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『うるわしの宵の月』刊行記念 やまもり三香先生インタビュー 後編

デザート』2020/9月号より連載されている、やまもり三香先生の『うるわしの宵の月』が、いよいよ単行本となりました! 待望の第1巻は、本日12/11(金)に発売されています。

うるわしの宵の月 1巻帯付き

* 未読の方のためにご紹介 *
うるわしの宵の月』あらすじ
高校1年生の女子・滝口宵(たきぐちよい)は、その見た目とふるまいから、周囲に「王子」と呼ばれている。本人が望んだわけではないその呼び名にとまどう日々の中、同じように校内で「王子」とあだ名される、1つ年上の先輩・市村を知る。
初対面の宵に対し「めちゃめちゃ美しい」と言い放つも、男と勘違いする市村。そんな彼に腹を立てる宵だったが、その後コンビニで酔っぱらいに絡まれたところを市村に助けられ──。
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この発売を記念してスピカワークスでは、やまもり三香先生スペシャルインタビューを受けていただきました。

一足早く公開した前編では、新しい場で始めた連載に対する思いから、各キャラクターができるまでの経緯、タイトルの由来などについてうかがいました。

今回の後編では、やまもり先生が「かっこいい」と思う人や、キャラクターの服装とその資料、そして思いがけない衝撃の事実と、気になる今後の展開についてもお話しいただきました。最後まで、どうぞごゆっくりお楽しみください。

今回、やまもり先生にご快諾いただき、弊社でインターン中のKさん、Sさん、Yさんの三人が、広報Tとともにインタビュアーを務めております。ご承知おきくださいませ。

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◆かっこいい男性を描く時の意識と、制作環境


インタビュアー・広報T(以下、T):
制服など、高校生を描く上で何か参考にしていたものはありますか?

や:最近の流行りは取り入れるようにしてます。例えば、K- POP系や雑誌、道行く人を参考にして。

インタビュアー・Kさん(以下、K):今回の作品は、TikTokで見るような韓国っぽい制服だと感じていましたが、やはりK -POPも参考にされていたんですね! ちなみに作中では宵ちゃんがヘッドホンをしていますが、宵ちゃんのイメージにぴったりだと思いました。そういったキャラのイメージに合う服装、小物などはどうやって考えられているのでしょうか。

や:宵ちゃんは「王子」っぽいキャラクターなので、ビジュアルをイメージした時に「ヘッドホンやネクタイを身に着けていたらかっこいいな」と思ったところから着想を得ています。ただ、ヘッドホンは難しいうえ、よく指示を書き忘れることが多いので、毎回アシスタントさんに「ごめんなさい!」って思っています(笑)。

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T:かっこいい男性を描く上で、これまで共通して意識されていることはありますか?また、やまもり先生が「かっこいい」と思う男性に共通することはありますか?

や:共通して意識していることは「人間ぽさ」を出すことですね。あと女の子との体格差を分かりやすくするために、身長を高く見せるよう意識しています。あとは横顔を美しく描くことも意識しています。私がかっこいいと思う人で最近気づいたのは、「目が死んでいる男の人が好き」っていうことですね!(笑)。 「目がヤバい」にも何種類かあると思いますが、私は不幸な過去がありそうな、目の隈がすごい男の人が好きなんですよ。ただ、目がヤバい人は漫画でなかなか描けないので、そこは弁えてます(笑)。

T:……まさか「目が死んでいる」人がお好きとは思いませんでした!(笑)。さて、連載前のご苦労について先ほどお話を伺いましたが、いざ連載が始まってから、描いていて楽しい部分や、逆に大変な部分はあったりしますか?

や:昔から変わらないんですけれど、一番楽しい部分は下絵です。ペン入れまではアナログでやっています。下絵はA4のルーズリーフを半分に折って描いて、それをA4に拡大したものにペン入れをして。

T:カラーはアナログですか?

や: 完全にアナログです。もう私みたいなアナログで描く人は、周りになちやん(※森下suuさんの作画担当)くらいしかいなくなっちゃいました(笑)。

T:アナログで描き続けていることにはなにか理由が?

や:デジタルって「裏技」がたくさんあるイメージで。それを知らないと、すごく安っぽく仕上がってしまう気がしていて。でも、そういったことを覚えるのが苦手なので、今のところアナログでやっています。

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T:SNSにアップしてくださる落書きもアナログですか? 以前のインスタライブでは、デジタルで描いてらっしゃったような。

や:落書きはデジタルに慣れようと思って、練習がてらデジタルで描いたりもしています。

T:ちなみに、アナログで描かれているということは、原稿をスキャンして担当さんに渡すといった形ですよね。だとすると、先生のお手元にこれまでの原稿が……?

