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#13 自分を識る~瞑想のススメ~ 2023/06/11

はじめに

人生は自分を味方につけることから始まります。そのためには、ヴィパッサナー瞑想が効果的であることをお話します。いつもながら前置きが長いのはご勘弁ください。本題にいきたい方は「ヴィパッサナー瞑想について」の項目まで目次から飛んでください。

小さい頃を振り返ってみよう

私はADHDの気質があるため、小学校の時から50分の授業を受けることができませんでした。確か1980年代は月曜日から土曜日まで学校があって、授業は50分だったような気がします。年がバレますね。授業中、モンシロチョウが窓の外にいると、いても立っていられなくなって、授業中にも関わらず出ていき、モンシロチョウと遊んでいました。それを繰り返しているので、親を呼ばれることがありました。小学校の先生より、「しんぼうくんは授業中出ていってしまいます。注意してください。」と言われて時に、親は「先生がしんぼうにとって興味がわかない授業をしているから出ていっているのではないですか。この子はあなたの授業よりモンシロチョウの方が学びがあると感じているのだと思いますよ。」と反論していました。怒られるとばかり思っていたので、ホッとしましたね。その帰りに、「しんぼう、お母さんは先生に言いました。それで勉強できなければあなたも私もかっこ悪いよ。勉強をして見返してやりなさい。」と真剣な顔で言われ、そんな無茶なと怖かったですね。私の小さい時は家が貧しかったので、本を買ってもらったり、塾に行ったりする余裕はありませんでした。どうしてもピアノを習いたい時期があって、駄々をこねたのですが、母に「無理よ」と言われたので、仕方なく画用紙にクレヨンでピアノの絵を書いて、咲いた~、咲いた~と弾き語っていました。気配を感じ振り返ると、母が泣いていたのを覚えています。泣きながら「ごめんね、ごめんね」と言っていました。私は楽しかったのですが、画用紙に描いたピアノを弾いている息子が不憫に思えたのでしょう。当時の私は理由がわからなかったのですが、母に自分のしたいこと、欲しい物をねだるのはやめようと思いました。

私のやり方

小学校の先生に勉強で見返せと言われても、教材は買えません。毎月500円で買ってもらっていた学研の本と教科書が唯一の読む本です。だから時間があれば教科書を読むことにしました。何十回と教科書を読んでいたのを覚えています。不思議を面白かったんですよ。読むたびにワクワクしていました。授業は受けても出て行きたくなったり、動きたくなったりと焦燥感に駆られますので集中できません。しかし、自分から進んで読む教科書はすっと頭に入ってきました。結果、成績はよく、学年で1桁台には常にいました。それのような自学自習で動きながら勉強をするのが私のやり方なんだとわかっていたのに、その後は忘れてしまい、周りと同じやり方を模索するができなく、もがき苦しむ10年間を過ごしました。よろしかったら医学部合格までの道も書いていますので読んでください。

自分を知り、社会と関わっていこう

自分の得手不得手を知り、それを社会に活かしていくことを学ぶのが一番大切なことだと私は思っています。人間の幸福は人間関係の中にあります。社会と関わりをもつために、自分の才能を活かして、周りの人々のお役に立っていくことが、一番楽で近道であると思います。孫正義さん、堀江貴文さん、高橋がなりさんのような成功者でお金持ちの方はもう十分に地位もお金もあるのに働き続けます。それは自分の才能を活かし続け、人を喜ばせることが、自らの幸せにつながることをわかっているからだと思います。吉野源三郎さんの著「君たちはどう生きるか」の一節にこうあります。

肝心なことは、いつでも自分が本当に感じたことや、真実心を動かされたことから出発して、その意味を考えてゆくことだと思う。君が何かしみじみと感じたり、心の底から思ったりしたことを、少しもゴマ化してはいけない。そうして、どういう場合に、どういう事について、どんな感じを受けたか、それをよく考えてみるのだ。

