夏を堪能する夜『椿組・花園神社野外劇』(第1回空間タンブラー)
「タンブラー=ぶらりと探索する人」
タンブラー片手に颯爽と歩くスマートな女性になりたい私が、
自分の好奇心だけはしっかりと握りしめ
面白い「場所」「空間」をぶらり探索します。
突然ですが、季節を感じる大切さってなんだと思いますか?
日本では昔から四季を大切にするイメージがあるのですが、それってどうしてなんだろう?季節感の大切さってなに?ということを最近ずっと考えています。
いまだにはっきりと答えは出ていないのですが、
そんなことを考えるきっかけとなったのが今回の空間タンブラーでした。
というわけで、空間タンブラー第1回は
椿組2021夏・花園神社野外劇「貫く閃光、彼方へ」を観に、花園神社さんへ行ってきました。
1. 新宿の街と花園神社
花園神社といえば、芸能に縁の深い場所として知られていますよね。
安永9年(1780)と文化8年(1811)には、大火で焼失した社殿を再建するため境内に劇場を設けて、見世物や演劇、踊りなどを興行して好評を博しました。花園神社と芸能の縁は、この頃から始まったものです。(花園神社ホームページより)
演劇好きにとっては馴染みの深い場所なのではないでしょうか。
最寄りは新宿三丁目駅。
途中の道にはハイブランド店が並んでいます。
(神社の目の前に出られる地下道もあります。)
そして、信号待ちをしていると
ビルの間に巨大な木と鳥居……!
「異空間が……!」
この異彩の放ち方。めちゃくちゃ面白い。
これを見た瞬間、俄然テンションがあがりました。
そしてもう一つ興味深かったのは、ここの前を通ったサラリーマンのおじさまが、鳥居の前で立ち止まり、一礼してから通り過ぎていったこと。
普段からここではそうしているんだな、と思うような自然な感じでした。芸能関係のお仕事をされているんでしょうかね。
異空間でありながらも、日頃から信仰を集めている神社なんだな〜と感じた瞬間でした。
2. 花園神社参拝
さて、早速なかに入ると、朱色が鮮やかな本殿が目に入りました。
これは映えますねー!
よし、開場前に参拝しておこう。
と、手を清めにいくとびっくり。
まさかのセンサー式!!!!!
え、最近ってこれが普通なんですか??(困惑)
(最近コロナウイルス感染予防対策としてセンサー式を導入する神社があるようです。)
気を取り直して参拝。
「良い記事が書けますように」と念じました(*˘人˘*)
ところで、神社の中にいるとなんとな〜く空気が涼しいような気がするのはなぜなんでしょう。緑があるからなんでしょうか?
それともやっぱり神聖な場所だからでしょうか?
3.お祭り気分
いよいよ開場の時間です。
お祭りの屋台かな?と思ったら、ここが公演の受付でした。
はっぴ着てるのも夏祭り感がありますね〜
受付を済ませ、いざ特設テントの中へ……
客席は座敷に座布団スタイル。夏っぽい!
(上演前の会場の撮影OKでした。)
テントなので完全に外の世界と遮断されているわけではなく、ちょうどいい野外感のある空間。
また、演者の方たちが元気に声かけしていて、本当にお祭りのような雰囲気でした。
観劇って非日常に感じるものだけど、いつもと質の違う非日常感というか。
あまり身構えることなく、開演を待つことができました。
ちなみに、暑さ対策としてお茶とお水が売られていたり、うちわを貸し出したりしていました。
どちらも利用させてもらって、おかげで涼めました〜!
4. 夏の夜の光
さて、私が今回観た椿組の公演について改めて紹介します。
椿組2021夏・花園神社野外劇「貫く閃光、彼方へ」
1964年の東京オリンピックに向け、急ピッチで作られていた新幹線!
戦後日本の復興の証としての国家事業だった。
ここ新丹那トンネル工事の現場では難題山積みとなっていた。
そこにフラリと若い男がやって来て・・・事件が!
そして今、箱根駅伝のエピソードと時を越えて繫がっていく・・・
かの昔、熱海の初島に伝わる龍神伝説も!
そんな幾つかの「物語」が時空を越えて閃光となり駆け抜けていく!!
脚本:中村ノブアキ(JACROW)
演出:高橋正徳(文学座) 挿入歌作曲:山崎ハコ
2021年7月7日(水)~20日(火) 新宿花園神社境内特設ステージ
(椿組公式HPより)
本来、昨年夏に上演の予定だったのが、コロナの影響で延期され、一年越しにやっと幕を開くことができたそうです。
観終わった後、まず思ったのは「とにかくみんな生き生きしてる!」ということでした。
登場人物たちはみんな死と隣り合わせの環境にいるのに、生きるエネルギーの強い人たちばかり。むしろそんな状況だからこそ人間のエネルギーって底から湧き出てくるんだろうなと。
さらに、一年越しという演者たちの思いも重なって、より切実さを感じたし、それでも前を向こうとするエネルギーを受け取ることができました。
さらに、空間についてもいろんなことを感じとれました。
山を相手にするトンネル工事現場での物語なので、劇中には「山の神」の話が度々出てきます。
その度に改めて神社の神聖な空気を感じたし、この物語を神社という空間で演じることの必然性を考えさせられました。
また、土埃や水が落ちてくるという野外劇ならではの演出もあり、土っぽさが漂う、物語の世界そのものな空間でした。
そして、ここからは劇と直接は関係なくなってしまうのですが、上演中あの空間にいてとても印象に残ったことがありました。
それが外から入り込んだ光です。
暗転のとき、テントの外の街灯の光がすだれを通して中にうっすらと入ってきて、それが座敷を照らしていました。それを見て、なんだかものすごく風情を感じたんです。
(写真で伝えられないのが残念。光はこの隙間から。)
私はいま夏の夜を堪能している!という幸福感に満たされたし、同時にすごく懐かしい気持ちにもなって、猛烈に田舎へ帰りたくなりました。
観劇後もこのときの景色が何度も思い出されて、もっと夏らしい風景や時間を楽しみたいと思うようになり、それが季節感について考えるきっかけになったんです。
これまでも、暑さ寒さは気にするし、服も季節ごとに違うものを着て、お花見をしたりクリスマスを楽しんだりしてきました。
でも、例えば、四季折々の花・気候につけられた名前や、旬の食べもののおいしい食べ方、暑い日・寒い日の快適な過ごし方、年中行事の由来や意味など、季節に関わる自然や歴史のことは全くもって知らないし、興味もありませんでした。
毎年流れてくるものをただ消費するだけで、季節を感じることが文化になっていなかったのだと思います。
文化は心を豊かにしてくれます。まさに演劇がそうであるように。
そして、文化は自分から目を向けないと無意味なものでしかありませんが、逆に自分さえ興味を持てばどんなものも文化にすることができます。
もちろん全てに興味をもつことは難しいけど、マイペースに、自分のタイミングで、誰のためでもなく自分の満足のために、自分の文化を持とう。
劇の感動とともに、そんなことに気づかされた夜でした。
ちょっと脱線してしまいましたが。
それくらいとても夏らしい体験だったんです!
それも全て椿組さんの空間づくりのおかげです。素敵な夏の夜をくれた椿組さん、花園神社さん、ありがとうございました!!
というわけで、第1回目の空間タンブラーは
椿組2021夏・花園神社野外劇「貫く閃光、彼方へ」でした。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!次回もお楽しみに。
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