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変態さんよありがとう③~窃視の作家たち

VHSの時代だから、かなり昔になる。ビデ倫を通さない、いわゆるインディーズAVの論評を頼まれたことがある。その中の一本に盗撮モノがあった。市営プールの更衣室を盗み録りしたもので、おそらく手に下げたスポーツバッグにハンディカムを隠して歩き回ったのであろう、天井も映り込む極端な仰角と広角レンズによる独特の歪み、ロッカーの島と島の間からの視覚、はて、どこかで見たような光景だなとしばらく記憶をたどっていくと、『ウルトラマン』に行きついた。第23話『故郷は地球』である。つまりは、実相寺アングル。実相寺昭雄の視点はまさに、盗撮、要は窃視者の視点であることに気づかされたのだ。

写真はイメージです。
『ウルトラマン』「故郷は地球」より。

そういえば、『歌麿夢と知りせば』(77)は実相寺監督の覗き趣味満開だったし、江戸川乱歩原作の『屋根裏の散歩者』(92)など、もってこいの題材だったのではないか。

遮蔽物をナメたり、物の隙間からのショットがお得意だった。
『屋根裏の散歩者』は何度も映像化されている。これはむろん実相寺版。

近年では、スマホカメラで映画を撮る監督もいる。ファイバースコープやドローンなどの映像新兵器も実用化している。もし実相寺監督がご存命なら、これらを駆使し、どのような窃視アングルをものにしていただろうか、想像するとワクワクする。

思えば、クリエイターと呼ばれる人には大雑把にいって、窃視型と露出型がいるような気がする。
窃視型の代表格は、今いった江戸川乱歩、アルフレッド・ヒッチコック、それに寺山修司のような実践派?もいる。池田満寿夫も自分の小説を「鍵穴から覗く小説」と称していた。三島由紀夫という人は、ヌードになったり映画に出たりと一見、露出型傾向の強い作家に見えるけど、実はああいったキャラクターは後天的に作ったもので、彼本来はかなり窃視型の芸術家だったと思う。『金閣寺』や『豊饒の海』にしてもそうだが、『午後の曳航』など、冒頭からして少年が母親の情事を覗くシーンだった。
僕が師と仰いだ、うしおそうじにしても結構、その気があったと思う。漫画家時代、宝塚に帰郷した手塚治虫の留守を任されてトキワ荘の彼の部屋に泊まったときに見た押し入れの中身を、昨日見てきたような口ぶりで聞かせてもらったことがある。また、京都の映画人たちが定宿にしていた有名旅館の客室の文机の引き出しから八尋不二(脚本家)の脚本とコンドームが出てきて、八尋氏と宿の美人女将との関係にあれこれ想像を巡らしたなんて話も面白かった。まあ、なんといっても、『アインベーダー』の人だもの。
『アインベーダー』についてはこちら↓をどうぞ。

そのうしお師に言わせると、「手塚さんて結構覗き趣味があるんだ」そうだ。

一方、露出型のクリエーターというと、偏見といわれるかもしれないが、圧倒的に女性が多いと思う。内田春菊や中村うさぎ、ろくでなし子なんかは顔御尊顔を拝見するだけで、「ハラワタまで見て頂戴!」と言われているようで、僕のような内気なおじさんはドン引きである。まあ、女は脱ぐだけでヒョーゲンと主張できるから、いきおいそっちの傾向に走るのだろう。
以前、どこで拾ってきたのか、母乳で絵を描く女が社民党から立候補して落選したが、こういうゲテモノにおすがりするようでは同党もいよいよオシマイだなと思った次第だ。

僕が愛し影響を受けてきたのは、やはり窃視型の芸術家たちだったし、僕自身も窃視型の人間だと思っている。これからも窃視者の視点で世界の節穴を覗きつつ作品を書き続けていきたい。

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