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ものうる人びと

編集出版・代理店・制作会社・法人広報・生活者として……いろいろな立場で広告に関わってきた著者による、広告にまつわる色々なテキストが集まっています。広告のまわりにいる人が、ふと足を…
広告にまつわる色々な文章が読めるマガジンです。ものを「売る」「得る」ためのフィクションとして広告を…
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記事一覧

『赫夜(かぐや)』の〈全冊著者直筆サイン入り〉は、もっと騒がれていい

澤田瞳子の『赫夜』は7月末に発売された。もとは雑誌『小説宝石』で連載されていた作品の単行本化だ。平安時代初期に起きた富士山の噴火にまつわる群像劇を、国司に任命された主に京から連れられてきた「鷹取」という男の目を通して描いた作品。 時代小説、あるいは歴史ジャンルの中で、人の心に棲む澱を吐き出しながらパニックを描く筆致は、澤田瞳子の作品ならでは。苦しいのだが心地よくて、癖になる。加えて本作には「なにがあっても生きていかねばならない、人の心のありようを描く」という強い意志がある。

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飲みたくならないビールのキャンペーンは何をさせているのか

ビールのキャンペーンは、わかりやすいものが多い。飲みたくなるように。 それなのに、先日新宿駅で行われていたOOHキャンペーンはとても不可解なものだった。ビールの広告なのに、特に飲みたくなるような気持ちをえぐってこない。ビジネス本とエールビールの取り合わせが大事なキャンペーンだが、ビジネス本読みながらビールって飲みたくなるんだろうか。 制作意図を知った後でも、人の多い場所で主役のビールに気づくのが難しいし、ひねるにも程がある。出オチを回収できないまま通り過ぎてしまう。

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街頭宣伝車はアドトラックじゃないの?

近ごろ少し寂しいのは、オフィスにいても漏れ聞こえてくる歌声がめっきりなくなったからだ。 「ばーにら、ばにら、ばーにら、ばにら、ばーにら、ばにら、こうしゅうにゅう!」 繁華街にほど近い幹線道路で見かけたことはあるだろう、風俗のお店の情報サイトのアドトラックから流れてくる、女性たちの掛け声だ。 東京都は、よほど派手なアドトラックを取り締まりたかった様子で、段階的に外堀を埋めてきた。映像を流すようなアドトラックに関して、都内ナンバーの走行禁止だったものが、6/30からは都外ナンバ

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「底」が見えたSNSの「運用」について(2024年 都知事選の振り返り)

SNSは、他者とつながるメディアではあり続けるけれども、オルタナティブなマスメディアになることは、ついぞなかった。違う意見と出会い、新たな世界を開く場所だなんて、思わない方がいい。10年前の自分に教えてあげたいけど、信じられないに違いない。けれども、その可能性は、もうない。今回の都知事選で露呈された。 SNSを駆使しない陣営の方が数的有利になってしまった。この結果に頭を抱えた広報・広告のSNS運用担当者は多いだろう。

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「勝手に人肌レタッチ」するとき、自らの思想が試されている

私はデザイナーやアートディレクターではないけれど、ディレクター業務として、案件によってはレタッチ指示をすることがある。商品と色を合せるとか、光源と比較して違和感のある影を消すとか(本当は撮影時に気づくべき「が、そうも言ってられない)。 人に関しても同様だ。広告や雑誌のグラビアの場合、被写体の所属事務所などからレタッチした後にチェックが入ることもあるが、そういう手順が存在しない案件も山ほどあって……むしろ、広告全体の数からすると、実際はそちらの方が大半を占めるはずだ。 広告

そして下版へ…(だけど、解放感に浸れない)

ひさしぶりに投稿しておいて、こんなフザけたタイトルを付けるのもどうかと思うけれど、本当にこのタイトルの通りの心境です。広報の仕事で制作していたツールが、明日ついに下版を迎えます。責了出したので、今さら何があっても、どうしようもありませんね。腹をくくるしかない。

美しい歯車になるためのラプソディー

広告でものを買うときに、何か満たされるものがあるとしたら「一体感」かもしれない。 最近、組織の歯車になるっていうのはどういうことのなのか、と思いながら、そんなことを考えている。

