目からビーム!23 じゃいあんとナショナリズム症候群? ~祝WBC優勝
精神科医タレントの香山リカ氏にかかれば、サッカーW杯を日の丸ペインティングで応援するような当世若者の屈託ないナショナリズムは、いともややすくラディカルなナショナリズムに変容する危険性をはらんでいるという(『ぷちナショナリズム症候群』)。その香山氏が大のプロレス・ファン(特にG馬場がご贔屓)であるというのも面白い。
日本のプロレスの黎明に大衆のナショナリズムは不可欠であったからだ。天をつくような巨漢のガイジン・レスラーを空手チョップでなぎ倒す、力道山の雄姿見たさに街頭テレビの前に群がった人々の熱狂と興奮は、W杯で小旗を振る若者のそれどころではなかっただろう。希代のスター・力道山は、まさに敗戦で打ちひしがれる日本人が心に畳みこんでいたナショナリズムの代弁者だったのである。そんな力道山に煽られた街頭テレビの聴衆からラディカルなナショナリストが誕生したという話は皆目聞いたことがない。
人種の坩堝アメリカで発展したプロレスリングはまた、「差別」を戯画化したショー・スポーツという側面を持っていた。WWⅡ後しばらく日系レスラーは「卑怯なジャップ」を演じさせられていたし、冷戦時代はロシア系悪役レスラーが全盛だった。ベトコンもカストロ直属の暗殺団もジプシーの族長もリングの中にいた。
ブレーンバスターの元祖キラー・カール・コックス(Killer Karl Kox)のイニシャルはKKK。その名のとおり、クー・クラックス・クランのメンバーを自称し、黒人レスラーを血祭りにあげることが至上の悦びだと豪語する。そのコックスと本家KKKの称号をかけて抗争を展開していたのが、キラー・カール・クラップ(Killer Karl Krupp)だ。こちらは典型的なナチ・ギミック・レスラーで、リング上で見せるナチ式敬礼は観客の憎悪を煽った。KKK対ナチの、さながら人種差別世界一決定戦は、コックスの方にやや分があったようだが、ナチを演じたクラップ、実は本名ジョージ・モンバーグというユダヤ系オランダ人というオチがついているというのだから、プロレスの世界も奥が深い。
香山リカ氏が敬愛してやまぬというジャイアント馬場という人物は、これらヘイト・レスラーたちを自分の興行に呼び収益を得ていたということになるが、さてどうだろう。香山先生のご感想を聞いてみたいところである。
初出・八重山日報
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(追記)
遅ればせながら、WBC日本優勝おめでとうございます。とはいえ、僕はまったくの野球オンチで、今でも顔と名前が一致するのは、王選手と長嶋選手とカネやんとイチローぐらいしかいない。ヌードバーと聞いて、裸のお姉さんがいるいかがわしいバーを連想してしまったぐらいだ。
子供のころ、「王、ウチュウカン(右中間)をつんざく大ホームラン!」というアナウンスに「やっぱ王さんすごいや。打った球がウチュウ(宇宙)まで飛んでいくんだ」と感動した憶えがあります。
それはさておいて、スポーツの国際試合くらい、日本チャチャチャ、おーでいいじゃないか。別にそんなんで国民が危険なナショナリズムに走るわけはねえよ(笑)。
▲コール時の片手を上げるナ●式敬礼はクラップのお約束。本人の心中は如何に。典型的なB級悪役だが、日、新、国、全と昭和のメジャー4団体に来日している。使い出のいいレスラーだったのだろう。
▲元祖vs本家のブレーンバスターの遺恨試合が日本マットで実現。コックスはあくまでギミックだったが、バッドニューズ・アレンによると、マードックはモノホンのKKKメンバーだったらしい。
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