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ユーザーはなぜゲームで遊ぶのをやめるのか

市場の売上規模からみると右肩上がりの成長を見せるスマホゲーム市場ですが、そこには無数のゲームがひしめきあっており、ユーザーの可処分時間をいかにして獲得するかが大きな課題となりつつあります。

今回は当社が独自に調査したユーザーアンケートを用いつつ、ユーザーがゲームをやめる理由を深堀りしてみました。


はじめに

こんにちは。Spicemart(スパイスマート)です。
私たちはアジアや北米を中心に、ゲームの開発・運用に役立つ情報を収集・分析し、お客さまであるゲーム企業に情報提供をしている調査会社です。

このnoteでは「ゲームやアニメが好き」「世界のゲーム事情を知りたい」といった方々にも興味を持っていただけるような内容を配信しています。

今回は日本のゲーム市場についてです!

ヒットの兆しを見せたゲーム487本

今年3月、私たちは「スマホゲームにおけるヒット分岐の考察」というテーマで独自の調査を行いました。

対象は、2018年2月〜2021年2月のApp Storeのセールスランキングトップ200に一度でもランクインしたアプリです。

結果、該当アプリは全部で487本ありました。

日々新しいアプリが誕⽣し、市場に多くのゲームが出回っている中で、この487本は、”ヒットの兆し”を⾒せたアプリと言えるでしょう。

今回はそれらの過去3年分のデータを様々な角度から調査し、同時にユーザーアンケートも実施しました。


487本の内訳

調査タイトルをジャンル別に分類した結果、下表の通りとなりました。

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RPGが突出して多く、次点にMMORPG、アクションRPGなどが入ります。

そういえばスマホゲームでは、「◯◯RPG」というジャンルをよく見かけますよね。


サービス終了アプリの傾向

そして上記に、調査時点でサービスが終了していたアプリの本数を加えた表がこちらです。

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487本のうち、サービスが終了していたアプリは114本でした。

セールスランキングトップ200に⼀度でもランクインしたアプリというのは、“ヒットの兆し”を⾒せたアプリ”です。

⼀度は⽇の⽬を⾒たアプリでも、その4分の1が消えていくという現状からは、スマホゲームのサービス継続がいかに困難であるかがわかります。



では、このサービス終了の114本がトップ200に⼊ったのはリリースから何ヶ⽉後のことだったのでしょうか。

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なんと、78%(89本)に及ぶゲームがリリース⽉にトップ200にランクインしていたことがわかりました。

つまり8割近くが幸先のいいスタートダッシュを切っていたわけです。


さらに、リリースからサービス終了までの⽇数はどうだったのかを半年区切りで集計してみました。

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半数以上が「半年から1年半」の間にサービス終了を迎えているのがわかります。おそらく、ここが事業継続における判断の分かれ⽬なのでしょう。

昨今では半周年施策(ハーフアニバーサリー)を⾏うアプリが増えていますが、これはおそらくユーザー還元が⽬的のものと、事業継続の是⾮を⾒極めるものの2種類に⼤きく分けられるのではないかと推測されます。

ではApp Store最⾼順位においてトップ200ではなく、30位以内や10位以内に⼊ったアプリはどうだったのでしょうか。

30位以内にランクイン      :487本のうち100本
そのうちサービス終了となったもの :12本(12%)

トップ30⼊りはひとつのヒットラインでもありますが、それでもなおサービス終了アプリが存在していることが判ります。


ちなみに「トップ10に入ったアプリ」のみに絞ってみると、さすがに調査時点でサービス終了しているものはありませんでした。

つまり初動でのトップ10⼊りは、ヒット分岐のひとつの指標と言えるのかもしれません。


ユーザーアンケートからみえる理由


次に、ユーザーアンケートを見ていきましょう。

2021年3⽉に実施した⾃主調査の結果であり、普段スマートフォンでゲームをしている1,519名が対象です。

「現在遊んでいるスマホゲームは何本くらいですか︖」

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「スマホゲームをやめる理由はなんですか︖」

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継続的に遊んでいるアプリの本数は、国内外問わずさまざまな調査レポートでも⾔及されている通り、やはり1〜3本 が普通のようです。

やめた理由でもっとも多かったのは、「ゲームに飽きたから」で63.9%。
離脱の原因としては、当然といえば当然と言えます。

他の回答も深堀りしてみると、

「他にプレイしたいゲームがあるから」
「ゲーム以外に時間を使うようになったから」

の二つが合計で約32%となりました。

ここから読み取れるのは、ゲーム自体の問題ではなく、別のコンテンツ(サービス)に⽬移りしてしまうケースも多いということです。

特に遊ぶアプリの本数が『1〜3本』というユーザーにとっては、時間の問題で、面白そうなのがあるから、仕方ないこのアプリはサヨナラするか、といった状況に陥っていることも考えられます。

