ワクチン接種日記2
【9/21(火)】前回の続き。
初日は一滴も酒を飲んでいないのに、酔っぱらったみたいな身体を味わえて楽しかった。
待合室で襲われた倦怠感は、いつもの「ダルい」を10倍濃くした感じのものだった。自分のなかでは調子がいい時期なのに、絶不調の時期を思わせる身体の辛さ。思わず眠くなる。注射を打った腕は、痺れ&軽い麻痺により、指先までの感覚がおかしい。所在のなさは、酔っぱらったときのようだった。
腕が痛くて上げられない。しかしなんとなく高揚感がある。酔っぱらって転んだのにそのまま歩いてる、あの無敵な感じだ。そんな酔っぱらい方、もうずいぶんとしていない(はず)。
家に着いてもこんな状態で(「副反応、ヤバいっす」と言いながら)teams会議をしたのだが、ちょっと楽しい感じだった。
それから数時間後。まだ日付が変わる前なのに、とにかく何をしても眠い。活字は泳ぐようにゆらめき、好きな映画も、配信も、半笑いの顔のまま眠ってしまいそうになる。
左腕はどんどん熱を帯び、接種部は少し自分で触れただけで声をあげてしまうほどの痛みを発している。熱も上がっているような気がするが、体温を測るのも面倒ください。ベッドに片腕から倒れこむと、まぶたが下がってくる。世界は闇に包まれた。
完全に寝落ちである。
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【9/22(水)】
翌日。泥のような眠りからどうにか身体を起こすのがたいへんだった。2時間ほどベッドで意識があった。やっと起こしてみると、全身が惨めな感じだ。昨日はあんなに楽しかったのに。足に力が入らない。身体じゅうがボォっとしている。俗にリンパ節と呼ばれる部位が痛い。
昨日ガマンしていた風呂に入りたかったのだが、ベッドから起き上がれた時点でリモート会議の30分前で、タイムアウト。当日は風呂に入るなとは言われなかったが、念のため、やめておいたのだ。
そんなわけで、「あぁトレインスポッティングのに似てるんじゃ……」「ジャック・ケルアックってこんな状態で書いたのか……」という妄想に時折浸りながら、ひたすらリモート社畜。
といっても、全身がダルくてポンコツなので、簡単な資料ひとつ作るのにも時間がかかっただけですが。左腕は相変わらずで、体も火照っている。熱は「微熱」と言われる程度のものだが、体に熱がこもっている感じがする。
そうこうしているうちに、謎の喪失感に襲われる始末。昨晩の万能感から一転して、何もしていないのにドン底の気分だ。「まぁ最初から自分はポンコツなので、これぐらいのものなのなんだろうな………」「要はこれが、あるがままの自分…………」
お気づきだろうか。かなりヤバい状態である。こういうことは医学的な見地からすれば直接的な副反応ではないと言われるだろう。特に騒ぐつもりもないけれども、ツラいのは事実だ。
わたしも、ただボーっと生きているわけではない。接種当日の待機場所で、看護師に症状を話していた。
「2日経っても治らなかったら都の窓口か【かかりつけ医】に相談してくださいね」と優しく言われた。このときは「まぁ2日も経てばどうにか治っているだろう」とタカをくくっていたわけだが、収まる気配はない。しかし、まだ2日目なのだ。おそらく正確には1日経っただけ。まだ大丈夫。
そう思いながらガタが来ている身体を動かした(と言っても、少し脳を働かせてキーボードとマウスを使うだけだが)。
夕方以降は気を紛らわすように、その傍らでシリーズアニメやマンガを味わった。解像度がめちゃくちゃ低い状態で観てしまったので、すぐ涙ぐんだのが本当だったのか身体がおかしいせいかわからない。ひどい。「このあとちゃんと観るぞ………!」と心に決めた。
そして夜。休み明けの段取りも万全に組めたところで、またベッドに入る。いつもなら活動を始める時間だ。ほとんど何もしていないのに、ソシャゲのログボをもらうのが限界。休前日の夜がこんなに味気なく終わってしまうなんて久方ぶりだ。
しかし「これで寝ればきっと治っているはず」と思ったのだった。そもそも具合が悪いのではない。健康なのに、薬に反応しているだけなのだ。
それにしても、入眠までの時間がかからないと、本当にラクなんだなということがよくわかった。「このまま治らなかったら、寝つきのいい人になれるなぁ……」と思ったところまでは覚えている。
そして夢の中へ。
目覚めてもなお、副反応は続くことになろうとは思わなかったのだけれど。
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