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『桃太郎電鉄 教育版』を中学校の授業で使ってみた感想

おはようございます!とむそーやです。

今回は、待望のICT教材
『桃太郎電鉄 教育版Lite ~日本っておもしろい!~』
を学校で使ってみた感想を
お伝えしたいと思います!

そもそも『桃太郎電鉄』とは?

1988年から30年以上にわたり幅広い年代の方々にお楽しみいただいているボードゲームシリーズです。プレーヤーは鉄道会社の社長となり、日本全国を巡って物件を買い集め、最初に決めた年数が終わった時に一番資産を持っているプレーヤーが勝利となります。最新作 『桃太郎電鉄 ~昭和 平成 令和も定番!~』 は、お客さまからご好評をいただき、累計販売本数350万本(2022年3月時点)を超えるヒット作となっています。
(出典:KONAMI公式HP)

『桃太郎電鉄 教育版』とは?

『桃太郎電鉄 教育版Lite ~日本っておもしろい!~』
2023年1月にリリースされたICT教材です。

『桃太郎電鉄 教育版』は、教育機関が導入できるよう、WEBブラウザやタブレットでの操作を可能としたデジタル教材のこと。本教材では、学校の授業にあわせて先生がプレイ時間や対象地域を選択できるほか、各地の名産品や主要産業、歴史に関する情報を表示する機能が追加。また、貧乏神のような相手のプレイを妨害する要素も一部非搭載となっている。
(出典:ファミ通.com)
出典:https://www.konami.com/games/momotetsu/education/

私自身も、これまで様々な桃太郎電鉄の作品を遊んできて
特産品、地理感覚、日本の地名などは
桃鉄から学んだと言っても過言ではないと思います。

社会科の教員になって
「学校の授業で桃鉄をやる」
というのは長年の目標だったのですが

まさかこんな形で
学校教育に適したバージョンが出るとは…!

嬉しさのあまり、早速申し込み
審査の末、無事使用可能に!!

早速、中学校の担当クラスの生徒たちと
総合的な学習の時間を利用して
やってみることにしました!!!

授業の流れ

今回、対象生徒の人数は
中学1年生の2クラスで計48名。
桃鉄教育版では、各地方区分ごとに
遊べる範囲を設定することができます。

出典:https://www.konami.com/games/momotetsu/education/

「九州地方」「東北地方」などの
計7つの地方区分 +「全国」で
合計8つの地方区分があったので、

48名を3人1組にし、16グループにわけ
計8つの各地方を2グループが担当する
という組み分けにしました。

教室の図。3人1組のうち1人のタブレットを使います。

ただ遊ぶだけだと学びの要素が
あまりなくなってしまうので、
今回はアウトプットの要素を用意しました。

自分が担当した地方区分で停車した駅と、その駅に関する情報を、プレイ画面右側に表示される「特産品」、「駅周辺トピック」などを参考にして、各自がノートにメモを取り、それを最後にロイロノートのアンケート機能を使って集計、という形にしました!

いずれにせよ
教科の授業ではなく
あくまでも試験的な授業なので
とにかく遊んでもらって、
子供たちの様子をみる
という意識で行います。

社会科教員や中学担当教員の方々にも
授業の参観に来ていただきました。

早速、授業開始!

出典:https://www.konami.com/games/momotetsu/education/

学校内の大きな教室(会議室)を使用し
全員が所定の位置に座ったところで
早速授業開始。

まずは桃太郎電鉄教育版のことについて
私の方から簡単に説明したあと、
全国班のうちの1つの班をこちらで指名。
部屋の前方にあるスクリーンに来てもらい、
その生徒の画面をスクリーンに写しながら
みんなで一緒にゲームを始める前の設定をしました。

設定が完了したら、あとはフリーに遊んでもらいます。

何人かは桃鉄自体をあまり遊んだことがない生徒もいたようで
桃鉄を遊んだことのある班員の生徒が
わからない生徒にルールなどを教えてあげながら
ゆっくりとスタートして行きました。

序盤は操作感を掴むことに集中していたためか

だんだんと操作に慣れてきて
活発にいろんな声が飛び出すようになりました。

「やったー!1番ゴールしたー!」
「え?この駅って、なんて読むの?」
「なんかサイコロが2つになった!笑」

順番にiPadを回しながら遊び、
自分が停車した駅は
適宜ノートにメモをとりながら
進行していきました。

出典:https://www.konami.com/games/momotetsu/education/

「教員管理画面」では
「生徒たちのプレイ時間」
「プレイ可能時間の設定」
「授業の中断・再開」などを
操作することができ、

教室全体へ何か指示を出す場合は
「中断」ボタンを押すことで
生徒のプレイ画面をロックすることもできます。

というわけでまとめると
導入(使い方説明・設定)=10分
展開(実際に遊ぶ)=35分
まとめ(アンケート)=5分

このような流れになりました。

使ってみた感想・反省点

<感想>

①スタート地点によって所持金が違う

開始して2分くらい経つと、班によっては総資産10億円くらいを達成している班があって「え?!もうそんなに稼いだの?!」と驚いて生徒に声をかけたら
「いや、スタートからこの金額だったんです」
とのことでした。関東チームです。関東圏の物件は基本的に億単位のものが多いからという理由からだと思います。各地方毎のスタート時の援助金は以下の通りです。

