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BFジャーゴンに気をつけて

たぶん20年以内に高校・大学に行った人や未成年・受験に関わったことのある人にとってはフツーの話だと思うけど……知らない人がいても笑わないでほしいです。

学校の仕事を始めてみると、ものすごい懐かしいことに再会することがある。しかも、自分が大学を卒業をしたのは20年近く前で、そこから先は学校法人とは無縁だったので、色々と知らない用語も存在する。

たとえば先日は、オープンキャンパスのことを「オーキャン」と略すのを知らずに、「オーケン?」と聞き返してしまった。

特定の集団で通用する隠語をジャーゴンと呼ぶ。業界用語や校内用語など、とくにネットの書き込みやSNSで使われる特殊な符牒はネットジャーゴンって呼ばれるけど、スラングの部類よりも狭い集団で、排他的に使いがち。厄介なのは、それをどこでも通じる一般名詞だと誤解していることが多いということだ。

教育の、というか学校に関わる業界にも当然存在している。大学受験生向けの学校一覧表を見ていてとりわけ目についたのは「BF」という記号。合格基準は「BF」と示される学校がけっこうある。初見だったと思う。いくらボーっとした高校生だったとしても、ここまで数が多ければ気づくはず。むしろ、気づかないはずがない。心の声がこんな感じ↓↓↓だったのだから。

(ボーイフレンド……いっぱい……!)

そんなはずがないとは思いつつ、BFといえばボーイフレンドしか思いつかない。受験生にとっては目の毒ではなかろうか。そこで調べたら、再び驚愕。

(ボーダー……フリー……だと?)

ボーダーがフリー、フリー。ちょっと、色々大丈夫なの? フリーって! と、思考停止しそうになった。

しかし真相がわかると、ひどくガッカリ。気持ちの置き所を失ってしまった。どうやら、予備校の前年調査で、不合格者数が少ないことで合格率50%のボーダーラインが設定できなかった場合に、そう呼ぶらしい。なんだろう、この盛り上がりをどうしてくれるのか。ひどくつまらない。

とはいえ、これは大学受験に限らない。一口に「BF」と書かれていても、色々な意味がある。バリアフリー(バリアフリーマップのことBFマップと書くことありますね)、ベストフレンド(ある年代にはこっちの方がささりそう)、いわずもがな地下階(ベースメントフロア)。そういえば育児業界ではベビーフード(しかも加工食品を指しているらしい)もそう呼ばれるらしい。

わたしは「BF」という単語を日常的に使った記憶はあまりないが(たぶん年代のせい)、マンガや小説に出てきてドキドキした覚えがある。1970年代後半~1980年代の雰囲気と一緒に出てきそうなワードだ。折しもレトロテイスト(昭和中期・後期・平成初期をざっくり混ぜ合わせたもの)が流行っているが、「BF」というワードは気を付けたほうが良さそう。誤解というか「なにこれ?」で終わってしまうかもしれない。

似たようなものに「BL部品(優良住宅部品)」「BL基準(優良住宅部品に値するか決めた基準」がある。これはベターリビングの略。マーク自体は「LB」と読めるので、「なんでもBLになるレベル」に達しなければ気づかないはずだ。偶然、「ベター」を強調したデザインにしたことが、ツキを呼んだのだろう。前に住宅備品のカタログを作っていて、スペック部分にやたら「BL基準を満たしています」という一文を入れなくてはならず、忙しいのに人知れず悶絶していたことがある。

ここまで書いて薄々気づいている、きっと自分がおかしいのかもしれない。
きっとそうだ。だけどあなただって、いつの間にかジャーゴンを吐いているかもしれない。たまに立ち止まって損はしないだろう。

(参考文献)
ボーダーフリーについて、Wikipediaが、いちばんまとまっていると思った。知らない人は、ぜひ読んでみてください。色々と思うところはある。

一般財団法人ベターリビング。トップページの左上に載っているロゴを見たことがある人もいるのでは。(ここがクライアントだったことはないです)

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