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【実験】スパイスと油の出会い

こんにちは、旅するスパイスラバーちゃいまいです。

※この記事は完全にマニア向けの記事となりますので、ご了承ください。

カレーJKであるカレー哲学氏の運営する某コミュニティにて
油とスパイスの関係性について調査することが決まり、
シナモンを担当したためその実験結果をここに記そうと思います。

ご参考までに、他の皆さんは、クミン、唐辛子、マスタード、カルダモンターメリッククローブなどをご担当されていました。
検証条件は、なるべく他の方々に合わせてあります。
詳細は哲学氏のnoteをご覧ください。

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計画

コミュニティーで話題になっていたクミンに関する論文(参考1)に
下記の内容がまとめられていたことから、
様々なスパイスで、類似の実験を行うに至った。

・加熱すると香気成分がより抽出される
・ホールよりパウダーの方が香りが出やすい(クミンの場合約90倍)
・油は芳香成分をキャッチする役割を果たしていて、乾煎りだと成分が空気中に逃げてしまう
検証する内容
・スパイスには、脂溶性の成分が含まれているが、乾煎りだけでも芳香成分を抽出することはできるのか
・ホールのスパイスと、パウダーのスパイスでは、香りの出やすさが変化するのか
検証方法
①同量のスパイスを4つの容器に用意する。
今回は、アルミホイルで同じ大きさの容器を作成した。
うち2つはホールのまま、2つはパウダーで用意。
この際、時間の経過と加熱による香りの揮発の影響を受けにくくするため、パウダーは検証直前に、電動ではなく手で挽いて作った。
②ホールスパイスをいれた容器、パウダースパイスをいれた容器1つずつにこめ油を大匙1/2ずつ加える。

(①、②で用意した状態は下記
・ホール  乾煎り
・ホール  油あり
・パウダー 乾煎り
・パウダー 油あり)

③1000Wのオーブントースターで2分加熱*し、香りを官能検査する
④30分後、再度官能検査する

*コミュニティメンバーによると、オーブンは200℃近くになるらしい

実験

①同量のスパイスを4容器に用意する。
左の4つがセイロンシナモンのホールとパウダー
右の4つがカシアシナモンのホールとパウダー
今回は、スリランカ産のセイロンシナモンと、ベトナム産のカシアシナモンを用意した。

画像1

②ホールスパイスをいれたもの、パウダースパイスをいれたもの1つずつにこめ油を大匙1/2ずつ加える。

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③1000Wのオーブントースターで2分加熱*し、香りを官能検査する

画像2

④30分後再度官能検査する

画像4

結果

・非常に焦げて危なかった…これほど部屋中に焚火をした時のような香りをこもらせてしまったのは生まれてこのかた初めてだ…
・最も焦げたのはパウダーのカシアシナモンで、塊となり火花が散っていた
・香りは、カシアシナモンのホール+油>カシアシナモンのパウダー+油>セイロンシナモンのホール+油>セイロンシナモンのパウダー+油>セイロンシナモンのホールの順に強く感じ、油のなかったカシアシナモンのホールとパウダー、セイロンシナモンのパウダーではほとんど感じなかった
・色は、カシアシナモンのパウダー+油>セイロンシナモンのパウダー+油カシアシナモンのホール+油>セイロンシナモンのホール+油の順に出ているように見えた
・30分後は、いづれもほとんど香りがせず、ただ部屋中に焦げ臭いにおいが残った…30分後どころか換気しても翌朝までにおいが残った…つらい…
・味に関しては、ほとんどすべてが味がなく差異が認められなかった
・色に関してはカシアシナモンのほうがより抽出に成功した印象だったが、その差以外、カシアシナモンとセイロンシナモンの差は認められなかった
・なお、パウダーを作る際に発生した香りは、両種はっきりと違いが感じられた

考察

今回、加熱・油を加えることによる香味成分の抽出には失敗したように感じた。
何故なら、シナモンの香りを最も強く感じたのは、両種ともにパウダー状にする際であったためだ。
今回検証した条件では、シナモンの香味成分を抽出するには加熱時間が短すぎたか、もしくは加熱温度が高すぎたかもしれない。
シナモンは、カレーを作る際、ホールの状態で初期の段階で入れられることが多いが、これは単に他のスパイスに比べ焦げにくいからではなく、シナモンに含まれる香味成分の抽出が他のスパイスと比較して抽出しづらいから、ということもあるかもしれないと考えた。
また、シナモンに抽出に適した加熱温度は、40℃であるという説もある(参考2)ため、今回の加熱温度(およそ200℃らしい)では、香味成分が抽出しきれなかったかもしくは揮発してしまった可能性も考えられる。
むしろ、パウダー状にする際、摩擦により発生していたであろう微量な熱が適温を作っていたような印象もうける。

油を入れていた方のものの方が比較的香りを強く感じたのは、油が膜となり、すべての香味成分が揮発することを防いだため、または温度が油なしのものよりも上がりきらなかったためということが考えられる。
今回の実験では、油は、「成分の抽出を助ける」というより、「焦げるのを防ぐ」、という効果を発揮していた。

今回使用したセイロンシナモンとカシアシナモンでは、保有する芳香成分の種類や割合に違いがある。
しかし、シナモンの主な芳香成分としては、シンナムアルデヒドやサフロール、オイゲノールなどがあり、(参考3)ほとんどが水に溶けずエタノール(アルコールの一種)に溶けやすいという情報があり、両種共通しているものもある(参考4)。
これらのことから、シナモンの種類によって香りの効果的な抽出方法が多少異なるかもしれないが、いづれもアルコールによる抽出に向いていると結論づけられる。
次回もし実験をするならば、シナモンが焦げない温度下で、アルコールによる芳香成分の抽出と油による芳香成分の抽出の比較を行ってみたい。

あとがき

シナモンの芳香成分を抽出することは失敗に終わったが、実験を行うにあたって調査し得られた情報も多かった。
しかしながら、シナモンを加熱しすぎると、信じられないくらい焚火のような焦げ臭いにおいを発生させてしまうため、家庭などで検証をするには同居人の理解と注意が必須であるということを強く伝えたい。なお、私個人の現在の住環境では、検証を続けることは困難である。
とにかく、めっっっちゃ怒られるしちょーーー危険なので、同条件での実験はおすすめしない。

参考

1.佐藤 幸子,田中 楓子,長岡 麻紀/2020-03-09/「クミン(Cuminun cyminum L.)の香気成分に及ぼす 乾煎りおよび油炒めの影響」
2.「スパイスの抽出温度とスパイスの成分の体感温度」,https://coomoodoo.org/eat/spices_en_temperature/
3.「シナモン」https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%8A%E3%83%A2%E3%83%B3
4.「シンナムアルデヒド」https://labchem-wako.fujifilm.com/jp/product/detail/W01W0103-0345.html



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