サウナ室のチャンネル争い
様々な趣味の人が、狭い空間で、しかもかなりの極限状態の中で共に過ごす。サウナ内のテレビのチャンネル選びは、その場にいる人々の人間関係やコミュニケーションに影響を及ばすことになります。
この問題にどう取り組むのかは施設側にとって、単なる面倒な課題ではなく、その施設のサービス精神と顧客志向の表れでもあるのです。
サウナ室にテレビは必要か
大袈裟に言えば、チャンネル選びは、同じ番組を楽しむ人々の共感の源になりますが、異なる趣味を持つ人々の間での対立の源にもなりえます。
昨今のサウナブームでは、サウナ室で自分に向き合う、ある意味「無」になる場所としてサウナを楽しむ人が増えて来ました。
サウナ発祥の地の北欧では元来このような使われ方がされてきていますので、サウナ室にテレビという発想はないようです。
ところが、日本のサウナ文化においては、熱さは確かに気持ちは良いのですが、そこに至るまでの時間は「我慢」です。
そこで、気を紛らわすための道具としテレビは必須のものとされてきたという背景があります。
本来ならば、サウナという特殊な空間で時間を共有するために図られていたコミュニケーションが、テレビ番組という個人ごとに趣味の異なるものも共有しなければならないという葛藤が生まれたのです。
サウナ室で発生する葛藤
大阪人は必ずしも虎党とは限らない
大阪の男湯では、阪神戦の放映は常識。少し前まではナイターの時間にチャンネルされていないと叱られたものです。
しかし大阪といえども虎一色ではなく、隠れ巨人ファンは結構多いのです。黄色一色の1塁側アルプススタンドにポツリと座らされる巨人フアンはたまらないというお客様も結構な割合で存在するのです。
趣向という意味では、競技の違いというのも大きいです。
野球、サッカー、相撲はできても、ゴルフは興味のない人にとっては、これほどつまらないものはないでしょう。
全米オープンが中継される日曜の午前中はゴルフ派とニュースワイドショー派の静かな戦いがおこなわれ、室内ではちょっとした緊張感が漂っていたりする。
最もカオスなのは、夕方に数十人のおじさんたちが文句も言わず画面に映り出される「あんぱんまん」を一心不乱に眺めている光景です。
スエーデン人がこの光景を目にしたならば驚きしかないのではないかと思う。
サウナのチャンネル選びは、単に視覚の楽しみだけでなく、大袈裟にいえばそこに集う人々の心のつながり、コミュニケーションの一助にもなる要素なのです。
サウナ室は社会の縮
図。
お互いの意見や価値観が交錯する中で、どう共有の時間を楽しむかが問われる場なのかもしれませんね。
それだけに、サウナ施設の皆さんはテレビのチャンネル選びを侮ってななりません。
誰かが満足で、誰かが不満足という葛藤やストレスが生じないように細やかな気配りが心地よい共感の場を作り出し、お客様とのつながりを生むことになります。
少なくとも大人だけで「アンパンマン」を眺めているようなカオスを生じさせない、最大公約数で、或いはお客様が納得できる形で施設の方針を明確にする。
トラブルを回避するために、チャンネル固定をうたっている施設は多いですが、これは顧客志向ではありません。
施設のポリシーを明確にして、放映する番組を決めている施設は少ないですが、こういった細やかさが信頼を生むのだと思います。
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