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これが本当の完結版!/『ど根性ガエルの娘6・7』大月悠祐子

(イラストは勝手に描いてみたヤツです…すみません…)
先日、『ど根性ガエルの娘』6・7電子書籍が同時リリースされました。この単行本版をおすすめするレビューです。

すでに数ヶ月前に本編の完結はマンガParkで読んでいたのですが。後日談&大井昌和さんが描いた特別編が気になっていたところ……この限定マンガが、とてつもなく良い。

ハードな内容のエッセイマンガの登場人物が自分で解説してるというのも凄い。そして、ここには「本当の完結編」が描かれている。だから、一度読んだ方にもおすすめしたい。それどころか、これを読まずして「完結」とは呼べないのでは? とも思う。小説も単行本化や文庫化されたときに「あとがき」と「解説」でワンセットになることがよくありますが、それと同じような構造。もしくは、ボーナストラックが……イイ!!とか。

後日談では、何気ないやりとりを描いたコマに「人は何故、新しい作品をつくり続けるのか」という本質的な事柄が現れている。マンガだけじゃない、文化の継承という本質的なところを突いている。各種イベントが難しい世の中ゆえに響くのかもしれない。

未読の方のために補足を。この作品は『ど根性ガエル』の作者・吉沢やすみを親に持つマンガ家(大月さんご本人)が波瀾万丈すぎる家族と自分の関係を描いたエッセイマンガ。表紙絵がフワフワしているけれど、結構内容は辛辣なので、心して読むべし、です。同時に「エッセイマンガは苦手」勢にもチャレンジしていただきたい。描かれ方がだいぶ違っているのです。

いわゆる「実録・毒親もの」で多いのは、年齢や結婚、転勤、別居、死別などの物理的変化により解決する方向をすすめる構造。けれども実際には、さまざまな理由から、そう簡単にできない人も存在します。そうなると、できない自分の状況を思って、余計にツラくなるもの。しかし、この作品は違う。そうした現実とも向き合う状況を描くことで、単なるハウツーのレクチャーを脱しているのです。

それでも。いや、だからこそ、一見すると暗いこの作品は、実のところ「希望」も持ち合わせている。暗いストーリーだから絶望とは限らない。むしろ、絶望の淵から「まだ人生やり直せるかもしれない」とも思えます。現実と地続きのノンフィクションである、という強みでもありますが。

一話ごとのスタイルに慣れた読み手が増えた時代に、単行本という型の醍醐味を自然に思い出させてくれる試み、おトクすぎると思いました。ボーナスコインで先読みだけがマンガの楽しみじゃないんだ!(まぁ、動画観ちゃいますけどね)


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