北海道=1億円 / 東北=1億円 / 関東=10億円 /中部=1億円  
近畿=5億円 /中国・四国=1億円 / 九州・沖縄=1億円 / 全国=1億円

②「設定を変える」機能は搭載されている

「名前を変える」、「対戦相手の設定」、「終了年数設定」など桃鉄お馴染みの設定画面は搭載してあります。(ただし、CPUの選べるレベルはまめ鬼のみです)

なので、例えばクラスで遅刻する生徒がいた場合、最初はその生徒の代わりにCPUを対戦相手として設定し、遅刻生徒が来たらそのCPUをプレイヤーに変える、ということもできます。

また、ゲームスピード(汽車の移動速度、メッセージの読み上げ速度)なども変更可能です。どちらも速い設定にすれば、授業時間の短縮に結びつくかも?

③記念仙人やスリの銀次は出現する

マイナス駅に止まり続けたり、購入物件が全100件になった時など
一定の条件を満たすと気まぐれに現れる記念仙人。
教育版でも出てきてくれて、ちょっとテンション上がりました。

スリの銀次を知らない生徒も、お金を取られた瞬間には大絶叫。笑
ただし、教育版のスリの銀次は取られる金額は4分の1で固定みたいです。
子どもには優しい、スリの銀次…

④妨害要素もちょくちょくある

出典:https://www.konami.com/games/momotetsu/education/

桃鉄教育版では貧乏神が出現せず、
過度に持ち金(資金)が変動しないように調整されているのですが、
妨害要素が全くないわけでもありません。
先述したスリの銀次以外でも、
「おならカード」、「刀狩カード」などの
妨害系カードも一部盛り込まれていました。
喧嘩にならない程度に使って欲しいところ。

⑤カードマスは急行系カード多め

黄色いカードマスに止まってみると
序盤は特に急行系カードが多い印象でした。
また、急行系カードを使う生徒の中で面白い会話がありました。
「特急と急行って、何が違うの?」
「小田急線使ってるからわかる!特別急行の略だよ!」
なるほど!たしかに違い、意外とわからない生徒多いかもしれないですね!
「特急と急行、何が違うの?」
「リニアカードと新幹線カード、どっちが速い?」
急行系カードと絡めて発問を考えるのも、
面白いかもしれません。

⑥オンライン対戦機能はまだついていない

オンライン対戦機能は今回搭載されていません。また、部屋割り機能も教員管理画面内にはあるのですが、まだ使えません。

KONAMIの岡村シニアプロデューサーも、「今後の現場の先生方との対話の中で機能拡張は考えている」とインタビューの中で話していました。

加えて、ブラウザ版とは別にインストールするバージョンのもの(アプリ版?)も実は開発していて、そちらには実装しているとの事。こちらはアプリがかなり重たく手間がかかる為、まだリリースはしていませんが、今後リリースされるとなると、これまた楽しみですね。

⑦CPUのレベルが結構強い!

CPUのレベルはまめ鬼のみとなっているのですが、かなりゴールされちゃいます!笑
班の中にはCPが優勝してしまう班もちらほら。笑
結構強いです、まめ鬼のくせにー!笑

⑧「虫メガネ」が面白い!!

「その他」→「マップ」→「虫メガネ」を使うと、各地に「豆電球ビックリマーク」があります。カーソルを合わせEnterを押すとなんと各地にある有名な建物、特産品、観光地、史跡などを紹介してくれてます!「ランドマーク情報」というものです。
これはこれで調べ学習として使えそう!

⑨3人1組はテンポ良かった

2人1組だとノートにまとめる時間が無く、かといって4人1組だと自分の番が回ってくるまでの時間が長いかなと思い、今回は3人1組で行いましたが、かなりバランス良かったと思います。授業の目的に応じて、チーム分けできればいいかなと思います。

⑩ぶっ飛び系のカード盛り上がった

「ぶっ飛びカード」、「北へ!カード」、「サミットカード」などは、使うともう大盛り上がり。笑

生徒の声

以上、使ってみた感想でした!
ここからは、ロイロノートのアンケート機能で集計した
遊んでみた生徒たちの感想を
一部ご紹介したいと思います。

<生徒の声>
ただ遊ぶだけじゃなく、停まった駅の特産品など知れて勉強にもなりました‼︎
すごく楽しかったです。

友達と一緒に学びながら楽しく勉強することができました。分からないことがある時に、友達に気軽に聞けたりしたからまたこういう感じで皆で学習したいです。

楽しんで授業を受けられて、ゲームで学ぶって、とても面白いことだな、と感じました。
ゲームは勉強にならない。などという少し前の固定観念に縛られていない、新しい取り組みだと思います。

北海道のことを詳しく知れたのでよかったです。読めない漢字が多くあったので北海道を全然知らないなと思いました。

桃鉄教育版授業の反省

ここからは、授業後の個人的に思った改善点や、他の教員・生徒たちからのフィードバックなどを参考に、授業の反省点をまとめてみます。

①白地図を使えば良かったなあ〜!

