『僕と君の大切な話』完結記念 ろびこ先生インタビュー 前編
先日、ついに連載完結を迎えた『僕と君の大切な話』。完結巻である7巻が本日、3/13(金)に発売となりました!
今回は通常版と、ミニ画集付特装版が同時刊行となっております。
* 未読の方のために、あらすじを改めてご紹介 *
『僕と君の大切な話』あらすじ
相沢のぞみ、高校2年生。同じ学年で違うクラスの東くんに片思い中。意を決したある日、学校の最寄り駅でベンチに座る東くんに告白するが──!?
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この完結を記念してスピカワークスでは、連載を終えられたばかりのろびこ先生に、スペシャルインタビューを受けていただきました!連載を始めたきっかけや、創作上の工夫、キャラクターたちへの想い、そして次回作へのお気持ちなど、ここだけのお話をたっぷり伺っています!!
前後編の全2回でお送りするこのインタビューでは、弊社代表であり、編集担当の鈴木@しーげる も交えてお送りいたします!ごゆっくりお楽しみください。
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◆4年半にわたった連載を終えて
──まずは作品の完結、おつかれさまでした! 全7巻の連載を終えられて、今のお気持ちはいかがですか?
ろびこ先生(以下 ろ):意外と長かったなあと。なんだかすごく長かった。長いことやっていた気がします。何年ぐらいやってました?
鈴木@しーげる(以下 鈴):準備から含めると5年半くらいです。
ろ:そんなに!? 連載が始まる時は「1~2年ぐらいかな」というつもりでした。途中で一度、「まだやってるな」と思ったんですけれど、終わってみて結構長かったなって。だから思い残すことはあまりないですね。前作の『となりの怪物くん』は描いていて本当にしんどかった記憶がありますけど。
──「しんどさ」はどんなところに?
ろ:初めての連載だったので、最初に作った設定に後々苦しめられました。お話とのつじつま合わせとか、キャラクターの統一感とか。そういったことが、結構苦しかったんです。「今回はそういう思いをしたくないぞ!」という思いで描いて、その点はわりとまっとうできたかなと。気持ちは、やりきった感で満載です。
──走り抜けたという感じでしょうか。
ろ:前作は走り抜けた感じでしたけど、今回は「好きなように描いて好きなように終われるな」という穏やかな気持ちです。「試してみたかったことにいろいろ挑戦してみよう」と思っていて、例えばカラーもデジタルで描いたり、アナログで描いたり、アナログとデジタルで描いてみたり。そういったこともできてよかったです。
鈴:カラーの塗り方の違いは、ぜひ7巻の特装版に付くミニ画集で見てほしいです。
▲7巻特装版ふろくの、ミニ画集 表紙
──担当編集の立場で、他にそういった試みについて気づいた場面はありましたか。
鈴:全部、です。この連載は、わりと全部そんな感じがしています。今回は、最初に「思春期あるある」ものとして、Web上で掲載するつもりだった企画をいただいたところから始まっています。「少女漫画じゃないものから、少女漫画にさせてもらった」ので、代わりに「試したいことは全部試してほしいな」と思いながら、担当していました。
──お2人のお話が重なっていますね……! 息の合っていることが伝わってきます。描き方の話が出たので製作環境についても伺いたいのですが、現在はアナログとデジタル、どちらで描かれていますか?
ろ:今はネームから iPad で描いています。それをパソコンでクリスタ(=クリップスタジオ)へ取り込んで、後はほとんどクリスタを使っています。
──6巻くらいから、線の描き方が少し変わったように感じました。なにか変化があったのでしょうか。
ろ:はい。チャレンジというかお試しというか。なにを変えたかいうと「ペン先」、つまり「クリスタのペンの設定」を変えてみました。 6巻ぐらいで、思いっきり。わたし的には「ちょっと味が出て楽しいな」と思っていたんですけれど、「(線が)荒れた」という意見もあって。その後、単行本になってから自分でも見返してみた時に「確かにそう見えるかな」と感じて、また別の設定に変えてみました。
──吹き出しの形や線の太さのムラといったところにも、雰囲気が表れていました。そういった試みというのは、普段から?
ろ:そうですね。結構いろいろ試してきました。実は制服の柄なども、同じ連載中で2回ぐらい変わっています。でも意外と気付かれなかったりもして。「もっとこっちの方がいいんじゃないか」と気づいたら、本番の原稿でいきなり試します(笑)。
──なんと勇気のある……! 作品全体が新しい試みの場所だったんですね。
鈴:そもそも1巻が丸ごと駅のベンチでずっと会話劇をやっているという斬新なスタートでしたからね(笑)。
ろ:その会話劇も最後の方はなくなってましたけどね(笑)。
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◆作品の誕生と、「会話劇」という形にいたるまで
──ここで時間を巻き戻しまして、連載が始まるまでのお話と、開始後の変化についてお聞かせください。
ろ:初めは、前作『となりの怪物くん』が終わって、次になにをしようかなという時に、「Web(自分のサイト)でやろう」と思いついた企画でした。その時は「Webの漫画は1~2ページ」というイメージだったのですが、鈴木さんに伝えて打ち合わせをしている内に連載でやることになっていって。
──今作も登場人物が多くなりましたが、キャラクターを増やしていくのも事前の打ち合わせで?
