『うるわしの宵の月』刊行記念 やまもり三香先生インタビュー 前編
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『うるわしの宵の月』刊行記念 やまもり三香先生インタビュー 前編

『デザート』9月号より連載されている、やまもり三香先生の『うるわしの宵の月』が、いよいよ単行本となりました! 待望の第1巻は、本日12/11(金)に発売されています。

うるわしの宵の月 1巻帯付き

* 未読の方のためにご紹介 *
うるわしの宵の月』あらすじ
高校1年生の女子・滝口宵(たきぐちよい)は、その見た目とふるまいから、周囲に「王子」と呼ばれている。本人が望んだわけではないその呼び名にとまどう日々の中、同じように校内で「王子」とあだ名される、1つ年上の先輩・市村を知る。
初対面の宵に対し「めちゃめちゃ美しい」と言い放つも、男と勘違いする市村。そんな彼に腹を立てる宵だったが、その後コンビニで酔っぱらいに絡まれたところを市村に助けられ──。
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この発売を記念してスピカワークスでは、やまもり三香先生スペシャルインタビューを受けていただきました! 『デザート』という新しい場所に対する思いやタイトルの由来、各キャラクターや設定へのこだわりなど、ここだけのお話をたっぷり伺っています!!

なお今回、やまもり先生にご快諾いただき、弊社でインターン中のKさん、Sさん、Yさんの三人が、広報Tとともにインタビュアーを務めております。もちろん、弊社代表であり編集担当の鈴木@しーげる も登場! オンラインで行われた2時間弱のインタビューを、前後編の2回にわけてお送りいたします。どうぞ、ごゆっくりお楽しみください。

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新連載カラー

◆新たな場所と執筆ペース


インタビュアー・広報T(以下、T):今回の作品は『デザート』という新しい場所での発表となりました。単行本の1巻がいよいよ発売されて、いまの心境をお聞かせいただけますか。

やまもり三香先生(以下、や):今もまだ、すごく緊張しています。襟元を正されるような感じがしていて。ですので、心の中では「すみません!」といつも思っています(笑)。

T:連載前の『デザート』にはどんなイメージをお持ちでしたか?

や:そうですね。個人的な意見ですが、なんとなく『デザート』のキャラクターは「考えてから行動する」というイメージです。ページ数の関係もあるでしょうが、『マーガレット』のキャラは比較的「考える前に行動」という感じなので。

T:実際に描かれるようになっても、その印象は続いてらっしゃいますか?

や:はい。『マーガレット』から来た当初は、特に「セリフとコマ割りの違い」を感じて、すごく驚きました。たとえば吹き出しの中の文字数や、文字の大きさも違うんですよね。『デザート』の方が、行数も若干多い。だから同じシーンを描くとしても、『マーガレット』であれば、たぶんすごく早く次の展開を持ってこなきゃいけないのですけれど、『デザート』では会話が続く…というか。

T:面白いですね! 言われてみればたしかに、違いがあるかもしれません。ちなみに鈴木さんは、編集される上でそういった点を意識されることはありますか?

鈴木(以下、鈴):対象年齢が『デザート』の方が上だからでしょうか。あと、『デザート』と『マーガレット』では月刊と隔週刊という刊行ペースの違いもあるし、毎回のページ数も違いますから。

T:なるほど……! やまもり先生、そういった点で執筆のペースも変わりましたか?

や:すごく変わりましたね。今回、初めて月刊誌で描いていますけれど、あまりにガラッと変わったので、全然ペースがつかめないままやっています。ネームも作画も、慣れるのにはまだちょっと時間がかかっていて。隔週刊の『マーガレット』では基本が25ページなので、ネームの時は早い展開で見せることを考えます。あまりゆっくりしていると、ぼんやりした話になってしまうので。ですが、月刊の『デザート』では基本が40ページくらい。以前の感覚で考えていると、引きになるはずのところからまだまだページがあるので、「ここからどうしよう?!」みたいな感じはありますね。「もうちょっとエピソード入るのか!」という感じで、つい詰め込んじゃいます(笑)。だから今はまだ、「どこまで行けばいいんだろう?」と試行錯誤で。以前なら「だいたいこのページ数あたりで、起承転結の転までもってくれば結はここで入るだろう」となったのが、今回はまだうまく計算できていないといいますか。

