〜瀧澤玲央先生インタビュー〜

こんにちは!Space Medicine Japan Youth Community(SMJYC)運営の北海道医療大学薬学部5年山田実奈です。

突然ですが、皆さんは夢を抱いたことがありますか?
小さい頃抱いた夢を忘れ、仕事や学校生活に追われている方も多いことと思います。

今回は医師として働かれながらも宇宙医学を志す学生や仲間と貪欲に夢を追い続けている瀧澤玲央先生にインタビューさせていただきました。


____瀧澤先生が宇宙医学を志したきっかけは何ですか?

幼い頃は冷戦時代で宇宙飛行士は身近な存在ではありませんでしたが、3,4歳の頃、父にペーパークラフトでスペースシャトルを作ってもらったことがきっかけで宇宙に興味を持ち始めたんです。
地球という環境があるように、宇宙という環境がある、という認識が芽生えました。
自分自身の中で強烈だった出来事は、日本人初の宇宙飛行士である毛利衛さんの登場でしたね。宇宙飛行士が夢でもあったんですよね。両親が医師ということもあって、医学にも興味があったので、宇宙と医学の融合が出来ればいいなと思っていました。

母校の慈恵医大には宇宙医学研究室があって、学部時代に宇宙医学研究室の須藤先生の講義も受講していました。その時もずっと、いつか宇宙医学に携わりたいという想いはありました。

今は臨床医として、外来、手術をしているのですが、来年から社会人大学院生として慈恵医大の細胞生理学講座の宇宙医学研究室に入る予定です。

___幼いころからの宇宙への憧れを持ち続けるだけでなく、その想いを行動に移されてきたのですね。瀧澤先生は血管外科のご専門ですが、どのようなアプローチで宇宙医学に貢献しようと思っておられますか?

私は血管外科からのアプローチだけではなく、医師として貢献したいと思っています。
医師免許があれば基本的に希望の科の医師になれるので、幅広い見識をもてるように臨床医学も勉強しなければいけないですね。
今までの宇宙医学は健常人の宇宙空間における生理現象を対象としていましたが、近年SpaceX、ブルーオリジン、バージンなどの台頭で低軌道宇宙旅行が始まりましたよね。宇宙空間に人間が行くことが普通になってきて、人間が宇宙空間に住む日がいつか訪れると思うんです。
その際に宇宙空間で病気になったり怪我をした時に、地球上と同じクオリティの医療が提供できれば良いな、と思っています。つまり、”宇宙臨床医学”の先駆けになりたいです。

でも、宇宙空間に持っていくことが出来る医療機器は限定されていますし、使用可能な水や電力にも限りがあります。

その際にある程度どれくらいの資源が必要であるのか、予測を立てて準備する必要があります。
例えば、1回の手術で使う医療機器(電気メス、ライトなど)の電気量はどれくらいであるのか?人工呼吸器を稼働させるには一人当たりどれくらい電力が必要なのか。
これらの疑問は医療機器の専門である臨床工学士の方に実際の手術室で聞きました。でも、そんなこと誰も気にしたことが無かったので分からないと言われたんですけど(笑)。電力消費の測定値を設置してみるのも良いなと思いました。

地球上での日常生活をどのように宇宙空間で再現するか(危険が生じないようにする予防策、安全策としてやるべきことなど)などについて、私達は特に病院で行われる患者さんに対するケアについて仲間と様々な状況を想定して案を出し合っています。なかなかおもしろいので、学生も巻きこんで行っているんですよ。

_____私も宇宙医学に興味はあったものの、具体的にそこまでの想定をしたことが無かったので大変興味深いです。先生は国際医療福祉大学宇宙医学ゼミやガンダム・オープン・イノベーション(以下GOI)で宇宙医学に携わり、ご活躍されていますがそれらの組織の仲間はどのように集められたのですか?

