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『人類と気候の10万年史』を読んで

BLUE BACKS の『人類と気候の10万年史』を読んだのでポイントを書いておきます。著者は立命館大学古気候学研究センターの中川センター長です。

まず最近よく聞くこととして、地球温暖化のコンピューターシミュレーションによれば、今世紀末には2000年度を基準として最大5度の気温上昇が予測されています。これは大変なことですが、人類がまだ地球上に存在していなかった何億年前という大昔から、最後の氷期が終わって世界的な農耕の拡大が始まる1万2千年ほど前に至るまでの間、5度以上の温度変化というのは幾度となく繰り返されてきました(時には10度に達する)。で、直近の80万年間、氷期は10万年ごとに繰り返されてきて、現代は氷期に突入していておかしくない時代なのですが、前述の「世界的な農耕の拡大」をきっかけとした温暖化のせい(おかげ?)で食い止められている可能性があると。

筆者の重要な主張は、100年で5度くらいの緩やかな温暖化よりも、氷期が来ることのほうが怖いということです。氷期は平均気温が低いだけではなく、年ごとの気候変化が急激だという特徴があります。マヤ文明は9年間で6度の干ばつに遭い、衰退しました。農耕を基本とする生活スタイルは安定した気候のもとでは効率がいいけれども、これほど異常気象が多いと穀物の国家備蓄などもすぐ吹き飛んでしまいます。一方で狩猟採集のスタイルは多様な自然の恵みを受けるため気候変化に強いですが、生産効率の悪さから、多くの人口を支えきれません。現在の地球人口を考えると、農耕だろうと狩猟採集だろうと、氷期が来れば非常に困ったことになります。

地球温暖化を食い止めればそれで良いという単純なことではない、ということが、様々な科学の知見を元にして伝わってくる本です。正直、地球温暖化の話を常識にするんだったら、こういう大局的な話も知っておかないとおかしなことになると思うので、文系理系問わず全ての日本人にお勧めします。

ではでは。

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