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南アフリカのサラダ「ウムポココ」を君は今日知る。【オモコロ杯2023 銅賞】

★マンデラも愛した南アフリカのサラダ「ウムポココ」★

料理本が大好きで、しょっちゅう料理に関する本を眺めているのだけれど、先日『世界のサラダ図鑑』(誠文堂新光社)を眺めていたら不思議な名前の料理に出会った。

それが「ウムポココ」。

日本人にとって食べ物としてはかなりデンジャラスな発音だけれど、南アフリカを代表するサラダで、あの南アフリカの偉人、ネルソン・マンデラも愛したという。

そのまま読み進めると、材料としてはコーンミール(トウモロコシ粉)と、サワーミルクなるものがあればできるっぽい。

単純に思える材料の割に興味深い名前の料理、ウムポココ。

どんな味か気になるウムポココ。

発音するだけで楽しいウムポココ。

ウムポココ。ウムポココ。(口ずさむと妙な中毒性がある)

作ってみることにしたのでした。

★ウムポココ、情報なさすぎ★

前述の「世界のサラダ図鑑」にももちろん作り方は書いてあるのだけれど、現地で実際に作ってる人はどんな手順で作っているのか、さっそくネットで調べてみようと思った。

すると。

ない。

グーグルで「ウムポココ」で調べると、見事に結果が先述のサラダの本しかでない。

日本語に訳す時にありがちな発音標記の違いかと思って、より危なげな発音になる「ウンポココ」で調べてみたけれど、出てこない。

ウガリは出てくるが、調べてみると微妙に違うっぽい。あとウンポコの意味ってなんだろう。

ちなみに「もしかしてこっち?」の検索ワードで出てくるウンポコロコは映画「リメンバー・ミー」に出てくる曲らしい。

確かにはるか遠い南アフリカの国の料理だけれど、まさかこんなにマイナーな料理だとは。

ん?

ということは?

逆に言えばこれ、記事にするのは自分が日本初になるのかもしれない

俄然やる気が高まるワタクシ。ええい、ここは電脳世界ことインターネット、日本語でダメなら英語や英語!と調べてみたら

あった!ウムポココの作り方!やっぱりメジャーな料理なのか、結構みんな作ってるぞウムポココ!

しかも発音がかわいいぞウムポココ!!

★ウムポココの材料★

本や動画で見る限り、ウムポココの材料は大きく分けて

・白トウモロコシ粉
・水
・塩
・サワーミルク

の4つで構成される。正確に言えばサワーミルク以外の3つで作ったウムポココに、サワーミルクをかけて食べるのが正式ルートらしい。

欲しいと思ったら白トウモロコシ粉が手に入る便利な時代

というわけでまずは白トウモロコシ粉をゲット。送料とか込みで2000円弱。粉としては高いと思うけれど、日本ではメジャーじゃない粉だからしかたないかもしれない。現地ではきっともっとお手軽な価格なのだと思われる。

ウムポココ本体は粉さえあれば作れたも同然。

まずは2カップ分のお湯を沸かし、塩を一つまみ。

「一つまみ」と言いつつ、現地の人の動画とかで見るとどばーっと入れていた。後々食べてみた感想から言うと「一つまみだと少ないけど、どばーっと入れるとややしょっぱい」という感じ。三つまみくらいがベストな気がする。

塩を入れたらそこにトウモロコシ粉を1.5カップ分入れる。

ふわっとしたトウモロコシ匂いが、「あ、知ってる匂いだわ」となって妙に安心しました

そうしたらここで蓋をして10分待つ。現地の人が作る動画によれば、混ぜないで10分待つようです。大らかさがなんかいいよね。

鍋底がこげやしないかと心配になるけれど待つのが肝心。

俺は今アフリカにいる…大らかな大地アフリカ…と思いつつも、やっぱり心配が勝ってしまって、結局8分くらいで蓋を開けてしまった。後々考えるともうちょっとはやくても良かったかもしれない。

