人間界のダークヒーローは自然界のヒーロー 花粉
<人間界のダークヒーローは自然界のヒーロー 花粉>
私たちヒト、とくに先進国に住む現代人は森林や田畑から(物理的にも精神的にも)遠く離れたところに住んでいるせいで、偏ったものの見方をしているばかりか全く逆のモノサシで判断してしまっていることが多い。
その一番分かりやすい例が人間界のダークヒーローたちだろう。
その筆頭こそ「花粉」である。春先になれば毎日天気予報でこのダークヒーローの出現を予報し、対策を訴え、一致団結して悪党との戦いに備えるためにさまざまな商品が発売される。
数十年前に多額の補助金を出してまで「将来の世代のために」という合言葉のもと全国に植林をしたはずのスギとヒノキは放置・無視されてきたと思いきや、今や悪者扱いである。
国民病とも言えるほど多くのヒトが花粉症に苦しむ。その本当の原因はそれらの「花粉そのもの」ではなく、自動車や工場から出る排気ガスと花粉が化学反応を起こし、「環境ホルモン」に変化することでヒトにとって猛毒になってしまったことだ。(画像は埼玉大学工学部より拝借)そのため、スギ林が多い里山よりも都市部の方が有病率が高い。
この事実は数十年前に明らかになっているにも関わらず、現代人は排気ガスを出すことも変えることも辞めずに、新しい薬を選ぶことばかりに頭が動く。もちろん、そのおかげでお金は動き、経済が発展するのだが。
そんなダークヒーローである花粉は自然界では打って変わってヒーローそのものである。花粉は栄養学で言えばタンパク質(チッソ)と脂質(リン)、ミネラルを多く含む栄養豊富な食材である。そのため花粉を食べる昆虫類や鳥類、微生物たちは多い。冬の間に食材不足に陥る温帯や冷帯地域にとって、春先の花粉は神様からのギフトである。
しかも、花粉は風に乗って遠くまで運ばれることで山から幅広い地域へ、すべての生き物たちを分け隔てることなく満遍なくギフトされる。無条件の愛そのものだ。
花粉は微生物、昆虫、鳥類の生命を育むことで、春から初夏にかけて彼らは恋をし、繁殖することができる。繁殖するためには豊富な栄養が必要不可欠だ。こうして増えた生命は雑食や肉食の生物たちの栄養豊富な食材となる。
私たちヒトはついつい自然界の生命たちを分けて考えてしまいがちだが、田畑に降り注いだ花粉が微生物や昆虫を育み、その排泄物が野菜や穀物に吸収されているのもまた事実だ。慣行栽培といえども決して肥料だけで育っているわけではない。
花粉は陸上のみならず風に乗って河川、湖沼、海原へと運ばれることで陸上同様に海生生物を育む。花粉は追うランクトンを育み、水棲昆虫を育み、両生類、爬虫類、哺乳類、魚類を育んでいく。
スギやヒノキのように風によって花粉を運んでもらい、受粉する植物はその受粉成功率の低さから、余計なほどたくさんの花粉を作り出してばらまく。それはヒトのモノサシで測れば、余計であり、無駄であり、非効率的だ。しかし自然界から見れば。そのおかげで多くの生物が恩恵を受けることになる。自然界に無駄なものはないことがよく分かるだろう。
風媒花を持つ植物の特徴の一つに過酷な環境でも生き抜く力を持つ点が挙げられる。針葉樹は森林限界ギリギリのところや乾燥が強い尾根沿い、岩石がむき出しのところなどでも容易に生育することができる。イネ科やキク科植物は貧相な土であったり、乾燥が強い土地に勝手に生えてくる。
こうして他の植物が生育しづらいところで積極的に養分を蓄えて、その養分を栄養豊富な花粉へと変換し、そして風に預けて地球上に一斉にばらまくのである。自然界のヒーローは決して富を独り占めしない。
花粉が風に乗って舞っている様子は、花粉症に苦しむ人々にとっては恐ろしい景色だろう。しかし、ヒト以外の生物にとっては「天からぼた餅」が落ちてきているようなものだ。
~今後のスケジュール~
<自然農とパーマカルチャーデザイン 連続講座>
・沖縄県本部町 2月11日~12月1日
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・沖縄県豊見城市 2月10日~11月30日
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・京都会場 無料説明会 2月17日
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<自然農とパーマカルチャー1日講座>
・岐阜県岐阜市 4月21日
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