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奥深いぜ!ドンサンド!

★ドンサンド開発前夜

 ドンサンドとはすなわち「丼サンド」のことだ。

「天丼をサンドイッチにしたら美味しいのではないか」
そう思ったのは確か大学生の頃だったと思う。
 ここで世の中の皆様は
「なるほど、天丼の頭の部分をサンドイッチにするのね!それっておいしいし映えるかも!」
 と考えるかもしれないがそうではない。天丼を、丼の主成分たる白米もろともサンドイッチにするということだ。

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(ネタバレするとこういうことです)

そもそも僕は「塩気がある食べ物なら何でもご飯のおかずになる」という信念を掲げて生きており、高校生の頃にコンビニのハムサンドをおかずにご飯を食べて母を驚愕させた思い出がある。つまり、サンドイッチはご飯に合う。逆にそれは「ご飯はサンドイッチに合う」ということだ。

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(当時の再現。再現ついでに食べてみたけどやっぱりハムサンドはご飯に合う。)

 そして僕は大学生の頃にコンビニでサンドイッチを作るバイトをしていたため、「ぐへへ、世の中の全てをサンドイッチにしてやろうか!」という、謎のサンドイッチに対しての強気を持っていた。

 現にサンドイッチのバリエーションは多く、世の中にはトーストサンドイッチというトーストをパンで挟んで食べる文化もあるのだから、ご飯を挟んだっておかしくはない。

 しかし当時はまだ大学生。勉強にサークルに飲み会に麻雀に忙しかった僕は、それ以上前に進むことはせず、天丼サンドイッチは机上の構想にとどまり、その実現がなされることはなかったのであった。

★ドンサンド・大地に立つ

「天丼をサンドイッチにしたら美味しいと思うんだよね」
という話をしたのは当時の彼女(現マイワイフ)だった。

 飲み会の場だったとは言え、この話をされても別れを切り出さなかったマイワイフは菩薩かサンドイッチ伯爵の生まれ変わりなのかもしれない。

 とはいえ常識人である彼女は「そんなの美味しくないわよ」と言い放った。多分世の中のほぼ全ての人が同じ反応をすると思う。ご飯を食パンにはさむなんて!と人は言うだろう。

 けれど僕はそう言うことを言われると「じゃあやってみようじゃないの」となってしまう人だった。

そもそも「食パン×丼」と考えるからおかしいのであって、炭水化物×炭水化物という概念で考えれば、有史以来人はそれを多くの食卓でかなえてきた。

・ラーメンライス
・お好み焼き定食
・焼きそばパン
・そばめし

 などなど。
 だから食パンにご飯が挟まっていたって全然問題はない、はずなのだ。

 翌日、僕はスーパーに向かい、総菜の天丼とサンドイッチ用の食パンを買い、ドンサンド第一号である天丼サンドを完成させた。

 食べてみて、その時の感想としては「美味い!」だった。

 天ぷら部分のコク、そしてたれの染みたご飯が、食パンのわずかな塩気とジャストマッチして、とんでもなくおいしい。え、これ大発見じゃない??と一人で小躍りしたのである。

 あれから幾星霜。
 僕の中でドンサンドの存在は段々と増していった。
そしてそれと同時に「あれ、本当にそんなに美味しかったのだろうか?」とも思うようになった。思い出はいつだって過去を美化する。

 確かめねば。

妻が仕事で僕が休みの日。僕はスーパーに向かった。

★ドンサンド・うまい。

 世の中のサンドイッチが大抵「パンに●●挟んだだけ」で出来上がる簡単料理なのと同じように、ドンサンドも作るのは超簡単だ。

 ドンサンドの材料は

 ・スーパーで売ってる丼
 ・食パン2枚

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 以上で完成する。

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 パンを二枚出して

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 丼をドーン!(お約束的表現)

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 そして食パンをパーン!(お約束的表現2)

 数年ぶりのテンドンサンドの完成である。

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 横から見ると偉いボリュームになっている。コスパもばっちりってことですな。

 少し上からぎゅうぎゅうと押して、パンと天丼をなじませてから、かつてサンドイッチマシーンとして活躍してた頃の経験を活かして斜めに包丁を入れる。

 断面。

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 これを美味しそうと思える人間なんだよなぁ、俺。と頷きながら思ってしまうくらい美味しそう。
 食べる前から少なくとも自分にとっての勝利は決まった。

 数年ぶりの実食。「パンならコーヒーでご飯ならお茶だが、ドンサンドは一体何と一緒に食べれば…」と思って結局麦茶と一緒に食べた。

 通常のサンドイッチの1.5倍くらいの大口を開けてパクリ。

 ・・・うん、やっぱ美味いわこれ!!