蓋を開けた時の鍋の中の様子がこちら

水を吸ったトウモロコシ粉をここからは丁寧に混ぜていく。

粉っぽさが無くなるよう丁寧に混ぜます

何となく作る前は「マッシュポテトみたいな感じなのかな」と思っていたけれど、むしろ「餅をこねているような感じ」が近い。

どんどんと抵抗が強くなっていくので、段々と混ぜるのに力が必要になってくる。

ここら辺まで来ると、「出来たと自分を納得させるか否か」が大事な気がしてきたので、粉っぽさがなくなったあたりで完成とすることにした。

おからっぽいけど弾力がすごくある

完成。ウムポココのベース。

できたてのあったかいウムポココを食べてみると、ほんのりとしたトウモロコシの風味と、塩気が絶妙にマッチしていて、歯ごたえも適度な抵抗感があってよい。

これがサラダかどうかはともかく非常に美味しいぞウムポココ。居酒屋でこれをつまみながら飲むビールとかチューハイとか普通にありだなって感じ。

そもそも「サラダかどうか」なんて考えてみても、日本にはポテトサラダもラーメンサラダもあるのだから、これがサラダでも全然問題ないのでした。

★第二の関門、サワーミルク★

ベースができたところで、次に必要なものがこれまたなじみのない食材だった。

それが、サワーミルク。

これがサワークリームだったら、ちょっと品ぞろえのいいスーパーに行けば間違いなく手に入る。明太子と混ぜたりすると美味しいし、お菓子作りにもよく使われる。

けれどこちらがほしいのは「サワーミルク」の方。

サワーミルクはそのまま「発酵したミルク」。ヨーグルトでもなく、チーズでもなく、牛乳が牛乳として発酵したもので、海外では割とメジャーな飲み物らしい。(イチゴ味とかの、味付きのサワーミルクが人気らしい)

日本にないなら自作できないものかしらと思って調べたら「夏場に外で牛乳を2日ほど放置する」というかなりデンジャラスそうなレシピも出てきた。(下のリンク先で説明があります。というかこの記事がめっちゃ面白かった)

夏場に放置。8月の今はまさにベストシーズン。
確かにそれはそれで発酵は間違いなくするよなぁ…挑戦するかなぁと悩んでいたら、どうやら牛乳にレモン汁を入れるだけでもサワーミルクっぽくなるらしい。

ごめんね。おれは安全策をとるよ…

というわけで、牛乳とレモン汁。牛乳なトロトロになるまで少しずつかき混ぜながらレモン汁を加えていきます。

伝わりにくいかもだけど、大分まったりした感じになりました。

少し飲んでみると酸っぱい牛乳の「酸っぱい」と「牛乳」の間に「若干のコク」があるようなないような。現地の味が確認できないのでこれが正解かはわからないのですが、とりあえずこれをサワーミルクとしたいと思います。

というわけで材料はそろった

出来上がったウムポココ。これの食べ方は

こう。

サワーミルクをウムポココにかけて食べる。というか、サワーミルクをかけてこそのウムポココらしい。

サラダに牛乳をかける、というとなんだか日本人的には「???」となってしまう。

けれどサワーミルクをドレッシングと考えればこれもありなのかもしれない。それにコーンフレークはコーン(トウモロコシ)にミルクをかけるわけだから、実は勝利を約束された組み合わせ…??

と思いながら早速一口

いただきます。

これは…なんというか…

未知!

本当に未知の味!

まず前提として、トウモロコシ粉で作ったウムポココ自体は、もっちりとしてほのかな塩気があって「あ、なるほどこれはこれで…」となるし、サワーミルク(もどき)もレモンの酸味とほんのりとした苦味が移った牛乳が「あ、まぁこれはこれで…夏場にいいかも…」となる。

が!

これが組み合わさると「え?」となる。ボキャブラリーにないこの味。

まずいのか?と言われたら「決して美味しくはないんだけど…」という感じ。けど、「…」の続きが出てこない。「まずい」ではない。かといって「クセになる味」だと媚を売りすぎた表現になる。

ではこれは一体…!?(つづく)

という感じに頭が支配されました。

異文化を食事で体験する、という意味ではここ10年くらいで一番の衝撃だったかもしれない。(次点はイギリスのトーストサンドイッチ)

★ウムポココ、多分日本向きにできる★

ウムポココ、正直に言えばすべての日本人がニッコリ笑って大好きと答えるような料理ではないと思う。

けれど、そのあまりの異文化さに、食べたあと僕ははるか遠い南アフリカを思うくらいには頭の中に風が吹き抜けた。『地球の歩き方』の南アフリカを図書館で借りて読んだくらい。(ちなみにウムポココは載ってなかった)

これだといつまでもウムポココはウムポココのままなのだけれど、これ、日本人向けにも結構できる気がする。

例えば

サワーミルクの代わりにカレーをかけた、ウムポココカレー。(大真面目に言ってます)

サワーミルクの代わりに熱ーい出汁をかけるウムポココ茶漬け

ウムポココを豆板醤や挽肉と炒める麻婆ウムポココ

そう、今流行りのオートミールの米化のように、ウムポココをご飯のように使うと、南アフリカからやってきた陽気なトウモロコシボーイとして一気に活躍の幅が広がる気がするのだ。

ためしにウムポココカレー作ったらすごく美味しかったです。


★まとめ★

南アフリカの愛されサラダ、ウムポココ。

その実態は、私たち日本人に南アフリカの風と、異文化への強烈なセッション感を与えてくれる不思議な食べ物だった。

けれど、このウムポココを私たち日本人がガラパゴス化させた、ジャパニーズウムポココが今後生まれてくる日もあるかもしれない。

日本にまだ浸透していない、可能性の料理ウムポココ

その花を咲かすのは、もしかしたら目の前の料理好きのあなたかもしれない。

ぜひ、ウムポココを皆様やってみてほしい。


おまけ

ウムポココを作ってる時に鍋肌に出来た「おこげ」的なものも、パリパリとしてコーンの風味がしてとっても美味しかったです。

これだけでビールが進む


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