吉野源三郎(著)、羽賀翔一(イラスト):君たちはどう生きるか

ここで述べられているのは、自分の感情や真実の心に従って行動し、考えることの大切さです。「いつでも自分が本当に感じたことや、真実心を動かされたことから出発して、その意味を考えてゆくことだと思う」という部分では、自分の直感や感情に基づいて物事を考え、行動することが重要であると言っています。つまり、自分が感じたことや心が動かされたことを大切にし、その意味を理解しようとする姿勢が大切であると説いています。また、「君が何かしみじみと感じたり、心の底から思ったりしたことを、少しもゴマ化してはいけない」という部分では、自分の本当の感情や考えを偽ることなく、正直に向き合うことが重要であると強調しています。自分の心の声に耳を傾け、それを素直に受け入れることが、真実の自分と向き合うために必要な姿勢であると言えます。最後に、「どういう場合に、どういう事について、どんな感じを受けたか、それをよく考えてみるのだ」という部分では、自分がどのような状況や事柄に対してどのような感情や反応を示すのかを深く考えることが求められています。自己理解や自己成長のために、自分の感情や考えに対する理解を深めることが重要であると述べています。この一節は、自分自身をよく知り、真実の感情や考えに従って行動することの重要性を教えています。自己成長のために、自分の心に正直であることが大切だという教訓が込められています。

自分は自分の思う通りに動いてくれません

この世界を楽に楽しく旅するために自分を知ってください。皆さん、体感しているのように自分ほど知っているようで、うまく動いてくれない存在はないでしょう。ダイエットしようしているのに食べてしまう、勉強してようしているのに、Youtubeを観てしまう、部屋を片付けようとしているのに、漫画を読んでしまう、例を挙げたらきりがありません。自分を理解するためのとても有効なツールがヴィパッサナー瞑想です。

ヴィパッサナー瞑想について

ヴィパッサナー瞑想はマインドフルネスの一形態でもあり、この瞑想法を通じて、現在の瞬間に集中し、自己の経験を全意識で観察する能力が養われます。マインドフルネスとは、現在の瞬間に意識的に注意を向ける練習のことを指します。これは、自分の思考、感情、感覚をジャッジメントフリーな視点から観察することを含みます。つまり、好きか嫌いか、正しいか間違っているかといった評価をせずに、ただそれらが存在することを認識し、そのまま受け入れることです。ヴィパッサナー瞑想では、このマインドフルネスの観点が強調されます。ウィパッサナー瞑想は、インサイト瞑想とも呼ばれ、自分自身の心と体の感覚や現象に注意を向けることで、内省と洞察を深めることを目的としています。

ヴィパッサナー瞑想のやり方

①静かで落ち着いた場所を見つけます。瞑想を始める前に、邪魔が入らない、安心してリラックスできる場所を見つけます。騒音や中断が最小限であることが理想的です。
 
②快適な姿勢をとります。床に座る、椅子に座る、または寝転ぶことができます。重要なのは、背筋をまっすぐに保ち、リラックスしつつも覚醒した状態を維持することです。
 
③まず呼吸に集中します。目を閉じて、自然な呼吸に注意を向けます。鼻や口からの空気の流れ、胸や腹部の上下動に注意を払います。呼吸は瞑想の焦点となります。心が動き、気を逸れても戻ってこれるようなアンカーとなります。
 
④そして体全体の感覚に意識を広げます。痛み、痒み、温度、圧力などの感覚がある場合、それに気づくことが重要です。しかし、それに反応する必要はありません。ただ気づくだけです。
 
⑤そのまま思考や感情を観察します。思考や感情が浮かんできたら、それに気づき、それを観察します。しかし、その思考や感情について考えたり、分析したり、判断したりしないようにします。それらはただの現象であり、来ては去っていきます。
 
⑥大事なポイントは気が散ったら呼吸に戻ることです。気が散って他のことに心が向いたら、優しく自分自身を呼吸に戻します。これは瞑想の一部であり、自己批判や否定は必要ありません。
 
⑦そして時間が来たら瞑想を終えます。瞑想を終えるときは、ゆっくりと自分自身を日常の意識状態に戻します。目をゆっくり開き、周囲を見渡し、体を少しずつ動かし始めます。
 
⑧最後に瞑想を終える前にリフレクションをします。瞑想の中で何を体験したかを少し考えてみると良いでしょう。あなたが観察した感覚、感情、思考について深く振り返ることは、自己理解を深め、次回の瞑想に役立てることができます。
 
これらは定期的に練習してください。ヴィパッサナー瞑想の効果は定期的な練習によって最大化されます。毎日の短いセッションから始めて、徐々に時間を延ばしていくことをお勧めします。どのくらいの間隔や時間でしたらよいかは次回お話させていただきます。
 