私は当初国際医療福祉大学の成田病院に勤めていました。新しい病院だったので、当時は患者さんがあまり多くありませんでした。そこで臨床でなければ、研究をしよう!と思い、患者さんの症例数もそこまで多くなかったので、新しい分野の研究をしようということになりました。

当時、国際医療福祉大学乳腺外科の黒住先生がAI×病理に興味を持っていらっしゃって、様々な企業の方とお話をされていました。その中でIHIさんが宇宙医学に興味を持っている医師を探していたため、私にお声がけしてくださったんです。そのご縁で私と定期ミーティングをするようにまでなりました。宇宙医学の研究を進めていくうちに、「おもしろいから学生も呼んでみよう!」ということになり、当時成田病院に臨床実習で来ていた医学生達も巻き込んで研究を行っていました。

研究活動をしているうちに宇宙医学に興味がある方が集まって、GOIに参加してみよう!という話になりました。GOIはガンダムが出身、専門領域などの垣根を無くしている。GOI終了後も良好な関係を築けたら良いなと思っています。

写真中央:瀧澤先生が代表を務められているGOIのチーム(GOIのHP引用)

※コラム
ガンダムオープンイノベーション(GOI)とは?

未解決の社会課題に対し、最新技術を駆使して

現実世界において「宇宙世紀」を新たに捉え直し、ガンダムの世界同様に現実世界が抱えている「社会課題」に対して、「ガンダム」と「未来技術」を掛け合わせることにより未来の夢と希望を現実化するプログラム。
ガンダムの持つ壮大な世界観には、まだ実現できていない新しい技術や可能性がつまっている。
その可能性を現実のものとしワクワクする未来に向かって発展していくためにたくさんの人々の創造力と知恵と情熱を結集していきたいと考えていく。
創造する未来の構想をガンダムと共にこの現実世界で具現化することで、夢と希望に満ちた世界を現実にしていく。

(GOIのHP引用)

____実現したいことを周囲に伝えることで瀧澤先生ご自身がご縁を引き寄せたのですね。先生は具体的にどのようなことを研究されているのですか?

詳しくはまだ言えないのですが、研究すべき課題は山ほどあると思います。アルテミス計画が進んでいる通り、人類が宇宙空間と地球を自由に行き来することが当たり前になってきています。人がいる所には病が生まれるので、”人あるところに医学あり”ということで宇宙医学の研究は必要不可欠です。

具体的には、例えば重力があるところとないところではガスの動きが異なるため、宇宙空間では未だ人工呼吸器、全身麻酔は使用されたことがありません。
また、無重力空間での嚥下、胃などの臓器も宙ぶらりんになっているので消化機能にどのような影響が出るのかも気になります。

さらに、ISSの中も運動部の部室並みに臭いという話があるじゃないですか。せっかく宇宙に行っても環境が劣悪だとメンタルヘルスを担保できないので、抗菌素材等も有効であると思います。医学のみならず、疫学も大切なんです。

また、宇宙空間に人間が実際に住むようになったら自治体としての管理も必要になりますよね。

私の夢は宇宙空間でカップラーメンではなく、どんぶりからラーメンをすすること、それから、人が面白いと思うこと、エンターテインメントも必要だと思っているので、
世界的な歌姫の歌声を宇宙空間に響かせることです。地球上での生活をそのまま宇宙空間に持っていきたいのです。

加えて、宇宙空間には限られた水しかありませんし、
声は声帯から空気を伝わって届きますが、そもそも空気が無い宇宙空間でどうやって音を伝えるのか。この場合、無重力空間(もしくは微小重力空間)で声帯の動きは地球上とどう変化するのか。どうしたら地球上と同じクオリティで歌姫がベストパフォーマンスを披露できるのかを考える必要がありますよね。

宇宙医学とは地球の世界、社会で貢献していた学問が新しい世界でどんな風に活きるのかを思索し、”当たり前が当たり前ではなくなった時にどう適応させるのか”を考えることだと思っています。

※コラム
アルテミス計画とは?

2017年にNASAが提案した有人月探査計画である。
1960年代のアポロ計画との違いは何か。当時は米ソの宇宙レースのただなかにあり、月への一番乗りが目標だったが、今回は「月に人類の活動の拠点を築くこと」が主目的である。そして、月周回軌道上に国際協力によって有人拠点「ゲートウェイ(Gateway)」を建設することも新しい。

アルテミス計画では月周回にあるゲートウェイを拠点に月面に有人活動を展開していく。将来的に月面で電源や燃料プラント、居住棟を築く。

(文部科学省宇宙開発利用部会 国際宇宙ステーション・国際宇宙探査小委員会(第42回)2021年6月30日開催資料「アルテミス計画に関する各国の開発状況について」引用)

____宇宙医学とは”適応力”なのですね。宇宙空間であるからと諦めるのではなく、突破口を探し夢を実現すること、想像しただけでワクワクしてきました。宇宙医学と一口に言っても、本当に多様な貢献の仕方があるのですね。瀧澤先生が医師としての立場に関係なく解決したい課題は何ですか?