さらなる傾向を掴むため、以下のクロス集計の結果も見ていきましょう。


「現在遊んでいるスマホゲームは何本くらいですか︖」
×
「スマホゲームをやめる理由はなんですか︖」

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『1本』と『2〜3本』のユーザーを⾒⽐べたとき、「思っていた内容と違ったから」と「他にプレイしたいゲームがある から」で10%以上の開きがあることがわかりました。

このことから、常に2本以上遊んでいるユーザーは、目移りによる乗り換えが頻繁に起こっているのがわかります。

⼀⽅、1本を集中的に遊ぶユーザーは、「スマホゲームを辞めたことがない」率も高いことから、ひとつのゲームに熱⼼なユーザーであることがわかりました。

ちなみに、アンケートでは個別回答もお願いしており、やめる理由としては以下のような意見も見られました。

◆ダウンロードまで⻑い、容量重い(⼥性 32歳)
◆ゲーム内の能⼒のインフレ(男性 29歳)
◆そのゲームをプレイすることを義務と感じた時(男性 29歳)
◆スマホの容量が⾜りなくなるから(⼥性 21歳)


なぜ人はそのゲームで遊ぶのをやめるのか

 
余暇の楽しみというよりは、むしろゲームをするために仕事や宿題を頑張る、といったユーザーも少なくないと思います。

せっかくお金や時間をつぎ込んで育成や攻略が進んだのに、単に『飽きたから』という理由だけで、人はなぜそのゲームから立ち去ることを決めるのでしょうか。

例えば、映画やアニメは途中で少しくらいつまらなくなっても、結末を知りたくて見続ける人が大半でしょう。

ギターやサーフィンなどの趣味の分野でも、努力を重ねた分だけ、遠ざかる人は少なくなるように思えます。

でも、ゲームは「飽きたらやめる」わけです。

どんなに課金しまくったとしても、地味な作業を何時間も続けてやり込んでいたとしても、64%の人が飽きたらそのゲームから離れる選択をします。

このことは、ユーザーにとってゲームがどんな存在なのかを表しているように思えます。


毎朝同じ時間に起きて、代わり映えのしない仕事をして、あるいはつまらない先生の授業をきいて、食事をして、テレビやネットを見て、寝る。

暮らしの中に、ワクワク心弾ませて冒険に向かったり、自分がハンドルを握って物事をすすめられる場面は、ほとんどありません。

けれど、変わり映えのしない毎日でも、好きなゲームに没頭している時だけは、ワクワクはらはらドキドキする人生が可能です。

頭は冴え、勇気をだして、自らが冒険に向かうことが出来ます。

没頭させてくれる時間というのは、未来を憂えたり、過去の失敗を悔んだりしないですむ時間です。

言い換えれば、今この瞬間を生きている時間とも言えるでしょう。

今流行りのマインドフルネスは、「今この瞬間」に注力することこそ大切であると説いています。今ここに意識をおくと、ストレスを軽減し、心を安定させることに繋がるそうです。

没入感を与えてくれるゲームは、仕事やめたい・勉強ができない・自信がもてない・などのネガティブな思考の連鎖を、束の間ブチッと断ち切ってくれます。

しかも周りに左右されてしまいがちないつもの自分ではなく、次から次へと自己決定をし、その結果に責任をとるというクリエイティブな生き方もさせてくれます。

失敗を恐れずチャレンジすれば、高揚感、達成感なども感じることができるでしょう。

実生活でこのような生き方をすることは、容易ではありません。

会社では意見も言わず陰に隠れているような存在なのに、ゲームになると強引な攻めをみせたり、いつもは適当でいい加減な奴なのに、ゲームの時だけは妙に慎重、といったことはよく見られることだと思います。

これはゲームに夢中になることによって、その人の本性が顔を出してくるのだと想像されます。

このようなことは、マンガや映画のような一方通行的なエンターテイメントでは生まれません。

つまり、ゲームが”自分を活躍させてくれる場”であり、”真の自分を実感できる場”であるからこそ、慣れや動作の不具合などで没入感を失ってしまったら、お金や労力をどんなにつぎ込んだとしても、ユーザーは立ち去るしかないのでしょう。


以上です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございましたm(_ _)m

※スパイスマートでは、毎月、様々な角度からゲームに関しての調査をしています。
ご興味がある方はレポートのサンプルをお送りいたしますので、ぜひ下記までご連絡ください。
http://corp.spicemart.jp/contact


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