「つぶし効かないよ」への私の答え
つぶしが効かない
(意味): それまでの仕事をやめても、他の仕事ができる能力がある。
この言葉を度々耳にしてきた。
初めて言われたのは高校の時、理学系の地学・天文系の学部に進もうと思い受験勉強をしていた時だ。進路指導の先生から「君のいきたい学部は潰しが効かないから工学部にしなさい。どうしても理学がいいなら農業、化学、薬学、医学のどれかにしなさい」と言われた。
その時素直に思ったことは、
「なんであなたに私の人生左右されなければいけないんだ!」
ということだった。
なぜなら、その先生は私が進みたい道を経験してきたわけではないし、おそらく世間一般に流布されている誰かの偏見の入ったであろう知識をもとに説教している。そもそもそこで成功している人がいるのは事実なのだから、挑戦してみるのは全然悪くないことだと思う。
今になって考えてみると、理学部(私は地球科学科であった)は潰しが効かないと言うのは全くの偏見だったなと感じる。私の在籍していた地球科学科を含め、理学部の全ての学科において、アカデミックな仕事を最後まで志す人は非常に少なかったが、だからと言って大学に残らなかった人たちが職に困っていたかというとそんなこともない。
公務員、教師、IT系、防災、石油、電力、メーカーなどなど、様々な分野に進んでいった。
今の時代、本当に「潰しが効かない」ものなんてあるのか?
そして私は今まさに、上司に同じように「潰しが効かない」と心配されている。
来年から会社を辞めて、宇宙科学の分野の研究者になるために大学院に進学することに対してだ。
もちろん上司の言い分もわからないわけではない。一般的に言って、宇宙の分野、とりわけサイエンス(科学)の分野は、直接的に人類への貢献度合いが計りにくく、研究者の人数も少ないことからポストは限られている。
さらに、博士課程まで進学してしまうと年齢も高くなるし、せっかく専門性が身についたのに一般的な就職をしたくないなどのプライドが邪魔して、一般企業への就職がしにくいケースも少なくないと聞く。こう言ったことを総合的に見て「潰しが効かない」という言葉が使われるのだろうなとは思う。
でも、だから挑戦しなくていい理由にはならないのではないか?と私は思う。
別に誰かにこの気持ちを押し付けたいわけでも、理解してもらいたいわけでもなく、自分に対してこの問いをぶつけたい。
私もこれまで何度か潰しが効く分野に変えようかと考えたこともある。
例えば、宇宙は諦めきれないので宇宙工学を学び、もしその道で生き残れなくてもエンジニアとしてメーカーに就職できないかと考えたこともある。
もしくは、サイエンスの道には進むが、宇宙よりは用途の広い、地球科学系、特に地球環境系のサイエンティストになろうかとも考えた。 (こちらの方がまだポストも多いし、大学時代のコネも使えないことはない)
でもそのたびに、「それでいいのか?自分が一番やりたいものは違うだろ?」と自問してきた。
そして、やはり自分が追求していきたい分野に身をおき、試行錯誤して挑戦していきたいと思った。
それと同時にまだ自分は何も努力も成果も挑戦もしていないということに気づいた。
その状態で将来を不安に感じたりするのは、時間の無駄だなと感じた。将来のどのようなポストにつきたいか、どのようなキャリアパスにするかを描くことが悪いことではない。だが、何も積み重ねていない段階で、人の話や情報に根拠なく脅えすぎることもない。
とりあえず走ってみて、その中で自分のできることできないことを理解していけばいい。そしたら、将来的に自分が進みたい道に行けなかったとしてもなんとか道は開けてくるのではないかなというすごく楽観的な、しかし強い気持ちを持って研究と勉強をしていこうと思う。
これが、「つぶし効かないよ」への私なりの"現在"の回答である。
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