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Webマーケティング業務における売り手と買い手の交渉力と成果への道を考える~『いちばんいやらしいWebマーケティングの教科書』⑤ note版

本noteはWebマーケテイングに携わっている方で他者に仕事の一部を依頼している方(いわゆるWEB担当者)向けになると思います。または、Webマーケティングの代理店さん(アクセス解析、広告運用されている方)の参考にもなるかもしれません。

5Forces分析を会社同士の関係でも使ってみる

5Forces分析は業界構造を分析するフレームワークですが、これを会社(売り手)と会社(買い手)のミクロな関係でも応用できる部分があります。今回はWebマーケティングの業務において考えたいと思います。

ある程度の方針はありますが、事例は筆者である私のレベルに限定されますので、是非応用できるようなアイディアがあればご教示いただければと思います。

課題感~クライアントワークのテクニックはよく議論されるが事業側の振る舞いは経験論に終始

アクセス解析や広告運用支援などでクライアントワークの方法論はよく議論されている気がします。「営業で大きく見せておいて契約はがっちり固めろ」とか「MECEやツリー図で見せて先方の上長を落とせ」とか「クライアントと一緒のゴールを向くように誘導しろ」とかそういった類のものです。(表現が悪く申し訳ありません)

ですが、反対の立場で「事業者の立場としてどのように代理店の方たちと接するべきか」という議論は(私の身の回りだけかもしれませんが)少ない、もしくは「代理店をきちんと管理せよ」のような抽象論が多い気がしています。

私は今は事業者側で働いていますが、代理店側の経験もあるので代理店さんの気持ちを想像しながら日々の業務に取り組むことで成果が良くなってきたと思っています。特にビジネススクールで5Forcesフレームワークの使い方(一般化して具体を考える、具体から一般化する)を学んでからは、マクロレベルだけでなくミクロレベルで売り手と買い手の関係を一般化したり具体化したりを繰り返すことで、よく言う「代理店と事業者側とで同じゴールを向く」を実現できてきているのかなと感じています。

方針はシンプルだが、交渉力を上げるのが目的ではない

その、方針は非常にシンプルです。

  1. 各案件で代理店と自社の交渉力がどちらが強いか、その理由がどこにあるかを明確にする

  2. 自社の交渉力がどのようにすれば上がるかを考え、(できる限り)交渉力を上げる努力をする

  3. 交渉力が高い状態で相手に協力をしていただく

この後、それぞれを実例で考えていきますが、、、、
重要なのは「2」で述べた自社の交渉力を上げただけでは何にもならない点です。きちんと「1」の交渉力の不均衡が発生している理由を明確にする現状分析がスタートし全体感をきっちりと押さえていないと、フォーカスが小さすぎたりボケたりするので大きな成果にはつながりません。(つまり、フレームワークで遊んだだけになってしまいます。)

1と2が前提にあって、はじめて協力関係を築き、その場限りの改善にとどまらない大きな成果につながると信じます。

1.各案件で代理店と自社の交渉力がどちらが強いか、その理由がどこにあるかを明確にする

例えば、デジタル広告の案件で代理店さんに広告運用をお任せしている状態を考えます。事業側の担当者に広告運用の経験が無ければ、広告運用自体については代理店側に分があります。更に、事業側がどのようなキャンペーンやウェブサイトの展開することが成果に繋がりやすいかを把握していない場合には、更に代理店側の交渉力が高まります。場合によっては、実際に起きていることがクリアに事業側が把握できず、客観的には非効率な広告運用になる場合もあるでしょう。仮に非効率だとしても、事業側には実際に非効率かどうかの判断がつかないので、代わりの代理店を見つけることができません。そもそも、今配信している広告に改善要望を出すこともできません。5Forces分析で言えば、代替品(代替の売り手や方法)が無いように見えている状態です。

この例だと、技術力や知識、事業の理解について事業側があまりにも知識が無いために、高い交渉力を売り手である広告代理店側に持たれています。

オフラインのマーケティング施策であれば客観的な判断ができる担当者も、なぜかデジタルとなった途端にこの例のようになってしまうことも多々見受けられます。(そうならないためにも一般化をすることはとても重要と考えています。)

2.自社の交渉力がどのようにすれば上がるかを考え、(できれば)交渉力を上げる努力をする

では現状を理解した上で、今度は何をすれば事業側は交渉力を上げられるかを考えていきます。ここまで書いて思いましたが、現状分析をできれば先ほどの例のようにはなっていないと思いますが、ここではシンプルに考えるための極端な事例として捉えていただければと思います。また、先に書いたように、これは成果を上げるための方針で、何も協力いただいている代理店側に敵対するためのものではないことを強調しておきます。

