料理通信のラッキーフードに、感謝を込めて
料理通信という雑誌がある。
(表紙がいつもかっこいい)
料理通信社という会社が出している雑誌で、2006年に創刊された。
僕がこの雑誌に出会ったのはちょうど創刊したての頃で、
「料理系の雑誌読みたい」欲と
「大学生なんだからちょっとかっこいい雑誌を読みたい」欲
そんな男子大学生の二大欲求にこたえてくれたのが、この料理通信だった。
既存のグルメ雑誌とは違う、あか抜けた特集やレイアウト、美しい写真。
けれど雑誌全体から伝わる「食」に対しての熱すぎると言わんばかりの愛情。
最新号をいそいそとかっては、大学の部室でこれ見よがしに読んでいた。
また、実際に参考にしたことも多く、
「ロールキャベツの玉ねぎを炒めるときは玉ねぎがひたひたになるまで水を入れて蒸発するまで炒める。を何回もする」
とか
「トマトの酸味を消したかったら塩を入れる」
とかは、この雑誌から教わった(と思う。バックナンバーが多すぎて探せないけど)。
(最近の特集では個人亭に超スマッシュヒットだった粉もの特集。これ見てステイホーム中に手打ちパスタを作り、パスタマシンが欲しくなった)
他にも、この雑誌で紹介されたお店にも足を運び、数々の名店に出会った。中でも大好きだったのは表参道に会った「TOQUIO」というお店(現在は閉店)
店主のニコニコとした笑顔と、「頼むからもっと商売っ気をだして…!」と言いたくなるようなサービスの良さ、そして美味しすぎるスイーツと居心地の良さに、何度も「自分の中の必殺のお店」として活躍していただいたものだった。
語りだしたらきりがない料理通信なのだけれど、その中でもずっと異彩を放っているコーナーがある。
それが「星から教わる今月のラッキーフード」のコーナーだ。
このコーナーは、雑誌の最後の占星学のページの中にあるコーナーで、文字通り各星座の「今月のラッキーフード」が載っているのだけれど、さすが食の最前線を突っ走る料理通信。そこで扱われている料理が、そんじょそこらの「今日はアンパン!」みたいなラッキーフードとは全然違う。
例えば2018年12月号のラッキーフードの一部を取り上げると
牡羊座…ゴルゴンゾーラのペンネ
牡牛座…スモークサーモンのクレープ
双子座…ハーブウォーター
と、今までこんな料理がラッキーフードになったことがあっただろうか。というような料理が並んでいる。
他にもこの号では「サルティンボッカ」という、一見しただけで「あぁ、サルティンボッカね、今日の晩御飯はそしたらサルティンボッカにしよっと!」というご家庭は多分日本で殆どないのでは・・・!?というようなかなりぶっ飛んだ料理が出てくる。ちなみにサルティンボッカとは仔牛肉とセージと生ハムを挟んで焼いた料理のことらしい。美味しそう。
そうかと思えば「アップルパイ」みたいにその気になればコンビニでも買える料理が出てきたりする。
この「今月のラッキーフードのコーナー」は、このように毎月の自分のラッキーフードが何かを楽しむコーナーであると同時に、その月の各星座で「一番食べる機会がありそうな料理」と「一番食べる機会がなさそうな料理」を比べたり、「一番高そうな料理がラッキーフードな星座」と「一番安そうな料理がラッキーフードな星座」を比べたりするのも楽しい。
例えば2018年7月号のラッキーフードコーナーを見る。
(卵料理特集なのに、こんなにカッコよく、本気な雑誌。それが料理通信)
この号の中で見ると、一番食べる機会がありそうな料理はみずがめ座の「餃子」で、一番食べる機会がなさそうな料理は「野菜のエテュベ」だった。
「エテュベっでなんだべ」と調べてみたら野菜の水分だけで蒸し上げる料理のことらしい。ちなみに次点はさそり座の「ナスのムサカ」。どうしてもラピュタのあのキャラが出てきてしまうが、茄子を使ったギリシアのミートグラタンのことだそうだ。
また、「一番高そうな料理がラッキーフードな星座」は蟹座の「鮎のコンフィ」。一方で一番安そうな料理がラッキーフードな星座は双子座の「クミン塩」だった。
(お手軽に買えます、クミン塩)
塩て!片やコンフィで、片や塩て!!
僕は双子座なのでこれを見た時に結構衝撃的だったのを覚えている。
記事を書くにあたり、もう一号同じ条件で比べてみようと思って手元にあった2020年7・8月合併号を開いた。
(名作レシピ特集。コロナの影響もあって、合併号になってきた)
すると愕然とした。
双子座のラッキーフード、またクミン塩…!
双子座の自分としては、これは永遠のラッキーフードとしてクミン塩を購入しなきゃいけないような気分になる。というか今買った。これ書くと同時にインターネットでお買い上げした。とりあえずハンバーグを作ろう。
ちなみにこの号の一番食べる機会がありそうな料理は魚座の「卵サンド」で、一番食べる機会がなさそうな料理は「ホワイトアスパラガスの前菜」。
「一番高そうな料理がラッキーフードな星座」は蟹座の「アクアパッツァ」。一番安そうな料理がラッキーフードな星座は双子座の「クミン塩」だった。
ホワイトアスパラガスの前菜は、そもそもコース料理を食べるという前提がないと前菜が発生しないし、その中でホワイトアスパラガスが出てくる可能性はほぼほぼ運だけではつかめないだろう。まさにラッキーフード。
そして蟹座が強い。
蟹座が強いなんてセリフ、「聖闘士星矢」以外でいうことがあるなんて思いも見なかったけど、まさかの二冠だ。双子座…がんばろうぜ。
こんな風に、一粒で何度も楽しめるのが、料理通信の「今月のラッキーフード」のコーナーなのだ。
…だったのだ。
本当だったらこの記事は、この料理通信のラッキーフードコーナーを紹介し、なんだったら最新号のラッキーフードを自分で作って食べて、本当にラッキーになるか、などの記事を書こうと思っていた。
けれど、あれ、そういや最新号ってまだ手元にないな、と思って、料理通信のホームページを見て愕然とした、というかもっとも見ておくべきだった。
料理通信は、なんと、2020年1月号をもって、雑誌としては休刊になったのだ。
(それらしさを微塵とも感じさせない最終号。むしろかっこいい)
えー!この記事書こうと思った時には休刊だったのか…と愕然としてしまった。最終巻を見ると、料理通信は第2章を始動させるとある。今後もSNSなどを通じて食の情報は発信していってくれるとのことだったが、やはり寂しさは否めない。
それでもやっぱり、この雑誌に僕がかけることばは「ありがとう」であると思う。
この雑誌を通してであった食の知識、美味しい店、そしてそれを通じて僕に起こしてくれた数々の体験や思い出は、かけがえのないものであるからだ。
ちなみに、最後の料理通信の、双子座のラッキーフードは
パネットーネ
だった。最後の最後まで料理通信らしいそのフードチョイスに、僕は少しだけ救われた気分になった。
ありがとう料理通信。
これからも応援してます。
※電子版はすぐに買えますが、雑誌としてのバックナンバーをお求めの際はお急ぎください。すでに売り切れてる号もあるようです。
サポートでより凝った料理記事などが書けます。よろしくお願いします!