【クライアント対談】ブランドの想いが形に。全国の合唱団とつくりあげた「ボイスケアコンクール」を振り返る
「声とのどを大切に思う人のための本格的のど飴」というコピーを掲げるカンロのブランド「ボイスケアのど飴」。全国の合唱団を応援するSNSプロジェクト「ボイスケアプロジェクト」がSNS上で話題に。スパイスボックスは、戦略策定や企画から実際のコンテンツ制作までお手伝いさせていただきました。
今回はカンロ株式会社 コア事業本部健康のど飴・ボイスケアブランド部、24年1月より、マーケティング本部マーケティング統括部 戦略チームのプロモーションを担当する恵志京子さんと、スパイスボックスのプロデューサー・高柳花にインタビューを実施。コンクールを開催することになった経緯や、制作時のエピソード、また商品を通して伝えたい想いについて伺いました。
ボイスケアのど飴ブランドページ
効果・効能と同時に「想い」も伝えたかった
——はじめに、ボイスケアのど飴はどういった商品になりますか?
恵志:のどや声を想ってケアしている方に向けて、声の専門家である国立音楽大学声楽科教授や、生徒の皆さんと共同開発したのど飴です。発売から11年目になりますが、声を生業とする方や声優さんなどから、合唱部に所属する学生の方まで幅広くご愛用いただいています。歌う上では「必須アイテム」と言ってくださる方もいるので、我々もプロモーションを行っていく中で非常に励みになっています。
高柳:初めて商品の説明を受けたときは、とても個性が強い商材だなと感じました。この良さを伝えるためにはどうしたらいいかすぐに考え、のどを大切にしている生活者をカンロさんが応援している姿を伝えたいなと想いました。効果・効能はもちろんですが、どんな想いで作っているのかを知ってもらうことも重要なんだろうなと。
恵志:最終的なゴールとしては売上拡大も重要にはなりますが、中間指標として、ブランドを好きになってもらったり、親しみを持ってもらったりすることも今回の施策ではより重視しました。
歌う機会が減っているコロナ禍に企画された
——ボイスケアコンクールを実施する経緯は何だったのでしょうか?
恵志:歌うことを愛する“合唱層”へのコミュニケーションを取っていきたいとは考えていたのですが、当時はコロナ禍でもあったので、集まって歌う機会も減っている状況でした。ボイスケアのど飴として励ますようなサポートができないかスパイスボックスさんにご相談しました。
高柳:まず、歌を頑張る方たちを応援する企画として「合唱前夜のおまじない」というプロモーション企画を実施しました。合唱前夜に抱える緊張や不安、のどのケア方法やステージに上がる心構えの面などさまざまな悩みに、ゴスペラーズのみなさんが直接答えるというドキュメンタリー企画になります。
そして、もっとユーザーとコミュニケーションを取れる企画はないかを考えたときに、オンラインでコンクールを実施する案が出ました。
恵志:応募いただいた映像は、国立音楽大学合唱講師で音楽家の木島タロー先生がしっかりと専門的な観点から1次審査を担当してくださった上で、我々やゴスペラーズさんとで2次審査を行いました。
高柳:一緒に送っていただいたエピソードも参考にしながら、合唱に取り組む姿勢や、歌うことが好きな様子などを重視しましたが、本当に皆さんの熱量がすごく……かなり悩み、難航しましたよね。
恵志:皆さん本当に歌がうまく、非常に悩みました。ただ、どの方も真剣に取り組んでくださった様子が映像から伝わり、すごく嬉しかったことを覚えています。
——ゴスペラーズさんの起用に至った経緯は何ですか?
恵志:ブランドとしても初めてのタレント起用でしたので、慎重に検討を重ねました。その中で、ゴスペラーズさんは、プロの方からも尊敬されるアーティストであり、長きに渡り、歌を楽しんでいる姿勢を示してこられている皆さんでしたので、満場一致でお願いすることに決めました。
高柳:今回は、ドキュメンタリーだったので、撮影の前後で言ってほしいセリフなどは伝えていませんでしたが、ゴスペラーズの皆さんが思ったことをありのままに発してくださったので、その熱量が参加者にも伝わり、とても素敵な映像になったなと。
恵志:私は、「きらきらしたものをずっと追いかけている」という言葉が印象に残っています。「歌を30年やってきているけど、歌はまだまだ楽しくなる」という前向きな言葉も、今回の企画にすごくマッチしましたよね。
高柳:学生時代からずっと歌に向き合ってきたゴスペラーズさんだからこそ出た言葉であり、ディレクションでは生まれない素敵な言葉でした。
長期プロジェクトの集大成であるコンクールで号泣
——コンクール当日に関してはいかがでしたか?
恵志:予定調和ではない分ものすごく緊張感はありましたよね。
高柳:スタジオを借りて、さまざまな決め打ちの中行う撮影ではなく、開催されているコンクール中にカメラを回す感覚に近いので、裏はバタバタで大変だった部分もありつつ、コンクールで合唱を聴いて、最後は本当に感動しました。監督と一緒に号泣しちゃいました(笑)。
恵志:びっくりするぐらい監督も泣いていましたよね(笑)。1年以上続けていたプロジェクトの集大成でもあったので、同じ想いでさまざまな方が取り組んできたことを考えると、その点でもグッとくるものがありました。
高柳:コンクールで優勝をした豊田東高校合唱部が廃部寸前だったということも知っていたので、余計に感動が込み上げました。
▼コンクール結果のリリースはこちら
https://www.kanro.co.jp/files/topics/2919_ext_05_0.pdf
——特に記憶に残っていることはありますか?