雲隠

「光る君へ」が思ったのと違ったからと言って、嘆いている暇もない。鏡を見れば、自分の髪型がおすべらかしできそう。何ヶ月も美容院に行ってないことに気づいて予約を入れた。 1月は行く。2月は逃げる。3月は去る。 こうしている間にも、新宿西口の工事は進んでいて、東口が見える。ぽっかりと広がる空が良い感じ。 く 今月はこれにて。

未知との遭遇を拒否することについて

2024年の幕開けは災厄とともに始まった。過去形で書き始めてしまったけれど、まだ終わっていないし、災いの真っ只中だ。だからなのか、優雅さなど知らない風を吹かせて1月が過ぎようとしている。 北陸を中心に襲った震災に関して、色々なことが言われている。言われ方というのが特徴的だ。とてもわかりやすい形で政治的な態度によって分かれていて、それはとても気味が悪い。そんなに白黒分かれるものだろうか。 どちらの側でも、多くの人がつとめて平静を装おうとしているようにも見える。それは冷笑的と

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女性専用・脱ピンクのすすめ(一度くらいやってほしい)

2023年が終わろうとしている。年の瀬にわざわざ取り上げることでもないと言われるだろうとは承知のうえで、車両広告について今年ずっと考えていたことを記しておきたい。関東で実施されている女性専用車(両)のことだ。 都営大江戸線では、2023年1月18日から女性専用車の導入が始まった。ちょうどその頃から勤務先への乗り継ぎを大江戸線経由にしたので、制度スタートとともに乗り合わせたことになる。 女性専用車とされた車両に、おそらく想定されていないだろう乗客を見かけるケースはある。都内

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有明までたどり着く前に、文フリについて振り返っておきたいこと

文学フリマ、略して文フリ。noteの記事を読む人は、よく聞く名前かもしれないが、キー局TVのニュースで「今日のニュース」で取り上げられないし、わたしの家族は誰も、存在すら知らないはずだ。それほど小さな文化圏で画期的なことが起きようとしている。 公式サイトを引用すると[作り手が「自らが〈文学〉と信じるもの」を自らの手で作品を販売する、文学作品展示即売会]で、現在は日本国内8箇所の会場で開催。東京は春と秋の2回行われるのが定着していて、先週土曜日、11/11(土)に東京流通セン

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「コラボ脳」をリセットしたい

なんでもすぐに「コラボ」に沸き立つの、やめたくないですか? わたしは時々、自分自身にうんざりする。 流行りものがあるとそこに「あいのり」することが当たり前のようになtっている。「今だけ」「この店でしか買えない」というキャラクターのコラボグッズも、あらゆる場所で乱立されると、新鮮味がなくなってくる。 ・・・いや、そんなことを言いながら、まぁ買っちゃうけどね。ちいかわのキャンディとか。Suicaペンギンのファイルケースとか。すみっコぐらしのデニーズとか。るろうに令和版のビスケ

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場面と画面のなめらかな移動

X(旧Twitter)のリンク先見出しが表示されなくなった。夏あたりから薄々気づいてはいたものの、秋を迎えてキチンと実装された。もう戻ることはないだろう。 この仕様変更について、その目的はX(旧Twitter)での滞留時間を増やすためである、という分析が多い。そりゃもちろん、ハブではなくて自分のメディアの中で物事を完結させたいのは当然だろう。それと同時に“will greatly improve the esthetics.”というイーロン・マスクの言葉は捨て置けない。単に

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「女の仕事」が消えた世界は、まだ来ない ~車内販売ワゴン終了に寄せて~

11月から、東海道新幹線の車内販売のルールが変わる。どの席に座っていても、ワゴン(最近は肩掛けバッグのみも多い)販売がやってくるものだったけれど、もうおしまい。 聞こえてくるのは、アイスはどうなるんだという話ばかり。もちろん、アイス問題も憂慮すべきだが、各メディアがこぞって追いかけるほどのことだろうか? 17、8年前のこと、ワゴン販売を含めたパーサー職を「女性が長く働ける、稼げる、輝ける、活躍できる」として持ち上げていたはず。あとは、訪日外国人が増えるから「英語力を活かせ

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