 先述した通り、天丼部分のコク、たれのあまじょっぱさ、それを内包しているご飯の甘さ、そして食パンの塩気がすごいマッチしている。逆にご飯がないと、具材の味が濃すぎてきっと途中で食べ飽きてしまいそうになるんじゃなかろうか。ご飯とパンの組み合わせ、優秀。

 さらに考えれば、丼というものを箸を使わず、片手で食べれる。これって丼業界の革命なのでは・・・?と自分のアイディアに戦慄が走る。

 美味い美味いと一切れ食べた後、僕は再び台所に立った。

 そう、人は過去の自分よりも前に進むべき生き物。

 ドンサンド第2号

 「カツ丼サンド」

 を作るためである。

★カツ丼サンドは意外な結果に

 正直言えば、カツ丼サンドは作るまでもないだろうと思っていた。
 なぜならサンドイッチ業界にはサンドイッチ界のドンたる、「カツサンド」があるからだ。
 
 カツサンドのパワーと実力は言うまでもない。サンドイッチメーカーだけでなく、ちょっとこじゃれたレストランのテイクアウトなんかにも登場し、カツのバリエーションだってポーク・ビーフ・チキン・メンチと幅広い。
肉×サンドイッチのなかで最も強い(すなわち美味しい)サンドイッチがカツサンドだろう。

「それがさらに卵と出汁で閉じられたカツ丼サンドなんて、美味しいに決まってるじゃない!」と思ったのだけれど、それを確たるものにするには作って食べるしかない。何故なら世の中でドンサンドを食べたことのある人なんてほとんどいないのだから。

というわけで材料。

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食パン二枚と市販のカツ丼

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これをこうして

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こうして、はい完成!調理時間およそ2分。

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横から見るとテンドンサンドよりも標高は低く見えるが、これは天丼の方が具材が多いせいであって、おかずの攻撃力は引けを取らない。

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断面図。白いご飯が美しすぎて、すごい分厚い食パンで挟んでるようにも見える。

 約束されたエルドラド(黄金郷)。いざ実食!

 …あれ??

 テンドンサンドほどおいしくない・・・?

 これは意外だ。意外だ意外だと思いつつ、その理由を探るべくパクパク食べていくと、何となくその理由が分かった。

 テンドンサンドのコアである天丼は、「タレ」で味をつける。
 一方、カツドンサンドのコアであるカツ丼は「出汁」で味をつける。 

この出汁、カツ丼の攻撃力が高いがゆえに(そして僕がいるところが関西だからなのかもしれないけど)あっさりとした味付けになっており、ご飯にしみこんでもご飯の甘さが引き立つばかりでパンと馴染まないのである。

 ははーん、これは意外!と思いながらパクパクと食べつつ、一切れを完食。カツ丼と天丼だったら迷わずカツ丼を選ぶ人生を歩んできているけれど、まさかのドンサンドだったら今後俺は迷わずテンドンサンドを選ぶな、という逆転現象が起きたのだった。

★まとめ ドンサンドには未来がある

 「丼をサンドイッチにしたらなんでも美味いんじゃぁ!」
 という乱暴な結論になるかと思いきや、ドンサンド、意外にも向き不向きのある「丼」があることが今回明らかになった。
 
 天丼が上手くいってカツ丼が上手くいかなかったということを踏まえると

 美味くいきそう…うな丼・ソースカツ丼
 あんがいうまくいかなそう…親子丼・牛丼

 というように今後検証を必要とする課題も現れてきたのである。

 今後ドンサンド第一人者としてこの研究を(妻にばれないところで)こっそり続けるとともに、いつかドンサンドが原宿で大ヒットした時代が来ることがあったら
「私が第一人者です」
 という顔をしてヒルナンデス!とかに出たいなと思う、そんな今日この頃。

★おまけ

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 ドンサンド×2を食べるのは無理だったので、一切れずつ冷凍したのだけれど、この形にラッピングすると俄然サンドイッチ感が沸いて面白かったです。

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