出典:https://www.konami.com/games/momotetsu/education/

桃太郎電鉄教育版では授業で使える白地図シートを提供しています。
申し込んでから教育版のリンクと共に届いていたのですが
完全に白地図の存在を忘れていました。笑
これを使って、自分が通った場所をマーカーで塗ったり、停車した物件駅に印をつけたりすれば、もっと地理感覚が掴みやすかった気がします。

②準備に結構時間かかる

説明しながら準備をするとなると、大体10分〜15分くらいかかります。
中にはブラウザバックしたり間違って消しちゃったりする生徒もいました。
そのようなハプニングも想定して、時間にゆとりを持って事前にセッティングをしておくといいかもしれません。

③プレーの共有がもっとあった方が良い

テーブルごとで楽しんでくれていてよかったのですが
テーブルごとの位置情報・感動・学びをクラス全体で集約・共有できるような
仕組みづくりができるともっとよかったと思いました。
例えば、白地図シートをかなり拡大印刷したものを用意し、それに各班の現在地を記入し続けたり、各班が担当した地方で得た学びをGoogleジャムボードで共有したり、はたまたプレゼンテーションにしてみたり。桃鉄チャンピョンシップとか盛り上がりそう?

④収益率がわからない生徒への対応

「ねーこの“シュウエキリツ”100%って何?」このような声がちょくちょく各班から上がっていました。確かに桃鉄を初めてプレーした生徒にとっては、収益率の概念って難しいかもしれないですね。最初に教員が説明する?もしくはわかる班員の生徒に説明してもらう?公民分野の授業で調べてもらう?どう使い分けるか、どう対応するか、考える余地ありです。

⑤高校での導入に関しては海外版の方がいい

これは高校を担当されている教員からの意見なのですが、やはり対象は小学〜中学が妥当とのことでした。というのも、桃鉄のマップの地理情報というのはかなりわかりやすくデフォルメされたものなので、専門性が高まる高校の内容にはそぐわないのではないか。また、高校の地理では扱うテーマが日本の地理というより世界の地理についてなので、そういった教科のテーマ的にも、高校地理の授業での活用は難しいのではないか、というようなご意見をいただきました。

例えば、桃太郎電鉄USA(PlayStation2)では、アメリカが舞台となっており、実際にあるアメリカの都市を覚えることもできますし、発生イベントで大統領選挙(仕組みも解説してくれます)や、西部開拓時代にタイムスリップするなどがあり、結構アメリカ社会の勉強にもなります。桃太郎電鉄USAの教育版とか出たら、面白いですね〜

また2023年には、ニンテンドーSwitchから世界を舞台としたシリーズ最新作『桃太郎電鉄ワールド ~地球は希望でまわってる!~』が発売予定となっています!

今後、世界版の教育版とか出たら面白いな〜、とも思います。笑

ただ、桃鉄教育版は金融教育や、探究活動、学級開きのアイスブレイクなど
社会科の授業以外での活用も見込むことができ、
学校活動の様々なシチュエーションで遊ぶことができます。
そういった形であれば、高校での導入も十分できる余地があるかと思います。

⑥桃鉄のガイドブックも有効活用できるのではないか?

物件駅の情報や、その土地の歴史・文化などをもっとキャッチーに学ぶ手立てとして、
Switch版の桃鉄の公式ガイドブックや、Gakkenと共同開発したエンタメ学習本「桃太郎電鉄で学ぶ」シリーズなどを使うのも良いのではないかと思いました。私も実際購入してみたのですが、オールカラーの写真やマンガもついていたりして、かなり見やすいです!小学生の調べ学習の材料としてはかなりいいと思います。


以上、「『桃太郎電鉄 教育版』を中学校の授業で使ってみた感想」でした!
教員の中でも「俺の頃にもこうやって勉強したかったなあ」との声が上がっていました。最高の教材が誕生したと思います。

しかし、お金の増減だけで一喜一憂するだけでは学びの要素が少ないため、学びの教材として有効活用し授業として成立させるためには何かしらの学習目的の設置が必要です。

そこで次回記事では、
この1回目の授業、およびその後数回にわたる教員とのテストプレイも通して得た学びや反省を活かし、桃鉄教育版を使った授業アイデア、そして今後搭載していただきたい機能をまとめたものを、書きたいと思います。

次回へ続きます!お楽しみに!

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