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相対性理論

1.イントロダクション

実はあなたにとっての時間と私にとっての時間の流れは同じではありません。
時間は1日24時間で誰にでも平等といいますが、
アインシュタインの相対性理論によると、その人の置かれている状況や立場によって時間の流れは異ります。
例えば光速に近い速度で動いているロケットがあるとすると、そのロケットに乗っている人の時間は遅れて見えます。

2.相対性理論とは

まず、相対性理論には特殊相対性理論と一般相対性理論の2種類があります。
時間の遅れは特殊相対性理論で説明できます。今回説明するのは特殊相対性理論の方です。
特殊相対性理論は数学的には中学校レベルの数学で理解できます。なお、ここでは、数式は使わないで説明します。
一方の一般相対性理論は大学の物理学科の授業でも出てこなくて大学院で勉強するレベルです。

相対性理論は時間と空間の性質を調べる物理学ということができます。
重力を考えない場合が特殊相対性理論で、重力を説明するための理論が一般相対性理論です。
時間や空間は当たり前にあるものというイメージですが、現代の物理学では時間や空間も研究の対象になっています。

そして、相対性理論の結論として直感に反することがたくさん出てきます。
最初に話した「時間の遅れ」もその1つです。他にも、「空間の縮み」という現象もあります。
そして、「質量」と「エネルギー」は同じものということも事実として実証されています。

3.相対速度とは

相対性理論では「光の速さ」が重要ですが、まずは常識的な「速さ」について考えてみましょう。
この図で、黄色い車は時速100キロメートル、赤い車は時速70キロメートルで走っています。
あなたが赤い車に乗っていたとしたら、黄色い車の速さはいくらに見えるでしょうか?

相対速度とは


これは簡単ですね。答えは、時速30キロメートルです。
では、この場合はどうでしょう。
光は秒速30万キロメートルで進みます。その光を秒速1万キロメートルのロケットで追いかけるとします。

光を追いかける


ここで問題です。このロケットに乗っている宇宙飛行士から見ると光の速度はいくらになるでしょう?
車の場合と同じように考えると秒速29万キロメートルになるように思えます。
しかし、光の速さはロケットから見ても秒速30万キロメートルです。光の速さは誰から見ても同じなのです。
そうすると何かおかしくならないでしょうか?
小学校の算数で「速さ=距離÷時間」て習ったことを覚えているでしょうか。
光の速さを一定すると、時間や距離の方が変化することになります。
 

3.時間の遅れ

いよいよ時間の遅れについて説明します。
ロケットが宇宙ステーションに対して一定の速度で動いているとします。


このロケットはとても大きくて天井の点Aから床の点Bまでの距離は30万キロメートルあります。
だから、ロケットの中でA点から出た光がB点に届くまでの時間はちょうど1秒です。

宇宙ステーションから見るとロケットは動いているから、点Aから出た光は斜めに進んで点B'に到達することになります。
この斜めの距離AB'は30万キロメートルよりも大きくなります。


光の速さは誰にとっても秒速30万キロメートルだから、
宇宙ステーションから見るとロケットの天井から出た光が床に届くまでの時間は1秒よりも長くなります。
例えば、光速の半分の秒速15万キロメートルで動いているとすると1.15秒です。
ロケットから見るとその時間は1秒ちょうどだから、ロケットの時間が遅れているということです。
その遅れの比率は1秒÷1.15秒=0.87で87%です。

では、ロケットから見ると宇宙ステーションの時間はどうなるでしょうか
ロケットと宇宙ステーションの立場は対等だから、
ロケットから見ると宇宙ステーションの時間が遅れることになります。

4.空間の縮み

さっき説明した「時間の遅れ」から自然に「空間の縮み」が導き出されます。
3
0万キロメートル離れた惑星Aと惑星Bの間をロケットが秒速15万キロメートルで飛んでいるとします。この30万キロメートルというのは惑星Aや惑星Bに対して静止している人から見た場合の距離です。なお、惑星Aと惑星Bは互いに静止しているという前提なのでご注意ください。

ここで、ロケットが惑星Aから惑星Bまで移動するのにどのくらい時間がかかるでしょうか?答えは、30万キロメートル÷秒速15万キロメートルで、2秒になります。

ただし、これは惑星Aや惑星Bにいる人から見た場合の時間です。
ロケットに乗っている場合は時間が遅れることを思い出してください。
ロケットの時間は87%遅れるから1.74秒になります。

したがって、ロケットから見た惑星Aと惑星Bの距離は秒速15万キロメートル×1.74秒=26.1万キロメートルということなります。

5.質量とエネルギー

相対性理論の重要な結論の1つに、物は速く動けば動くほど、重くなるという事があります。
正確には質量が増えますが、質量とは「加速しにくさ」のことです。
ニュートンの運動の法則 力=質量×加速度 から、物体の質量が大きいほど加速が小さくなります。

例えば、10キログラムの物体が光速の半分の速さで動いていると約11.5キログラムになります。これが光速の99%だと約70.9キログラムにもなります。
質量は光速に近づけば近づく程限りなく増えます。

これはスピードが速くなるにつれて、どんどん加速しにくくなるということです。だからいくらアクセルを踏んでも、ジェットを噴射しても光速に達することはありません。

この宇宙自体に制限速度があるなんて、本当に不思議ですね。エンジンにどれだけエネルギーを注ぎ込んでもスピードアップには使われないでロケットの質量に変わってしまうのです。

そこでアインシュタインは、エネルギーが質量になるなら、その逆の質量からエネルギーへの変換もあるはずと考えました。静止している物体の質量から莫大なエネルギーを生み出すことができると予言したのです。この発想の飛躍がアインシュタインが天才といわれるゆえんです。

その予想は見事に的中しました。核分裂反応の前後で放射性物質の質量がわずかに減っていて、その分のエネルギーが放出されていることが確かめられました。

6.まとめ

今回は相対性理論のポイントを解説してみましたが、いかがでしたでしょうか。

空間や時間そのものが物理学の研究対象になってるのが驚きです。相対性理論以前は空間や時間は絶対的な不動のものと考えられていました。その概念を変えたのはまさに天動説から地動説への転換に匹敵します。

今回は特殊相対性理論を扱いましたが、一般相対性理論になると重力が出てくるのでブラックホールや宇宙論の話になります。
そのあたりのことはまた別の機会に書きたいと思います。

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