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#12 LEITZ-minolta CL

今回ご紹介するのは、1973年に登場したレンズ交換式のレンジファインダーカメラ LEITZ-minolta CL です。基本設計はドイツのLEITZ社、製造は日本のミノルタという日独合作カメラ。

海外市場での名称は LEICA CL 。最近デジタル機も同じ LEICA CL という名称で出ているのでややこしいですね。


どんなカメラ?


ROKKOR f4.0 90mmとCL + M-ROKKOR f2.0 40mm

フィルム式のレンジファインダーカメラです。

50年近くも前のカメラですが、素材や仕上げが良質なのでしょう、劣化しているところが感じられません。(これが金属カメラの良いところ)

レンズは、CLに合わせ、専用の M-ROKKOR f2.0 40mm (ミノルタ製)と、M-ROKKOR f4.0 90mm (ライツ製)の2本が用意されています。(海外市場での名称はそれぞれ、Leitz Summicron-C 40mm f:2、Leitz Elmar-C 90mm f:4 です。)

もちろん他のライカMレンズも使えますが、欲張らずにこの2本で使うのがカッコいいかと。 

ボデイ上面にはダイアル類がなく、シャッターボタンと巻き上げレバー、アクセサリシューのみのシンプルさ。ボディは長方形ではなく微妙な角度と丸みがあって、全体として洗練された美しさが感じられます。

裏面もいたってシンプル。

ファインダーは、40mm と 50mm、90mm のブライトフレームが用意されています。(90mm を付けると 50mm のフレームは消えます。いったいどんなカラクリなんだ?)

ファインダー内にはシャッタースピードと露出計の情報が表示されます。

巻き上げレバーでシャッターチャージすると、測光用のCdSセルが現れます。まさにTTL (through the lens) 中央部重点測光!


歴史的意味


ライカM3の登場

1954年に登場したライカM3は、世界中のカメラメーカーを驚愕させました。フィルム装填や巻き上げ、スクリューマウントといったバルナック型ライカの弱点の解消はさることながら、特に関係者を驚かせたのはファンダーの見え方だったと言われています。

ライカM3のファンダーはいわば究極のレンジファインダー。視界に浮かぶブライトフレーム、実像式のくっきりとした距離計像、パララックス補正。

日本の各社は「ライカに追いつけ/追い越せ」と35mmレンジファインダーカメラの技術開発を続けていましたが、ライカM3でライカははるか先に行ってしまいます。

同時にライカM3の究極のレンジファインダーは、レンジファインダーの限界をあらわにしました。画角の違う交換レンズに柔軟に対応することの難しさ、視差補正の難しさ。一眼レフならこれらすべて解決できるのに…

時代の移り変わり

ライカM3登場を機に日本のメーカーは開発の主戦場を一眼レフカメラにシフトさせます。当時の一眼レフカメラに残されていた「撮影の際にブラックアウトする」「絞り込むとファインダーが暗い」「ペンタプリズムの量産化が困難」などの技術課題をひとつづつ乗り越えていきます。(1957年にアサヒペンタックス、1959年にNikon Fとキャノンフレックスが登場)

ライカM3は好調な売り上げを示したものの、高級カメラの主力は一眼レフに移っていくと同時に、レンズ固定式の安価なカメラが台頭し、高級レンジファインダー機は時代から取り残されていくことになります。

ライツ社はどうする?

とりうる手は、
A) そのまま高級レンジファインダーで勝負、
B) 一眼レフ市場に参入、
C) 価格競争力のあるレンジファインダー機を開発。

こんな状況のもと、ライツ社は小型軽量なレンジファインダー機の製造をミノルタ社に打診。当時ドイツ国内の製造コストは高騰しており、日本で生産することで価格競争力を高めようという思惑なのだろう。1972年に技術提携が成立し、1973年 CL が登場します。

でも、「廉価版ライカ」って戦略的にどうなの?

その後ライツ社の経営不振もあり、結局CL以降、ライツ・ミノルタ合作の後継機が作られることはありませんでした。


おわりに


育ちのよいお金持ちがカジュアルなポロシャツで避暑地を歩いている、そんな感じのたたずまい。「ゴリゴリの高級機」ではないけど、とてもエレガント! 

カメラ好きの人が、一周回って最後にたどり着くようなカメラではないでしょうか。旅先でさりげなくこのカメラを使いこなしている人を見たら惚れてしまいそう。

フォーカスも露出もマニュアルなカメラですが、しっかり距離計と露出計があるので不便さは感じません。ゆったりとした気分でフィルム撮影を楽しめるステキなカメラだと思います。

『せめて note でお披露目させてもらえれば』企画をきっかけに、このカメラを防湿庫から取り出し、眺めていて、こんな風に感じました。




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