ろ:いえ、「こんな風に終わりを迎えることになるんだろう……」くらいのイメージは持っていましたけれど、最初の段階では「このキャラをここで投入」といったことは決まっていなくて。連載の終わり方も「東くんが小説を書き終えて、相沢さんとくっついたところで終わることになるんだろうな」ということを、なんとなく思っていたくらいでした。
──でも、その段階で「東くんが小説を執筆」までは作品の構想に含まれていたんですね!
ろ:そうですね。1巻ができた時点でそのつもりでした。各巻のカバー下にキャラクターの設定を載せていて、1巻は相沢さんと東くんなんですけど、当初はそこに「東くんの趣味:執筆活動」と描くつもりだったんです。ネームの段階では描いていたのに、いろいろ考えて、本番ではそれを取っちゃったんです。「あれ、描いとけばよかったな」って後で思いました。
──そんな後悔があったとは!
ろ:「あまりにもネタバレになるかな」「描いたら最終回まで予想されちゃうんじゃないかな」と思ってやめたんですけれど、そこだけ悔やんでいます。「メガネでこの髪型で、しかも読書が好き」で「趣味:執筆活動」となると、オチまでバレそうと思って。
鈴:タイトルがタイトルですからね(笑)。
ろ:元々カバー下はネタバレというか、裏設定の場にしようと思っていたんです。こっそりとネタバレを載せておいて、あとで本編にその部分が出てきた時に、カバー下を見ていた人だけが「知ってる!」と思うようにしておきたくて。見なくても困らないけど見てたらちょっと面白いかな、みたいな。でも出し惜しみしたらダメだということが、今回のことでよく勉強になりました(笑)。
──さて、作品のお話に戻りますと、連載当初、会話劇というスタイルがとても新鮮でした。舞台や映画では二人芝居といった形式がありますが、漫画ではあまり見かけない形です。作品を描かれるにあたって、参考にされた作品やモデルはありますか?
ろ:特にありません。連載を始めてから「落語や舞台っぽいな」と思ったことはありましたけれど、「そういう形にしたい」と思っていたわけではなくて。今思うと、「Webで、短い会話だけで終わるシチュエーションコメディみたいなものを」というところから、どちらかというと「ラジオっぽいものをやりたい」と思ったことが原点かもしれません。
──なるほど! その感じはわかります。
ろ:でも、普段からラジオを聴いてるわけではなかったんです。原稿中に、たまたま昔のラジオを聴くことにハマっていた時期があって、でもラジオの内容というよりは、間に流れるCMが気になっていて。ラジオのCMって会話劇が多いじゃないですか。「Aが話してBが話して、オチがついて」みたいな形。そんなやり取りやラジオのアングラなノリを漫画でやってみたい、と思ったのが今作のきっかけでした。
──「カップルになる前の男女が、駅のベンチに座って2人で話す」という設定も、その辺りで既に固まっていたのでしょうか。
ろ:もともとWeb用に1~2ページ漫画でやろうと思っていた時は、「中学生の男の子と女の子がゲームセンターにいて、男の子がゲームをしている時に女の子が横に来て、つらつらしゃべる」という設定でした。だから、今の形とは全然違うんです。そもそも最初に考えていたお話は、全部下ネタでしたし……。
──そうなんですか!?
ろ:はい。「下ネタラブコメディ」で考えていました(笑)。でも「少女漫画として、『デザート』で連載をする」いうことになって、もうちょっと恋心とか少女漫画らしさを加えていった気がします。
鈴:当時は下ネタというより「思春期あるある」と呼んでいました。それが高校生になって、「男女あるある」に変わって、舞台が「ゲーセン」から「駅」になって……という変遷で、少しずつ今の形に整っていった感じです。
──2人の会話については、ネームとは別にプロットなども作られたのでしょうか。
ろ:作っていません。でも、たしか1話目のネームですごく難航したんですよね……。自分が思っている形にちゃんとならなくて。プロット、やっておけば良かった(笑)。
鈴:ストーリー展開で見せる話ではなく会話を楽しんでもらうのがメインの新しい形式なので、理想の形がなかなか見つけづらかったというのもあったと思います。
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前編はここまで! お手元の書籍のカバー下、まだご覧になっていなかった方もいらしたのでは? 電子書籍では、あとがきの後ろあたりに収録されています。完結記念の読み返し時に、ぜひ眺めてみてくださいね。
後編では、キャラクターや作品づくり、描かれなかった設定などについてもお話しいただいています。続けてぜひご覧ください!
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<ろびこ先生の代表作・ご紹介>
★『となりの怪物くん』
となりの席の吉田春は、入学初日に流血事件を起こして以来、一度も学校に来ていない。「幻の新入生」として有名になった男子の自宅へ、たまたまプリントを持参することになった水谷雫。自分の成績と未来のことにしか関心のなかった彼女だったが、なぜか彼に懐かれてしまい──!?
ろびこ先生の初長期連載。2008年10月号から2013年8月号まで本編が、2013年10月号から2014年1月号まで番外編が連載された。2012年テレビアニメ化、2018年実写映画化。
★『となりの怪物くん ろびこイラストレーション SPECIAL EDITION』
★『ひみこい』
★『ボーイ×ミーツ×ガール』
★『彼女がいなくなった』
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