ヴィパッサナー瞑想は、自分自身の内面の世界を探求し、心と体の経験を深く理解するための強力なツールとなります。自己の観察を通じて、感情や思考、体の感覚に対する洞察を深め、それらが常に変化していることを理解することが、ヴィパッサナー瞑想の目的です。

研究紹介

Alberto Chiesaさんの2010年に報告されたVipassana meditation: systematic review of current evidenceという論文です。この研究では、ウィパッサナー瞑想が様々な精神的および身体的健康問題に対してどのような効果があるかを調査するため、さまざまな研究がレビューされています。これには、心の健康、ストレス緩和、アルコールや薬物依存の治療、慢性痛の管理などが含まれています。レビューの結果、ウィパッサナー瞑想が多くの精神的および身体的健康問題に対して有望な効果があることが示唆されています。特に、ストレス緩和、抑うつ症状の軽減、アルコールや薬物依存の治療に対して効果があるとされています。瞑想はコストがかからず、どこでもできますので、より簡便なのに、メリットは大きいです。最初は変化がわからないかもしれませんが、やりつづけると「あれ、なんか生きやすくなってる」と実感します。私は長期的に瞑想をしているため、疲れている時は長めに瞑想をしてすぐに効果を実感できますが、初めての方は3ヶ月ほどかかると思います。どの点を効果を見るか、例えば集中力とかレジリエンスとかのポイントに絞って効果をみると、1回のセッションで効果がわかることもあります。みなさんもぜひ試してみてください。

自分自身に実況中継してください

ヴィパッサナー瞑想は自分の周りに起こっていることとか、自分の内側から湧いてくる感情を実況中継します。悲しいなって思った時に、悲しいとか、むかつくという感情と自分が一体化していますよね。ヴィパッサナー瞑想はその感情から一歩引いてみます。今、自分という人間が感情を感じています。怒りが湧いた時には、今、怒りという感情を自分が感じています。もう一人の自分を作って、外側から自分を観察して眺めるやり方です。

NLPのディソシエーションと似ています

NLP(神経言語プログラミング)におけるディソシエーションと似ていますね。ディソシエーションは、ある体験や状況から自己を精神的に分離・距離化するプロセスを指します。これは、特定の状況や記憶に対する感情的な反応を減らすために使われます。具体的には、ストレスや不安を引き起こす出来事を客観的な視点から見ることで、その出来事に対する感情的な反応を緩和することを目指します。ディソシエーションは、特にトラウマやストレスの管理、恐怖症の治療、自己啓発のためのツールとして使用されます。それは感情的な反応を管理し、新しい視点や理解を得るのに役立つとされています。私はヴィパッサナー瞑想を知る前に、このディソシエーションを知りました。その技法を使うことで、私の強い衝動を伴った怒りから一歩引いてみることができ、周囲との軋轢を生むことが減りました。そして、ヴィパッサナー瞑想で具体的で継続的な訓練法を学び、それを続けることで、この状態は自分が苦手な状態だ、この状態を怒ってしまうぞということが、数秒前にわかります。わかると対処ができ、そっとその場から逃げたり、心ここにあらず状態を作り上げることで、周囲との軋轢がずいぶん減りました。

終わりに

しかし、ヴィパッサナー瞑想もディソシエーションもとても難しいのが問題点です。ヴィパッサナー瞑想は慣れたらできるようになるのですが、いきなりすると瞑想が嫌になるかもしれません。最初は、慈悲の瞑想といった動きがあって、わかりやすい瞑想をおすすめします。だから最初できなかったり、ヴィパッサナー瞑想の途中イライラしてやーめたってなったりしても気にしないでください。私もそうでしたから、一緒にがんばっていきましょう。ヴィパッサナー瞑想は自分を知り、自分を動かし、自分を味方につけるのにすごく有効です。最初は難しいと思いますので、自分のやりやすい瞑想からチャレンジしてください。皆さんが自分を味方につけ、素晴らしい人生を歩めることを祈っています。


Reference

Alberto Chiesa. Vipassana meditation: systematic review of current evidence. J Altern Complement Med. 2010 Jan;16(1):37-46.

🔽音声でも聴いてもらえる方はこちら
上記のお話に加え、慈悲の瞑想を放送しています。
音声の方が聴きやすい方もおられると思いますので良かったら利用ください。


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