T:たとえばランナーだとすると、走り慣れたマラソンのコースが変わっちゃって「あれ?ペースがつかめない!」といった感じでしょうか。

や:そうですね。短距離走を2回走るのと、長距離走を1回走るのとの違いに似ています。

T:それほど変わるのですね……! ちなみに今回は新連載の開始まで、時間が空いてからのスタートとなりました。先ほどのような大きな変化がある中で迎えた「新連載」ということについては、どんなお気持ちでしたか?

や:なんだか新人になった気持ちで描いています。新しい新人のつもりで入ってきた感じです(笑)。

T:雑誌が変わるということは、それだけ大きいのですね。

や:大きいと思います。

デザート9月号表紙

◆タイトル決定は意外な視点から


T:『うるわしの宵の月』というタイトルに込めた意味や由来についてお聞かせください。

や:そんなに深い意味はないのですが、前の二作品が似たようなタイトルだったので、せっかくですから今回も……と、ちょっと語呂が良い感じのモノを持ってきました。

T:ちなみに、タイトルは設定やキャラクターが出来上がってからつけられたのでしょうか?

や:キャラクターが決まってからタイトル、です。何となく、「主人公の女の子を見つめている男の子視点のタイトル」というイメージで。

T:なんと……! そんな視点からのタイトルだったんですか。想像外で、思わずグッときました。

や:本当ですか? よかった! ちょっと意味合いを付けておこうと思って。

T:「うるわし」という言葉もやや古風というか、タイトルに含まれる単語としてはあまり見ない印象が。それは自然と湧き上がってきたのでしょうか。それとも、この作品に合うものを探して、選んでということだったのですか?

や:本当に、もうその場でパッと思いついただけなんです。それまではまったくタイトルが出てこなくて。「このキャラクター二人でいこう」と決まった時に、ふと思いつきました。

T:ちなみに「宵と琥珀」の組み合わせというのは、すんなりと?

や:いや、これが全然決まらなくて。

鈴:そうですね(笑)。何度となく打ち合わせをして。

や:「どうしよう、どうしよう」という感じでしたね。

T:ということは、宵ちゃんの性格や雰囲気といったものは、最初の案とはだいぶ違うものに?

や:はい。宵ちゃんにいたっては、たぶん「第三段階」くらいですね。今の宵ちゃんがもう「完全体」みたいな。琥珀が変身の第2.5段階くらいですかね。

T:なんと! 二人ともだいぶ進化を遂げているのですね。

や:すごくいろいろ考えました。あっちいって、こっちいって、という感じで。

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T:キャラクターの名づけについては、ずっと変わらなかったのですか?

や:そうですね、名前は変わりませんでした。最初にキャラデザをして、もうその時点で名前を付けてしまって。そこから「やっぱり見た目を変えよう」とか「中身を変えよう」といろいろ変えるんですけれど、それでも名前は変わらないまま。ただ、由来は特になくて、本当にもう、ただ単にパッと思いついたものですね(笑)。

インタビュアー・Kさん(以下、K):名前やキャラクターの設定などは、フィーリングで考えられることが多いのですか?

や:設定は、担当さんやアシスタントさんや知り合いなどに「この人がこういうギャップあったらどう?」といった感じで、話しながら案を出していくのですが、キャラクターの名前や顔については、もうパッ!と決めます。

T:宵も琥珀も段階を踏んで変わっていったということですが、最終的な形の決め手になったものは何ですか?

や:そうですね、どういうものでしたっけ……?

鈴:宵のキャラクターが決まるまで、いろいろな組み合わせを試しましたよね。当初、話の設定も違ったので、キャラクター的にも違っていて、宵が今の形に落ち着いてくる中で、琥珀が動いていく感じになったような。琥珀もそれまでいろいろ変化していって。宵が「王子」と呼ばれていて、という部分にフォーカスしたのは、最後の方だったと思います。

や:そうでしたね! 最初は全然、こんな感じじゃなくて。たとえば琥珀は「ずっとフードを被ってる」といった感じの寡黙キャラで。

K:そうなのですか!? いわゆる「一匹狼」みたいなイメージの……?