改めて、代理店に対して交渉力を上げるための方法を考えていきます。これはざっと出しただけでも多岐にわたります。

  • ①ウェブに詳しい担当者を雇う

  • ②ウェブに詳しいコンサルタントに監修を依頼する

  • ③社内のウェブに詳しい人材を探してきて業務に関わってもらう

  • ④デジタル広告やアクセス解析について学ぶ

  • ⑤デジタル広告の位置づけをマーケティング全体の中で位置づける会議を行いドキュメントにまとめておく

  • ⑥デジタル広告の指標(インプレッション、クリック、コンバージョン)等を自社の事業にどういった意味合いを持つのかをまとめておく

  • ⑦事業について意味合いを持つようなレポーティング項目を代理店に依頼する(できれば自動レポートにする/有料のケースも有り)

  • ⑧デジタル広告で事業における何を目指すのかを代理店に改めて説明し、それに関する提案を行ってもらうようにする(有料のケースも有り)

今、考えつくものを書いてみましたが、意外にウェブの知識をつけるよりも⑤-⑧のようにマーケティング目標の中の意味合いとしてデジタル広告を落とし込んだほうが成果が出ると考えています。(会議を開く際にも代理店さんが、事業を中心に考えながら提案をしてくれるようになるかもしれません)

もちろん①-④のようにテクニカルな武装をすることも重要ですが、私の所感ですとそれだけだと細かく指標を追ったり、今広告を当てているターゲット・セグメントだけに対して効率化するだけのケースもあります。

やはりマーケティング目標を軸に考えたほうが、事業側としては交渉力をもてるようになるのではないでしょうか。もちろんこの段階では、考えるだけでなく必要なところから地道に交渉力を高める努力をしていく必要があります。Webマーケテイングに限ったことではないでしょうが、いくらお金をつぎ込んでも本当の意味での成果は買えないような気がします。

3.交渉力が高い状態で相手に協力をしていただく

自社に交渉力がついた状態(それが大変なのですが)になってはじめて様々なことが見えてくると思います。大きく①技術観点で代理店側により協力してもらえそうな観点 ②自社の戦略について代理店側に協力してもらえそうな観点の2点が見えてくるでしょう。

具体的に①の観点では、日々のレポートや定例会の中で代理店側が意図していることをしっかりと理解することができます。例えば「新しくはじめた広告はなかなかインプレッション数がでていないようだがそれが広告費の高低によるものか、それとも、広告の設定について何か課題がありそうか」等を詳しく聞くことができるようになっています。こうした質問をするのは(嫌な感じに聞こえるかもしれませんが)広告の成果をきちんと管理をしている姿勢を代理店側に示すことができますし、事業側として何を気にするのかを明確に意思表示をすることができます。「コンバージョンを上げるようにう調整してください」と、ひとこと言っただけではなかなか代理店側に運用方針の意図は伝わりません。

②の「自社の戦略について代理店側に協力してもらえそうな観点」は、デジタル広告でできる限界を事業側と代理店側とで共通認識化ができることを指します。「Webマーケテイングは早くPDCAが回せるのでオフライン広告よりも効率的」のような謳い文句を未だに信じている人たちを見かけることがありますが、デジタル広告も他のプロモーション施策と同じようにユーザーが存在するため4Ps(もちろんプロダクトも含みます)をターゲット・セグメントごとに準備しなければ、結果的に売れない施策になってしまいます。プロモーションの一部であるデジタル広告だけで、成果を出すことは不可能です。これは事業側がきちんと理解をしなければならいと思います。
配信に関する技術的なことは代理店にお任せするのも有りですが、プロダクトが売れていないことをプロモーションのせいだけにはできません。プロダクトの内容や紹介の仕方、プロモーションの一部であるランディングページでの訴求内容、ユーザー流入したプレイスであるウェブサイトの使い勝手などがすべて成果に関わってきます。
デジタル広告の数値が悪くても責任が代理店側に無いことも多々あります。そこで「交渉力」と言って技術論を振りかざしても、代理店側に悪い印象を持たれたり、場合によっては代理店側から契約を切られてしまうこともあります。逆説的ではありますが、デジタル広告の立ち位置をしっかりと見据えた交渉力の高め方もあるのだと思います。

まとめ~抽象と具体を行ったり来たり

今回は5Forces分析を応用した、Webマーケテイングにおける会社間の取引について交渉力にフォーカスしながら検討をしてみました。私の方で提示した事例はデジタル広告の運用に限られたものですが、ひょっとするとSEOやメールマーケティングにも同様の考えは利用できるかもしれません。

今回のnoteは下記のアドベント・カレンダーの企画で作成いたしました。
Webマーケテイングに関連したことであれば、なんでも構いませんので是非ご参加頂けますと幸いです。最終日の12/24にはYouTubeでみなさんのツイートやブログをまとめる配信をいたします。

https://qiita.com/advent-calendar/2022/ichiiya


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