春の過ごしかた

春になるといろんな花が咲いたり、過ごしやすい気候が増えて出かけたい気分になる。
気分はそうなのだけど、実際に出かけるのは私とってはとても大変なことである。

去年コロナのことがあり、多くの人が花見できなくなった。
まさか花見ができないなんて。
桜の花を見ることがこんなにありがたいことだったなんて。
と、何度となく聞いた。
それが一般的なのかもしれないけど、わたしにとって「花見ができる」「桜の花をみられる」ということは奇跡に近い。そんな人生だった。

学生の頃は学校に通う時や下校の際に見ていたかとしれないけれど、それは花見ではなく私にとっては「登校」「下校」。
なんとか高校を卒業して、わざわざ花見に行くことがかなり難しい身体になってしまった。

何度かnoteに書いているが、私は複雑性PTSDという病で解離症でもある。
心に多くの傷があり、心と体が離れてしまうのだ。
その治療を恩師の余命宣告があり1年3ヶ月やった。一般的にはやらない間隔。
それでいきなり体に心が入り解離していたことが分かった。

もう人生折り返し地点を過ぎているほど生きているが、桜の花が咲いてる期間はとても短く、特にこの時期体調を壊しやすいのでなかなか桜の花を見ることができなかった。

ニュースやSNSなど、いろんなものから桜の開花の情報が入るけれど出かけられない。それがまた焦りにもなっていたのかもしれない。

そして3月は私の誕生日という大きな出来事がある。
私は自分の誕生日が嫌で仕方ないのだ。
それは親や人に祝ってもらったことがなかったし、自分が生まれてきた罪悪感が心身に無意識に出ていたようだった。
自分では全く気付いていなかったけれど、友達に「誕生日が近くなるといつも具合悪くなって寝込むよね」と言われたことがある。
自覚がなかったので家族に尋ねると、「そうだけど言うと余計に気にすると思って言わなかった」と。しかし以前に比べると随分良くなったとのこと。これが10年ぐらい前だと思う。

これは小さい頃からの虐待や、親戚に「死ね」「死んでしまえ」と言われて育ったので、常に自分が生きていることに罪悪感があった。
それに加えて誕生日というのはその罪悪の根源である自分が生まれた日である。
それが無意識に心身に出ていたのだろう。

3年前に家族が倒れて毎日介護と看病に病院に通わなくてはいけなくなり、無我夢中で行っていたのがちょうど桜の時期で。1日だけ休みをもらって母を連れて桜の花を見に行った。
その翌年から複雑性PTSDの治療がほぼ毎週になったので、動けない状態でもなんとか車の助手席に乗り治療に連れて行ってもらった。
座っていることも辛く、シートを倒しているので外の景色が見られない時もあったけど、なんとか横に座ってるといろんな景色が流れていく。その中に桜の季節もあった。
そして一昨年、去年、今年となんとか3年連続で桜の花を見ることができた。
快挙である。

花見はしなくちゃいけないものじゃない。
花見と称して桜の花など全く見ずにお酒飲んだり騒いだりしている人もいる。

春はギックリ腰が一番多いということを最近知ったが、それは冬寒くてあまり動かなかったのに、ちょっと暖かくなって突然動いて腰に負担がかかり過ぎるんだと思う。
複雑性PTSDも同じで、長年苦しんでいるのだから突然動くとリバウンドが来る。少しずつ体を慣らしてまた休憩して。自分がどこまでならできそうか探っていくしかない。
また寝込んだり落ち込んだりもするけれど、それも仕方ないこと。
自分を責めずに次はどこまでやれるか。やれなかったらまだ無理だったり疲れているのかもしれない。それを教えてくれてるんだ。
そう思えるようになりたい。

今日嫌な誕生日がやってきた。
母がスーッと私の部屋に入ってきたから何事かとビクビクしていた。
すると母が「誕生日おめでとう。何もできなくて申し訳ない」と。
私は「おめでとうって言ってくれるだけで嬉しいよ」と伝えた。
母がしみじみと「高齢で初産だから帝王切開しないといけないって言われたのに、頑張って出てきてくれたから切らずにすんだ。生まれてきてくれてありがとう」と。
生まれて初めて「おめでとう」とか「生まれてきてくれてありがとう」と言ってもらった。
私も自然と「生んでくれてありがとう」と答えた。

友達からもおめでとうと言ってもらったり、SNSなどでもたくさんの方におめでとうと言ってもらった。
こんなに誕生日を祝ってもらったことはないと思う。

人生本当になにがあるか分からないな。
少しずつ自分の誕生日が嫌いじゃなくなるかもしれない。
そんなふうに思えた誕生日だった。

私がこの春やりたいことは、自分の心が喜ぶ花見をしたい。
桜に限らずいろんな花が好きだから、ゆっくり歩いてどんな花が咲いているか見たいのだ。
それは私の人生の歩みかたの目標でもある。

2021.03.27
そよかぜ🌱