高柳:合唱部の顧問の先生方に最後、お礼をしに行ったときのことが記憶に残っています。学生さんたちは練習の際もマスクを着用していたので、初めて歌う表情を見たそうです。「生徒たちがこんなに楽しそうに歌うことを初めて知りました。大変な時期に、開催してくださったカンロさんにもよろしくお伝え下さい。」と言っていただき、ものすごく嬉しかったです。カンロさんの想いが伝わった瞬間でもあったなと。
恵志:商品の良さを伝えようと日々奮闘していますが、今回のプロジェクトでは我々の想いを企画に乗せて届けられるかという点を重要視していたので、コンクール終わりにさまざまな場所から「ありがとうございました!」という声が聞こえてきたときに、想いがきちんと届いた気がして嬉しくなりました。また、今回は落選という形になってしまった参加者の皆さんからもとても温かいお言葉をもらえており、このプロジェクトを実施してよかったなと思いました。
広告に10分の動画を起用したわけ
——ドキュメンタリー映像を1本の広告動画にしていく上でこだわった点はありますか?
高柳:実は、ゴスペラーズさんやコンクールに参加いただいた学生の皆さんに商品を試していただいた上で「うん!おいしい!」と言っていただく画は撮影していません。商品の味や効能に関しては一切触れていないんです。
恵志:直接的に「買ってください!」というアプローチをするのではなく、「どういう想いで作っているのか」という部分を重要視しました。
高柳:どの企業でも、本来は絶対に入れたくなる画だと思うので、一貫して想いを伝えたいという筋の通ったカンロさんの姿勢に驚きましたし、期間の長いプロジェクトでありながらブレずに最後までたどり着けた強い要因になっていたなと思います。
——動画が実際に公開された際の反応はいかがでしたか?
高柳:10分近くある動画だったのですが、最後まで見てもらうことに価値があると判断し、YouTubeの広告はフル尺で使用しました。しかし、完全視聴率がかなり高く、“見られる広告”も作れるんだと驚きました。
恵志:私たちとしても、商品訴求が多少弱くなったとしても、映像を通して見た人の心を動かすことができる動画を作ろうと思っていたので、報告レポートからも途中で離脱した方が、かなり少ない結果に手ごたえを感じました。レポートの数値を見ても再生を止めようと思う瞬間がない動画にできたのかなと。
高柳:動画に寄せられたコメントを見ると、ゴスペラーズさんのファンの方も喜んでくださっていたり、初めて商品を知った方にも注目いただけたことがわかったりしたので、伝わってよかったなと。売り場に行って5袋購入したという投稿や、のど飴×合唱という切り口で本施策を実施したカンロさんへの称賛などもあり、きちんと商品や企業にまで関心が向いていることもわかりました。
対話してアイデアをブラッシュアップを続ける重要性
——長期プロジェクトを終えて、スパイスボックスはどのような存在でしたか?
恵志:スパイスボックスさんは、私たちの商品に対して、他人事ではなく自社の商品のようにみなさん考えてくださるところが素敵です。
高柳:私以外のメンバーも含め、みんな商品の1番のファンでいたいなと思ってご一緒しています!
恵志:我々からの依頼に対しても、いつも同じ目線で考えてくださるので、お仕事を一方的に依頼して広告を作ってもらうというよりも、一緒に作っているパートナーのような感じがするので、私自身も、毎回楽しみながら取り組めています。
高柳:単にスパイスボックスができる価値を提供するのではなく、カンロさんがやりたいことや思い描く未来を一緒に作るお手伝いをする意識でいます。いただいた依頼を実現するにはどんな努力が必要なのか、またどんなリスクが考えられるのか、何が足りなくて何をするべきなのかを考えているため、これがいい! こういったロジックがあって間違いないのでこれを実施しましょう! という提案はしません。提案に対してカンロさん側からもフィードバックをいただきながら、ブラッシュアップを続けることでより良いものにしていくパターンが多いので、スパイスボックスだけの力ではなく、両者の意見が合わさってはじめて素敵なプロジェクトが出来上がっているなと。
恵志:今回の施策もコンクールがやりたくてはじめたわけではなく、どうしたら想いが伝わるのか話し合いを重ねる中で、コンクールを実施することになりましたよね。
高柳:コンテンツ提案からではなく、どういうブランドになっていきたいのかについて会話をしていく中で生まれた企画でしたよね。
恵志:私たちが望んだことをそのまま形にするだけではなく、スパイスボックスさんは一緒に考えてくださるスタンスなので、いいものができそうだなあと期待を持って安心しながら取り組めます。
長く愛用し続けてもらうために
——今後、どのような商品にしていきたいですか?
恵志:声を大切にする全ての方にとって日常的に使ってもらえるパートナー的な商品にしていきたいです。ブランドが持つ想いを届けるためにどうしたらいいかは変わらず考えていき、より多くの方に認知をしていただけるよう追求していきたいです。
高柳:カンロさんが持つビジョンや想い共有してもらいながら、コミュニケーションを取らせていただいた先に「何をしていくべきなのか」は見えてくると思うので、これからどんな施策を実施することになるのかは私も楽しみにしています!
恵志:買ってもらうためのアプローチをしなくてはいけない部分もありますが、端的な売り上げだけを追求するのではなく、ブランドを愛してもらって、愛用し続けてもらうことも重要だと考えています。
高柳:味が美味しいのはもう絶対に間違いないので、ブランドの姿勢や作ってくださっている現場の皆さんの気持ちを、商品のパッケージや広告に表して、愛用してくれている生活者、そしてまだ手に取ったことのない方にもしっかりと伝えていきたいですよね。
恵志:私たちとしてもワクワクするような施策ができたらいいなと思いますので、引き続きよろしくお願いします!
高柳:カンロさんはいつも真剣に考えて取り組んでくださるので、私たちも勉強になっています! 引き続きよろしくお願いします!