や:いや、でも私、自分の原稿に興味がないので、全部捨ててるんですよ。

一同:えー! もったいない!!

や:だから、今回もすでに結構捨てていて。でも「カラーは取っておいて」と言われたので、カラーは保存してありますが、他は捨てています。どうしても場所を取るので。

T:いつかどこかで原画展があったら、拝見できると思ったんですけれど……!

や:その時は、いま残してある絵を中心に飾る感じで。モノクロ原稿も何枚かは保管してあるので、もし展示の機会が来ても大丈夫ですよ!

T:いやいや、それだけではなく、全部拝見したいです……!

◆制作時の参考資料と取材について


インタビュアー・Y
さん(以下、Y):連載の1回目が載った『デザート』2020年9月号の表紙もとても印象的だったのですが、意図などはありますか?

や:デザイナーさんにいくつか案をもらっていたんですけれど、当時は私がまだキャラをつかめていなくて。だから、ポージングはまださせられず、思いっきりアップにしました。

鈴木(以下、鈴):線がとても綺麗なので、絵が耐えるんですよね。ふつう、漫画の絵であんなに大きいドアップは耐えられないんですよ。

や:めちゃくちゃ大きい紙に描きました!

鈴:あの表紙は、かなりチャレンジな感じがして良かったですね。

デザート9月号表紙

T:シーンを描くうえでのこだわりはありますか?

や:意識はしてないんですけど、なぜかいつも夜を描くことが多いです。夜って邪魔するものがなくなるし、プライベートな空間になるから、描きやすいのかもしれません。

T:キャラクターの服装についても聞かせてください。例えば取材中に、カッコいい服を見つけたら「キャラに着せたい!」と思われるのか、それともキャラクターに似合う服を探して描くのか、どちらが多いのでしょうか。

や:基本的には、キャラクターに似合う服をいつも探して描いています。だから、キャラクターごとに参考にしている雑誌が違うんですよね。おかげで、部屋に雑誌がめちゃめちゃ増えていっちゃう(笑)

T:なんと……! でもそれだけ、キャラクターを描き分けているということですよね。インスタよりも紙の雑誌の方が見やすいですか?

や:スマホだと他のサイトをうっかり見ちゃったりするので。雑誌なら、気になるページをビリっと破るだけで済むじゃないですか。

K:動画だと、いろんな角度から撮っているものが多いので参考にしやすいかなと思ったのですが。

や:動画は意外と、ディテールが分からないんですよ。あと私の場合、その服の可愛さをきちんと理解した上で描かないと上手く描けないんですけれど、それは雑誌の方がうまく伝わってくるので雑誌の方が好きです。例えば雑誌は服だけではなく、背景、メイク、モデルさんのポージングなど、すべて含めて全体の雰囲気が表現されているし、実際に自分が描くときも色のバランスなども参考になるので、雑誌の方がよく見ます。

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T:雑誌はリアルの書店さんで購入を?

や:そうですね。本屋さんで雑誌を手に取りパラパラ見てみて、「いいな!」と思ったものを買っています。あとは、洋服屋さんに入ってみたりもしますし、男の子の服を見る時は、カフェなどの店にいる男の子をチラ見しています(笑)。

T:学校内の描写では、どんな資料を使われていますか?

や:取材に行きました。大阪にある、履正社高校さんに。保健室などちょっとわかりにくい所は作画資料集も混ぜて使ってます。

K:カレー屋さんも取材されたんですよね? なぜカレー屋にされたんですか?

や:そういえばしーげるさん、なんでカレー屋になったんでしたっけ……?

鈴:なんで……? でも、最初から一貫してカレー屋でしたよ。それもかなり初期から。

や:最初「二人の接点がない」という話になって。ヒーローとヒロインの学年が違うので、「どこかにたむろする場所があった方がいい」となり、実家を自営業にしますか、といった流れから考えたような……。カレー屋にしたのは「男の子に人気だから」といった理由だった気がします。

鈴:あ、そうかもしれないですね。そこから、おしゃれな感じの、レコードが飾ってあるようなカレー屋さんを探して、それで実際に下北沢のお店へ取材に行って。何店か候補がある中で、そのお店が「作品と一番合いそう」となって行ったら、良いお店だった。でも実はその取材は、キャラが今のキャラに決まる前の話でしたから、取材お願いしておいて使わなかったらどうしようかと若干ハラハラしながら行きましたね(笑)。

や:そうだ、そうでしたね!

