行プランを立てるときにも、自分の性格を反映して色々コメントをくれます。疲れ知らずですし、何百回訊いても機嫌を損ねることはありません。
この話は、先程のインターフェイスの改善とも深く関連しています。現状、プロンプトの作成がユーザーにとって面倒くさいと感じる部分がありますが、これはイチから状況を文字列で指定しなくてはいけないからです。同僚ならば、「あれどうなったっけ?」と訊けるところを、わざわざ説明的に入力しなくてはいけないのは確かに面倒です。Twinが存在していれば、「あれ」を適切に補ってプロンプトを自動生成することもできるので、より言語モデル全体の導線をスムーズにすることができます。
LLMを活用して、巨大な市場を創造、日本を代表する企業へ。同じ志を持つ仲間を募集中。
ー 現在Spiral.AIでは絶賛仲間を募集中です。どういった方と一緒に働きたいですか?
Spiral.AIは現在、3つの価値観を共有する仲間を求めています。
まず、第一に「Spiralに世界を巻き込む」人物です。これは、言語モデルの可能性を信じ、それが人間の脳を拡張するツールとなることを認識している人です。私たちが目指しているのは、言語モデルが21世紀の社会を変える主要な要素となり、それに共鳴する仲間と共に新しいサービスを創り出せる環境を築くことです。
次に、「Spiralに仲間を巻き込む」人物を求めています。これは、仲間の成功を心から喜べる、そして仲間を助け成長させることができる人です。成功を共有し、仲間を助け成長させることは、チーム全体の成長につながります。
最後に、「Spiralに自ら巻き込まれる」人物です。言語モデルが引き起こす世の中の変化を恐れず、積極的にその流れに飛び込むことができる人を指します。言語モデルによる世界の改変は不可逆的な変化です。先に飛び込んで使いこなした方が優位に立ちます。そのマインドを持ち、アンラーニングを厭わないことが大切だと考えています。
ー 最後に、将来一緒に働く仲間へ最後に一言お願いします。
我々は、言語モデルという非常にパワフルな技術を利用して、巨大な市場を創出し、日本を代表する企業になるという目標を追求しています。この野心的な目標を達成するために、同じ志を持つ仲間と共に挑戦したいと考えています。
Spiral.AIでは、メンバー募集中です
Spiral.AIではメンバーを募集中です。もし少しでも興味があれば、ぜひお気軽にご連絡ください。
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