や:そうです、そうです。最初は、男の子が数人出てくる話になる予定だったんですよ。その男子グループの中の、一番目立たない感じの寡黙な奴が、琥珀。一方の宵ちゃんも、今とはまったく性格が違っていて、もっと勝気なソフトウルフの少女で、身長も小さめで男っぽい設定でした。そんなキャラたちになるはずだったんですけれど、「この二人で恋愛が始まるか?」と言われたら、「そうでもないな」と(笑)。それで一瞬、宵ちゃんのキャラクターをロングヘアーの美少女にしてみました。でもそこでも上手くまとまらず、「どうしましょう?!」という感じになって。

K:そうやってキャラクターを作り上げていくんですね……! それだけ練られたからか、宵と琥珀の組み合わせは、性格的な面だけでなく、ビジュアルも印象的です。パッと作品が思い浮かぶというか。

や:そう思っていただけると嬉しいです!

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◆キャラクターの描き分けと力点


インタビュアー・Sさん(以下、S):前作の『椿町ロンリープラネット』(以下『椿町』)では、みどりちゃんが「ショートカットでサバサバ」系なキャラクターだったと思うのですが、同じボーイッシュでも描き分けていけるように、何か意識されたことはありますか?

や:前作を描いている時に、私があの二人(みどりちゃんと永人)を好きだったんです。そして今回、しーげるさんと新作のネームを作っていく中で話が止まってしまった時に、しーげるさんが「本当に描きたい話を思い出せ」みたいなことをおっしゃったんですね。それであらためて考えてみたら、『椿町』で描いたみどりちゃんと永人のような話が描きたい、と思い至って。ただ、出版社も雑誌も違いますし、そもそも同じようなお話は描けません。「せめてちょっと似た要素を」と考えてみても、今度は「前と同じじゃない?」と言われそうな形になってしまいそうで。それなら「同じボーイッシュでも、ちょっと王子様っぽい感じ」にしたら、それはそれで面白くなるのでは?……といった感じで、手探りで作っていきました。

S:「読者の女の子に共感してもらえるように」といった点を意識されたのかと思っていましたけど、「王子様」というところに力点があったんですね。

や:そうなんです。みどりちゃんと宵をわかりやすく区別できるようにしないと、読者さんも混乱されるだろうなと思ったので。

T:宵ちゃんの王子様っぽい部分は、どなたかモデルが?

や:知り合いの編集さんたちを何人かミックスしています。私は知り合いの人からヒントを得たりすることが多くて、今回は編集さんを参考にさせてもらって。

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T:琥珀を描く時に、意識されていることはありますか?

や:気をつけているのは、「気持ち悪い」と読者さんに思われないようにすることですね。今はギリギリの感じがしているので、毎回「気持ち悪くないですか」って周りに聞いてます(笑)。

K:琥珀の、宵ちゃんへの執着心は読んでいてすごく伝わってきます(笑)。

T:たしかに、琥珀が宵ちゃんのことを気に入っていることは感じますが、たとえば「手が早い」とか「女の子に適当」いう感じはしないので、気持ち悪いという言葉は浮かびませんでした。

や:本当ですか? それを聞いてほっとしました。「ちょっとキモくないこの人?」みたいなところギリギリを描いているので、毎回心配で(笑)。

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前編はここまで! 雑誌ごとに異なる執筆ペースや、宵と琥珀の組み合わせが決まるまでの流れなど、この機会に初めて知ることができたお話ばかり。特に「パッと思いついただけ」とおっしゃるタイトルも、その視点が誰によるものなのかを知らされた時には、インタビュアー全員がハッとしました。

後編では現在の制作環境や、参考にしている資料作中に登場するお店や学校の取材についてなど、さらに深くうかがっています! ぜひ続けてお読みください。


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「物語を元気にする。物語を作る人も元気にする」をモットーに。 女性漫画家(クリエイター)さんとともに働くマネジメント会社です。 現在の契約作家さんは、森下suu先生、やまもり三香先生。サイトは→https://www.spica-works.com