K:キャラより先に決まったカレー屋さん……!(笑)。

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Y:街もどこかを取材されて?

や:していません。ご近所を舞台に、ということも考えたことがなくて。場所をどこかに限定してしまうと、嘘を描けなくなっちゃうので。

T:どこでもありそうな場所で、と。

や:そうですね、一応、今作は都会の設定ではあります。読者さんが読んだ時に、「こんなところが身近にあったらいいな」という感じで。

◆描きたい恋愛と今後の展開

K:今まで、様々な恋愛の形を書いていらっしゃったやまもり先生が、今回はどんな恋愛を描きたいと思ってらっしゃるのか、気になります。

や:今までだと付き合うまでが長かったのですが、今回は比較的早めにくっつくパターン。そこからどうなって行くのかを初めて描くので、その点は新たなチャレンジという感じです。

K:お話について、かなり先まで考えていらっしゃるんですか?

や:まったく考えていません……なんて言ったらアレなんですけど(笑)。その時、その時で作って行くタイプなので、「まあ、こうなるだろうな~」という感じでぼんやりと。

K:キャラクターもこれから増えていくのでしょうか? 個人的には、これまでサブキャラの物語でも感動するお話が多かったので、これからのお話も楽しみにしていまして……!

や:ありがとうございます、ちょっとは増えると思います。私、サブキャラを描くのがけっこう好きなので嬉しいです。

T:琥珀の家や宵ちゃんの実家など、まだ書かれていない伏線があります。そのような設定は連載前に考えていらっしゃるんですか?

や:それも特に考えていません。ぼんやり予定はあるものの、具体的な流れは決めていなくて。毎回連載しながらなんとなく作って行くので、いつも後付けの流れが多いですね。

T:先生もある意味、読者の方と一緒のお立場なんですね。読んでみて「今後の展開が初めてわかるぞ」というような。

や:そうですね。自分がワクワクする話より「読者さんがワクワクする話はなんだろな」と考えるので、「これやったらいいかな」と、連載をしながら付け足して行く感じですね。

T:他にも新たに挑んだことはありますか?

や:初めて、ヒーローの髪色を白髪にしました。

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T:琥珀の髪の色は、最初は違う色だったのでしょうか。

や:いえ、最初から決まっていましたね。今までベタのヒーローが多かったので、ベタ担当のアシスタントさんが前回大変そうで申し訳なくて…(笑)。あと、プラチナブロンドのキャラをいつか描きたいと思ってたので、「よし、新たな挑戦としてヒーローを白髪にしよう!」と。ただ黒髪の方が、やっぱり画面が締まるし色気が出るんですよ。顔に影がつきやすいので。あと、ストーリーでいえば、両者が高校生なのも初めての挑戦ですね。

T:今後の注目ポイントやこだわりがありましたら。

や:宵と琥珀、この二人がどういう風にくっついて行くか、でしょうか。二人とも初恋同士で、これから始まる恋が初めての恋だと思うので。お互いのちぐはぐ具合を見て欲しいですね。しーげるさんは、どこかありますか?

鈴:見てほしいこだわりは「キャラクターらしさ」ですね。やまもりさんは、そのキャラクターをしっかり描こうという意欲が高いと感じています。「人へのこだわり」がすごく強いので。先ほどおっしゃっていた「お話の展開が決まっていない」というのも、キャラクターたちが見えてきてから話を作って行くからだと思います。話の展開にキャラクターを合わせてという形ではなくて。だから、これからどんどん彼女たちならではのドラマが出来上がっていくはずなので楽しみにしてます。

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T:最後に、読者のみなさんへメッセージをお願いします!

や:今回の作品では、自分の中でも新しい挑戦がいくつもあるので、この二人らしさを楽しんでいけるよう、私も努力します。長い目で見てくだされば嬉しいです。応援、よろしくお願いします!

T:ありがとうございました!

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前後編にわたってお送りしました、やまもり三香先生のスペシャルインタビュー! お楽しみいただけたでしょうか。「かっこいい男性」を描く上でのポイントや、参考にされている資料へのこだわりなど、作品をより深く知ることができるお話がもりだくさん!だったかと思われます。

なお、2020/12/23(水)発売の『デザート2月号では、『うるわしの宵の月』の1巻発売を記念して、応募者の方全員に特製クリアファイルをプレゼントする連動企画が開催されます! イラストはもちろん描き下ろし、先生のスペシャルメッセージペーパーも付きますよ!! どうぞお見逃しなく。

宵と市村先輩のこれからを見守りつつ、やまもり先生へのさらなる応援を、引き続きよろしくお願いいたします!


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