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絶望した日の夜に読んだ本。

 色々なことがたくさん起きて、自分ではどうにもならないことが重なった日の夕刻。丑三つ時には少し早い夕刻。自宅に帰る途中までのショッピングモールまでは何とか持ちこたえることができた。けれど、駐車場でどうゆう訳か涙があふれだし、止まらなくなってしまった。たくさん我慢して、誰にも迷惑を掛けたくないと言う思いが入った涙。

 その思いが乾燥した車内の湿度を0.001%位上げた気がした。時間を気にせず泣いたあと、車のドアを開けて目的地に向かった。たくさんの新書が積み上げられ、題名に魅かれながら、目的の出版社名を探した。と言っても、出版社名はすっかり忘れてしまっていたので、スマホで題名を検索する。

「もものかんずめ」 あっさり出版社名を見つけることができた。1分ほど迷って目的の棚に迷い込む。まぎれもなく作者を見つけてレジに持って行き購入した。夕飯を買いこみ、自宅に帰宅した。
私の中で本書は「禁断の書」 であった。全17章からなる短編集。生きている上で、絶望が降ってきたら読むことに決めていた。

 この本を読むと色々な悪夢から解放される。そう。全てが面白いのだ。いや、度を越えて面白いのだ。笑う門には福来る。まさに、いやなことがあったら絶対手にとってほしい1冊である。

 第1章の水虫の話から始まる本書は、作者が日ごろに起きたことを言葉巧みに表現してくれる。同じ言葉でも、使う場所次第で、こんなにも表現力が爆発するのかと思うほどである。

 いやなことがあると、お酒を飲んで忘れろと言ってくれる友人もいて、すごく助かるのだが、実は私は下戸である。おそらく、そんなに飲めない。たくさん飲むと確実に次の日を棒に振る自信がある。

 そうなのだ、本書は、数年に1度来る本当に嫌なことがあった日のお酒に代わる薬。
 いや、お酒以上の劇薬である。それくらい、自分の心を温かくしてくれる。1ページ毎に笑いのツボがあり、1章を読み終えたら確実に休憩が必要である。

 それは、笑いの氷山を1つずつ崩すように読み進めないと、呼吸困難におちいるくらい、息がつけないのだ。はらはらドキドキではなく、呼吸がおかしくなる程の状況がある。
 
 第2章、第3章と読み進めると夕刻の自分の気持ちさがとても小さいことに思えるくらい、切り替えることができる。

 登場人物は、20人の大家族の物語ではなく、ごく普通の6人家族である。一人一人個性というか、表現力が豊かである。
「あーなぜこの本と出合ってしまったのか」 と違う後悔も押し寄せる。390円+税で人生の絶望から這い上がる力をくれる。人間は活字でも這い上がれるのだ。
 
 著者は漫画家でもあるため、不意を突いて出てくる挿絵もまた確実に笑いのドツボに入って来る。

 あらゆる手を尽くしても、本書の様な短編で1章ごとが笑いに満ちている本も数少ないと思う。

 全ての章がお勧めなのだが、選りすぐりとなると、やはり第一章「奇跡の水虫薬」
 いきなり笑わせてくれる。著者が水虫になってしまいあらゆる手を使って、なんと水虫を治してしまうのだ。まさに奇跡を垣間見ることができる。
 人間本気になると、あらゆる手を尽くすのだ。
 
 そして、この一連の水虫を治すために使われる、一語一句の描写。本人のすさまじい程の治したいという気持ちが既存の治療方法を越えて完治してしまう。
 
 私自身、絶望した夜は自分自身の努力の足りなさが引き金になったのだと自覚していた。本書を読んで考えたこと。それは、自分ができる限界までできることを模索し続けたのか?と言うことである。
 
 この水虫薬を発見するまでの著者の苦悩。私自身、全てが中途半端のまま終わっていることが多かった。曖昧な部分で線を引き、できた気でいたのだ。

 もう一度、自分のやりたいこと振り返る良いきっかけになった。自分の努力はここまでか?線引きの度合いを明確にする必要があった。
 
 とても好きな英語の勉強。自分ができる限界まで引き上げるにはどうすればよいのだろか?著者の水虫薬を発見するまでの軌跡を照らし合わせながら勉強の方法を考えてみよう。というきっかけになった。
 
 もう、絶望の夜に考えていた、自分を責める気も無くなってきた。本書を読み終えた時、確実に世界が変わっていることを感じた。なんといっても、一方的な見方を変えることができたのだ。本当に感謝している。

 まだまだ、笑い足りないが、それ位がちょうど良いと感じた。笑いはすべでの活力になることも分かったから。本書「もものかんずめ」 は何度も読み返しても面白い。もう何もしたくないと思っている人にぜひおすすめする。

 もし、何もしたくないと思っているのであればぜひ、本書を読んでもらいたい。今まで言いづらかった自分の失敗談。けれど、それは失敗ではなく、考えによっては笑いとなり、別の誰かを勇気づける行動にもなるのだ。
本書がそうだった様に。

 これからもさんざん生きるのだから、せめて、一週間に一度笑う時間を持っても良いと思う。たった10分で必ず口元がほころぶ。そして、私の人生まだまだ、序の口であると感じさせてくれる奇跡の一冊である。

 最後までお読み頂きありがとうございました。最初に本書に出会ったときは家族に回し読みをして同じくらいお腹をかかえて笑っていました。
 とてもとても記憶に残る一冊でした。

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