トリュフ×しょうゆ=オムライス? 〈前編〉
「おいしいもの」を考える時、これまでの常識をくつがえしてもいい。
文・撮影/長尾謙一
〈キッコーマン 「ステーキしょうゆ」シリーズ〉
・ステーキしょうゆ 贅沢香る トリュフ風味
・ステーキしょうゆ 贅沢香る 燻製しょうゆ仕立て
・ステーキしょうゆ 贅沢香る 和山椒風味
・ステーキしょうゆ 和風おろし
・ステーキしょうゆ たまねぎ風味
・ステーキしょうゆ にんにく風味
・ステーキしょうゆ オニオン&ペッパー
(素材のちから第44号より)
「ステーキしょうゆ」でメニューに〝贅沢〟を加えるという新しい発想
「ステーキしょうゆ」シリーズが〝贅沢〟の要素を加えて進化した
「ステーキしょうゆ」シリーズは26年前、〝肉を「しょうゆ」でおいしく食べて欲しい〟というキッコーマンのこだわりから生まれた。その味わいは時代に合わせて進化し、今では肉に限らずドレッシングやソースをはじめ、あらゆるメニューに使われている。今回こうした歴史の延長線上に「ステーキしょうゆ」シリーズはさらに進化した。
「ステーキしょうゆ」シリーズをそれぞれ試食してみると、どの商品にも外食店で提供されるメニューに価値を加えようとする強いアプローチを感じる。
たとえば上のオムライス、この香りを皆さんにお届けできないのがとても残念だが、テーブルに置いた途端に立ち上るのは〝トリュフ〟の香り。「ステーキしょうゆ 贅沢香る トリュフ風味」に少しだけチキンブイヨンを加えてのばしてオムライスにかけてみた。トリュフと卵の相性のよさは言わずと知れたことだが、このとろとろのオムライスがまとう鮮烈な香りは印象的だ。
通常、オムライスにはトマトケチャップやデミグラスソースを添えることが多いが、おいしいメニューを考える時には、これまでの常識に縛られることはない。「ステーキしょうゆ」を使うことでメニューの価値がぐっと上がった。
また、「ステーキしょうゆ」は人気の燻製風味も素早く取り入れている。「ステーキしょうゆ 贅沢香る 燻製しょうゆ仕立て」は燻製しょうゆをつくるところからはじめ、ナチュラルな燻香をメニューに添える。
さらに「ステーキしょうゆ たまねぎ風味」は、なんと50%を超える具材入りで、手づくり感のあるたまねぎのカットにもこだわっている。このように「ステーキしょうゆ」シリーズは、すべての商品が外食メニューの価値を上げることのできるこだわりの〝贅沢〟を持っているのだ。
しかし、こうした〝贅沢〟つまり高級感は、これまでは厨房の中でつくり出されるものだったはずだ。いったいこの価値ある〝贅沢〟はどのように生み出されるのだろう。商品開発者を訪ねてみよう。
しょうゆメーカーだからこそできる唯一無二の〝贅沢〟をつくり出す
「ステーキしょうゆ」というネーミングの意味
梅澤 「ステーキしょうゆ」は1996年に、それまでの「ステーキソース」から名前を変えました。これはしょうゆメーカーにしかできないものをつくろうという強い信念からです。
しょうゆはそれぞれに特徴があり、商品開発する際には合わせる素材に適したものを選ぶことにより味や香りを引き立て、逆に言えば選択を間違えると足を引っ張ってしまうことになります。それだけ味に影響力が強いのがしょうゆなのです。
弊社は100種以上のしょうゆの中から選んで味わいをつくり出します。それぞれの「ステーキしょうゆ」は、どれも違う表情をしていますね。色、コク、うまみ、香り、合わせる素材によってしょうゆを選ぶということは、他にはできない〝贅沢〟の要素と言えます。
市場から〝贅沢〟の要素を探し出す
佐野 商品開発では今、何が注目されているかを意識することは欠かせません。そのテーマの一つに〝燻製〟がありました。
苦労したのは自然な燻製の香りを出すことです。「ステーキしょうゆ 贅沢香る 燻製しょうゆ仕立て」には、日本人のDNAに刺さるような燻製の香りを出したかったのです。
燻製のエキスやパウダーを使うと、どうしてもわざとらしい独特な風味がします。そこで燻製したしょうゆをつくるところからはじめ、楢のチップの燻煙で半日以上しょうゆをバブリングすることで香りを移しました。
梅澤 燻香を移すしょうゆには、大豆の旨みを丸ごと引き出したコクのある特選 丸大豆しょうゆを選びました。
佐野 さらに外食店のお客様は、普段家では食べられない味を求めているということがありましたので、〝トリュフ〟にチャレンジしてみました。
食べた時に初めから終わりまで香りが続くようにトリュフ原料には、結乾燥させた黒トリュフを使ったトリュフソルトをはじめ、3種類を使っています。
梅澤 しょうゆは2種の丸大豆しょうゆをブレンドして使います。うまみが強いものと淡色系のおだやかな香りで素材を活かすものです。この二つのバランスをとることによってトリュフの強い個性にも負けずに、しょうゆの風味も立ち上がることでトリュフの香りをさらに押し上げるのです。
〝具材50%以上〟という途方もないテーマ
佐野 「ステーキしょうゆ たまねぎ風味」はテーマとして〝具材50%以上〟を掲げましたが、それだけ具材を入れるとボトルからうまく出ませんし、液体だけ出てしまって具材が中で止まってしまったり、そもそも具材を50%も入れること自体が難しすぎましたね。
さらに、既製品にありがちな均一すぎる具材感ではなく、まるでシェフがつくるような自然なたまねぎの具材感を出したいと思いました。そのためにソテーオニオンやカットサイズの違うたまねぎなど3種類のたまねぎを使うことで手作り感を実現しながら、具がたっぷりで自然に流れるようにするという点もクリアしました。
梅澤 しょうゆはたまねぎ本来の風味を活かすために、しっかりとしたうまみがある〝高窒素タイプのこいくちしょうゆ〟と、おだやかな香りとまろやかな口あたりでコク深い〝特選 丸大豆しょうゆ〟を合わせて使います。たまねぎの優しい甘みを残しながらねぎ臭さも抑えつつ、全体がまろやかに仕上がります。
このように「ステーキしょうゆ」シリーズは素材を深く追求することと、合わせるしょうゆを吟味することで、どの商品もが外食店のメニューの価値を上げる〝贅沢〟を持っています。ぜひお試しいただきたいと思います。
贅沢な香りが魅力 (贅沢香るシリーズ)
●ステーキしょうゆ 贅沢香る トリュフ風味
●ステーキしょうゆ 贅沢香る 燻製しょうゆ仕立て
●ステーキしょうゆ 贅沢香る 和山椒風味
圧倒的な具材感 (定番シリーズ)
●ステーキしょうゆ 和風おろし
●ステーキしょうゆ たまねぎ風味
●ステーキしょうゆ にんにく風味
●ステーキしょうゆ オニオン&ペッパー
さて、こうしてつくられた「ステーキしょうゆ」シリーズは外食店でどのように評価されるだろうか。洋風肉バル、カフェ、洋食店で取材した。〈後編〉をご覧いただきたい。
(2022年3月31日発行「素材のちから」第44号掲載記事)
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