やはり、エネルギー問題だと思います。
なぜ宇宙に人が行くのか?その理由は第一に知的好奇心があると思います。それに加えて地球環境の保全の為に地球の大切さを理解するためだと考えています。

日本は特に広島、長崎の原子爆弾に加えて、東日本大震災の原発による核の被害を散々受けているのにも関わらず、まだ核エネルギーに頼っていますよね。核はやはりリスクが大きい。もっと地熱、海洋発電、太陽発電など自然エネルギーに頼るべきだと思います。

また、宇宙ゴミ問題も大きな課題であると考えています。宇宙空間と地球を行き来出来るスペースクラフトの開発が進めば、課題解決の足掛かりになると思います。

エネルギー、食料、技術に関しては豊富であれば他人に分配したいという心の余裕も出てくると思います。しかし貧しいと、新しいことに挑戦しようという気力すら無くなってしまう。
世の中が豊かにならないと宇宙開発は非現実的であるとも考えています。

_____地球上での生活の豊かさこそ宇宙医学の発展に繋がり、宇宙医学の発展が地球上の生活を豊かにし得るのですね。最後に、様々な領域のご専門の仲間や、学生と意見交換をする中で意識されていることはありますか?

私は誰もがチームの中で何でも意見することが出来る環境が最も重要であると考えています。自分がすごくやってみたいと思った案でも「人に言ったら笑われるんじゃないか?」と思って中々口に出すことを躊躇うことってあるじゃないですか。でもやってみなきゃ分からないですし、そう言う意見の中にこそ新しい息吹があるのです。
そのためにどんなに突拍子のない案が出てきたとしても皆が受容することが不可欠であると思います。学生にも「絶対他人の意見を否定しないで。」と強く伝えています。

私のモットーは ”自分が持ってない知識、技術、道具などは人から借りる、必要無くなったら返す” というものです。自分が全てを知っている必要はないと思っています。
自分で調べて、生まれた疑問をその領域の専門の方に聞いてフィードバックを受けるのももちろん良いと思います。

でも一番は大切であるのは何事にも興味を持って「これは絶対に面白い!」、「これはこうしたらきっと面白くなる。」ということ。
自分の興味がある分野を他人がおもしろいと言ってくれたら、嬉しいじゃないですか。嬉しくなると互いに良い影響を与えあって、相乗効果が生まれると思うんです。

宇宙領域の研究では特に個々の専門性の垣根を越えるべきだと思っています。宇宙空間を想定して研究することで今までは思いも寄らなかった視点で地球上での医療、その他の領域をレベルアップさせることができるようになる可能性もあるのです。

宇宙医学という分野を知っている人はまだまだ少ないですし、興味があると言うことを躊躇する方もいるかもしれません。しかし、自分の身近な人にも宇宙医学に興味がある人がいる可能性もあるのです。
一人で悶々と考えていても新しいアイディアは生まれにくい。臆することなく自分自身の興味を人に伝えること、人の興味に自分も関心を持つことこそが新しいものを生み出す際に必要不可欠であるのです。

写真左:宇宙医学研究会で学生を指導する瀧澤先生(国際医療福祉大学のHP引用)


瀧澤玲央 (たきざわ れお) 先生

所属:国際医療福祉大学成田病院 血管外科
役職:医学部助教
2007年 東京慈恵会医科大学医学部 卒業
2020年7月 国際医療福祉大学成田病院 血管外科 病院助教
- 日本外科学会外科専門医
- 心臓血管外科専医
- 血管内治療認定医
- 下肢静脈瘤血管内焼灼術指導医
- 日本脈管学会脈管専門医 腹部大動脈瘤ステントグラフト指導医
- 日本血管外科学会血管内治療医 胸部大動脈瘤ステントグラフト指導医

経済産業省主催JHeC2021で入賞

現在は医師として勤務されている傍ら、国際医療福祉大学にて宇宙医学研究においても実績を残されている。


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