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はじめての国際学会に関する覚書

昨年10月、博士3年目にして初めて国際学会でのポスター発表に挑戦しました。心理系の大学院生の中でも遅いデビューになりました。

参加した学会
IASR/AFSP International Summit on Suicide Research

27-30 October, 2019 @ Loews Miami Beach Hotel

発表する学会が決まるまで

自殺研究を専門としている学会は日本では自殺予防学会総会しかありませんが、海外には幾つか選択肢があります。👉国際学会2021まとめ
今回は当初30th World Congress of the International Association for Suicide Preventionに参加予定で、抄録もsubmitしていました。しかし、開催地の北アイルランドでその後暴動が起きたので、ボスと相談して発表を取り下げ。共演者の先生から代わりにIASR/AFSPの情報をいただき、出し直しました。
抄録(約400 words)を提出するときは、発表者の簡単な履歴書(CV)が必要でした。抄録は英文校正を受けました。提出から2か月後に採択の連絡をもらいました。
北アイルランドならボスと一緒に行けたのですが、IASP/AFSPはスケジュールの兼ね合いで一人で行かなければならないことに…。

学会参加準備

ポスター作成:抄録や同時並行で書いていた英語論文から文章を切り貼りして作成。これまで参加してきた日本の学会とは異なり、ポスターは横長が規定でした(国際学会は横長が多いらしいです)。レイアウトがよく分からなかったので、Googleの画像検索で"international academic poster"等と検索して大体のイメージを掴んでから制作。学会発表1週間ほど前に大学の大判印刷サービスに発注。クロス(折り目がつきづらい)に印刷して、折りたたんでキャリーに入れていけるようにしました。
発表内容の確認:Abstractが公開されてからは、自分の関心のある発表のAbstractを読んだり、学会のアプリで自分の参加スケジュールを組んだりしました。アプリの画面はこんな感じ👇

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英語対策

WritingとReadingはまあ何とか‥‥なレベルですが、Speakingは挨拶レベル、Listeningが全然できないので、主にListeningを対策しました。
・英検リスニングのアプリで問題を解く(3級でもたまに間違える…)
・Youtubeで英語の動画を聴く
UTOKYO ENGLISH ACADEMIAの受講(東大が無償提供してくれているアカデミック英語のEラーニングです)
・『国際学会English 挨拶・口演・発表・質問・座長進行』を読む
また、同時期に大学で実施される国際カンファレンスで、学生ポスターセッションの募集があったので、ここで似たような研究内容を発表しました。(遺伝医学や生物医学的な研究発表が多く、めちゃくちゃ浮きました)
オンライン英会話も体験のために無料登録したのですが、自信がなくてできず…。

費用

IASP/AFSPの学会参加費:"Student/Trainee/Postdoc Participant"の立場で申し込み、$395(4万円強)でした。日本の学会の5倍くらいしますね。今回は有難く研究室に出していただくことができました。
旅費:往復航空券代が183,170円で、ホテル代と合わせて208,820円でした。大学がスーパーグローバル大学創成支援(文部科学省)を受けて「海外学会等参加支援プログラム」を実施してくれていたので、これに申請し、15万円分は補助を受けられました。
学会参加費は立て替えなので、参加後にお金が振り込まれるまでの間、生活が厳しくなりました。欧米の学会に参加するときは注意しないといけないですね。

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準備のスケジュール

  5月15日 抄録 Submit
  7月  3日 海外学会等参加支援プログラム 採択
     13日 抄録 Accept
     16日 学会参加費を払う
 この間、旅行会社にホテルや航空券の相談に行く
  8月24日 ポスターの発表日が決まる
  9月24日 旅費を支払う
10月  4日 国際カンファレンスで発表練習
10月24日 ポスター印刷

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いざMiamiへ!

学会参加のスケジュール

学会に参加できたのは2日間で、観光もほとんどしない強行スケジュール

10/27 成田→Dallas→Miami
10/28 ECR Programに参加
10/29 ポスター発表
10/30 Miami→Dallas
10/31 成田着

"Coffee"の多い1日目☕

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Early Career Researcher (ECR) Program

国際学会で企画されていることのある、院生や若い研究者向けのプログラムです。学会に参加する前からECRへのお誘いメールが事務局から届いていて、何だこれはと思ってスルーしていたのですが、大学でやっていた英語論文・国際学会に関するセミナーで知って、参加することにしました。
今回は登録制で、事前にマッチングされたメンターと一緒に朝食を食べながら、講演を聴いたりグループアクティビティを行ったりするものでした。

