見出し画像

さよなら、先輩

好きな先輩がいなくなった。
掛け持ちしているバイト先、久し振りに出勤して、あれ、最近先輩いないな、って。

机の上にお菓子が置いてあって、
「お世話になりました ツカ」
いなくなってしまったんだ。
って気づいた退勤時、動揺を隠す為にお菓子を食べた。袋は上手く開けられなくて割れたクッキーが少し飛び散った。

わたし、連絡不精だし、聞きたい人の連絡先こそ聞けない性格で、だから先輩の連絡先を知らないままで。
ヅカさん。仕事はテキパキだらだらとこなして、水曜日のカンパネラを文字って「水曜日の小池舞」って呼んできて、いっぱい褒めてくれて、失敗を怒らないところとか、それを皆に平等に与えるところとか。
「今日、月曜日ですよ」とか「水カン私も好きっす」とか、他愛ないこと続けてたかったな。

"どこに行ってしまわれたのでしょう"

家が近所だから遭遇する可能性はあるし、誰かに聞けば取れる連絡。でも違います。
話したいことがあるわけではないんです。

残業した帰り道、5分くらい一緒に歩いた。
「人を好きになってもすぐに飽きるんだよね。」
って言ってたことが印象的で、その言葉を今でも信じられずにいるから、
「そりゃ難しいっすね〜」
なんて笑ったことを取り消したくて、たまにあの夜に連れ戻されてしまう。

舞台観に行くよ、って言ってくれたのに、一回も詳細伝えてなかったな。
社交辞令じゃない、って直感的に。だから観に来てほしかったな。

突然会えなくなることは、死別に近くて。
絶対生きてる先輩、なのにもう会えない。
会えたとしてもこれまでのように会えない。

演劇をしていても、働いていても、遡れば学生の頃から、終わりに気づくとロスに襲われてしまう。
日常が途切れてしまうような錯覚。
いくら依存先を増やしても、ひとつひとつの別離の重さは変わらない。
だから人を好きになるのが、怖い。

先輩も同じだといいのに。

 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?