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古民家再生始めました ~50年前に止まった時間が、動き始める~

重要伝統的建造物群保存地区(デンケン)の保存事業を申請して2週間が過ぎた。そろそろ連絡がくるはずだが、今のワタシは、目前に迫った退社のための手続きに追われている。

淡々と書類に記入し提出するだけの作業。でも、いよいよ入社以来30年以上を過ごした組織を離れると思うと、ちょっと切ない。年金とか健康保険とか、今まですべて会社が面倒みてくれてたんだなあとか考えて、しんみりしてしまう。それでも、こうして少しづつ前に進んでいくことは、会社員という生き方を卒業し、新たなライフ&キヤリアをデザインし実現するステップなのだ。

申請許可を待っている「デンケン」について、少し説明してみようと思う。もともと全く知識はなかったけれど、あれこれ勉強して少し詳しくなった。まず、伝統的建造物群保存地区というのは、昭和50年の文化財保護法改正の時につくられた制度。その目的は、全国各地に残っている城下町や宿場町などの歴史的な集落・町並みの保護だ。中でも価値が高いと認められた地区は「重要伝統的建造物群保存地区」と呼ばれていて、2023年12月時点で127個所ある。そこで保護されている歴史的建造物は3万件あまり。そのひとつとご縁があったというわけだ。

彼の地に東京からワンコ連れで訪れるのは、なかなか大仕事である。頻繁に通うのは無理があるし、実家ステイとは言え、いろいろ体制が整っていないところでの長期滞在は不都合が多い。よって、現地確認は2~3か月に一度にし、リアル&オンラインのハイブリッドスタイルで進めていくことになる。工務店社長の右腕である息子さんがデジタルOK世代なので、映像配信を組み合わせた現場確認にも快く協力してくれそうだ。憧れていた古民家再生に、イマドキのリモートスタイルで挑戦できるなんて、まったくもって幸運だ。

ところで、タイトルの写真は、建物の壁に残されていたカレンダーである。おそらく、1973年を最後にこの家は住む人を失ったということなんだろう。そのあと50年ものあいだ、時が止まっていたわけだ。そこにもうすぐ新しい暮らしがやってきて、再び時間が流れ始める。

デンケン特定物件に義務付けられているのは、外観の復元だ。つまり、建築当時の姿に戻すことができれば、内部は自由に改装してかまわない。私たちは、快適な暮らしを実現するため生活する場所には新しい設備を導入するし、可能な限り利便性を重視した仕様を選択するつもりでいる。けれども、100年前建築当時の佇まいを感じられる空間を蘇らせたいし、当時を感じさせるモノは残したい。だから、今では作られていないレトロ風情の板ガラスや、分厚い木材で作られた傷だらけの和裁台、繊細な建具などは、細工したり修繕したりして再利用することをお願いしている。神社仏閣の補修工事まで手掛ける大工さんたちだから、床柱や長押の移設すら「やってみようか」と言ってくださる。職人さんて本当にすごい。

そこで悩ましいのは、そうやって古いものを残して作り直すほうが、新品を購入するよりも費用がかかってしまうこと。昨今の建築費高騰と併せて考えると怖気づいてしまうが、もはやあれこれ心配してもきりがない。

やりたいことをあきらめるのではなく、やれる方法を考えるのが大事なのさ、と自分に言い聞かせるこの頃。…まあ、なんとかなるやろ!!!


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