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開始は7:00からと朝早く、この時間はまだ外が暗かったです。
※外が暗い時に女一人で出歩くのは危険です。

広くて豪勢なパーティ会場のようなところで、パンやフルーツなど豪華な朝食が並んでいました。メールで事前に案内されていたテーブルに着きます。同じテーブルに台湾ご出身の若めの先生がいて、声をかけてくださったので、少し雑談できました。
電子辞書をテーブルに置いていた私を見て声をかけてくれた先生がいたので、日本出身で英語が全然できないと話したら、「じゃあゆっくり話そう」と言ってくれて嬉しかったです。(だがその後は聴きとれず)
また、マッチングされていたメンターの先生とも軽く挨拶しました。
全体で開催者からの挨拶とECRの説明がなされた後、テーブルでのディスカッションという流れでした。テーマは"suicide research-a-thon" (hackathon)で、事前にこのhackathonについて説明がされたのですが、理解できず。話し合う課題が「自殺率を減らすために、様々な研究のアプローチをどう組み合わせるか?」だったので、とりあえずいろんなものを組み合わせるという意味らしいと理解しました。
私の参加したテーブルではいつの間にかこんな内容にまとまっていました。

Specific Aim 1: Apply system dynamic modeling of various factors (e.g., violence, psychopathy) to simulate how suicidal thinking emerges among incarcerated males
Specific Aim 2: Experimental therapeutics based on results of Aim 1

ディスカッションには全く参加できませんでしたが、自分と同じPh.D studentに出会うことができ、嬉しかったです。特に私と同じ女性の院生や若い先生が、ベテランの先生方と対等に(英語だからそう感じるのか)話をしている様子を見て、とても刺激になりました。

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朝、昼、夜、ブレイクタイムなどに豪華なお菓子やコーヒー・紅茶などがいくらでも食べられました。写真はランチボックスです。学会費はこういうところに使われていそうです。

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ポスター発表

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何と広くて豪華なポスター学会会場!(左から2番目が私のポスター)
ランチセッションの間だけはポスターの前にいるように、という規定でした。横長のポスターを3分の1ずつに区切って、真ん中のゾーンに結論を文章でドーンと書き、両端に細かく内容を説明するレイアウトのポスターが流行っていました。(↓イメージ図)

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自分の発表は、幸いお世話になっている日本の先生と隣同士で、とても心強かったです。足を止めて読んでくれる人も、幸か不幸かそうそう声をかけてこなかったので、質疑応答でドギマギすることはありませんでした。
学部生の女の子と私と同じくD3の中国人の女の子が話しかけてくれました。(学部生が参加していた驚き)
あと、日本の学会では名刺を配って後日メールで挨拶がよくある光景ですが、こちらでは名刺交換を全くしませんでした。

他のポスターを見ているときには、少し質問したりしてみたり、写真を撮らせてもらったりしました。

特にSocial Media関連の研究は面白かったです。
日本の自殺対策では、相談に抵抗のある人が匿名で支援者に相談できるサービスという位置づけで、SNS相談が2017年からようやく使われ始めたところですが、海外はSocial Mediaをもっと柔軟なツールとして危機介入に用いているようでした。日本でももっとSNSを使った自殺対策の研究をやっていきたいです。

IASR/AFSPは過去の学会のAbstractが誰でも閲覧できるので、興味のある方はHPから見てみてください。

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学会会場のすぐそばにビーチが。海というか空が超綺麗でした。

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"第三次"研究者の存在

 今回参加して感じたのが、日本の学会とは違って女性の研究者が多いということです。日本だと自殺の研究をしている人はどうしても男性の医師が多い印象で、現場で自殺対策に関わっていないと研究もやりづらい(もしくは関心を持たれない)側面があるのだと思います。
 IASR/AFSPは座長もシンポジストも全員女性という回もあったり、私が話した学生も全員女性で、国際的には意外に女性研究者の方が多いのかもと思うくらいでした。敢えて男女分けて考える必要はないのですが、海外の方がアカデミアに女性が残りやすいのかもなーと思いました。
 あと若い人も多かったのが気になったので、帰国してボスと話してみたところ「日本では自殺に関する直接的な経験を持つ当事者(一次)や支援者(二次)の研究が多いけど、そういう立場にない人(三次)でも研究として自殺に関心を持って取り組める社会なんだろうね」ということでした。
そんなこんなで、国内外の研究分野のあり方についても学べる良い機会でした。今後は2~3年に1回は国際学会に行けたらいいなと思います。

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参加者には無料で謎のTシャツが配られました。Suicideの文字が入っているのも、海外のスティグマの低さを感じますね。今度日本の学会で着ようと思います。

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