リハビリ業界の闇に迫る『担当ガチャ』とは?
どうも、そうちゃんです。noteをご覧いただきありがとうございます。今日は題名にも挙げました『担当ガチャ』について、現場の実際の状況と個人的見解を踏まえてお話しさせていただこうと思います。
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ではよろしくお願いします。
『担当ガチャ』とは?
初めてお聞きになる方もいるかも知れませんので簡単にご説明いたします。(おそらくTwitterをしているセラピストや患者当事者の皆さんはご存知かと思いますので飛ばしてください)
去年のことです。あるツイートで議論が巻き起こりました。そのツイート内容を簡単に説明すると
世間で評価の高い回復期病院に行ったとしても、リハビリの担当はおもちゃのガチャガチャの様に運で決まってしまう。同じ医療費を払っているのに一方では良いセラピスト、もう一方では良くないセラピストに当たってしまうのはおかしいんじゃないの?
病院は最低限の質を担保するための研修等を義務化すべき
てな内容です。
回復期ではどのようにリハビリ担当が割り振られるのか?
単刀直入にいうと”運”です。
「良いセラピスト」「良くないセラピスト」の定義が分からないので、それはツイートをしたご本人にお聞きしないと分からないのですが、なんとなく言わんとしていることは分かります。おそらく現場で働く理学療法士・作業療法士・言語聴覚士は分かると思います。特に休みの日も研修会等に足繁く通い、自分の時間を犠牲にし、いわゆる”自己研鑽”に励むセラピストはそのようなことに敏感だと思います。(”自己研鑽”=善、”自己研鑽しない”=悪とは言ってません)
さて、なぜ”運”なのでしょうか?
では当院ではどのように担当の割り振りをしているのかをお話しします。
当院の回復期病棟ですが、まず1チーム3名が4つあります。つまり合計12名ですね。1チームの内訳ですが、3名のうち担当を持つチームメンバー(経験年数1〜5年目)は2名です。1名はチームリーダー(経験年数10年目以上)という形です。つまり担当を持つメンバーは合計8名ということになります。その8名が各々6〜7名の患者を常時担当しているという感じです。ではチームリーダーは何をしているか?と言いますと、患者担当を持つメンバーが休みの日にそのメンバーの担当患者のリハビリをするということです。勤務によってチームメンバーが2名とも休みであれば、他のチームリーダーがもう一方の患者を担当し、2名とも出勤であれば他のチームの休みのメンバーの患者を担当します。なぜこのようなシステムを取っているかと言いますと、回復期病棟は365日1年間毎日リハビリがあります。お盆だろうが、正月だろうが毎日あります。そのため休日の担当患者の割り振りの際に業務が煩雑にならないようにしているわけです。
これが当院の回復期病棟のシステムです。
ではどのように患者を割り振るのか?ですが、割り振りはチームリーダーが行います。
どんな優先順位で割り振りするのか?
■合計患者担当数
まずは各メンバーの合計患者担当数を確認します。例えば現在担当数が5名と7名のメンバーがいるとすれば、7名のメンバーに新しい患者を振ってしまうと8名になってしまいますので、5名のメンバーに振ると思います。また近々退院患者が出る場合は担当数が減ることが予測出来ますので、その辺りも踏まえて新しい担当患者を振ります。
■疾患別担当数
患者担当数を踏まえ、次は疾患別担当数を確認します。どういうことかと言いますと、例えば整形外科疾患の患者担当数が5名のメンバーと3名のメンバーがいるとして、新しい患者が整形外科疾患の患者であれば整形外科疾患の患者担当数が少ない3名のメンバーに振ることになります。これは脳血管疾患、その他でも同じ考えで振ります。
■重症度
仮に担当患者総数が同じでも一方は軽症者が多い、もう一方は重症者が多いとなると身体的負担が全然変わってきますので、重症度も考慮します。
■性別
重症度とも通じる話ですが、女性は軽症者、男性は重症者のように振るのが当たり前と考えられるかも知れませんが、これは間違っています。皆さんご存知か分からないですが、そのような考えで男性ヘルスケアワーカーが潰れてしまうことが良くあるんです。男性が重症者となると男性へ負担が集中してしまうので、当院ではあまり性別は考慮しません。(これについては色々とお話ししたいことがあるのでまた別のnoteでお話しします)
■経験年数
特に今は新人が入職して4ヶ月目。まだまだですので流石に難症例、重症例は振りません。
優先順位はこのような感じだと思います。
お気づきの方もいらっしゃると思いますが、個別の能力は全く考慮してないですよね。例えば整形外科が得意なチームメンバーには整形外科疾患を、脳血管疾患が得意なメンバーには脳卒中を……のように割り振る各チームメンバーの個別の能力によって割り振る担当を決めているわけではありません。
なぜこのように割り振るのか?と言いますと、
円滑な業務の遂行
これに尽きると思います。
仮に各担当の得意分野や興味のある分野を考慮した患者の割り振りをしようとしても不可能です。患者担当数が偏ってしまう、業務量の偏りに繋がってしまいます。あるチームメンバーは担当が3名だけど、あるチームメンバーは8名になってしまうなんてことは出来ないわけです。また、回復期病棟は比較的長く入院できるとは言え、やはり経営面を考えると回転数を上げる必要があります。いかに多くの患者を短期間で早く退院してもらい、新しい患者を受け入れるか?つまり退院が出るとその日のうちに新しい患者が入院されます。それこそ止めどなく患者が入院されるわけです。
つまり個別の能力に応じて患者振り分けを考慮出来ないのが実際の現場の状況です。おそらくこれは当院だけの話ではないと思います。
ただし例外があります。それが”脊髄損傷者”の担当者の割り振りです
脊髄損傷者の場合に限り、チームメンバーにアンケートを取り担当希望の有無を聞き取りします。なぜかと言うと、脊髄損傷者の受け入れ数は年間でも数例の場合もあり、その限られた脊髄損傷者をその場の患者担当総数など先ほど提示した優先順位で決めてしまうと脊髄損傷者に対するリハビリテーションができる人材育成が出来なくなってしまいます。なので当院では人材育成の意味も込めて担当希望があるチームメンバーにしか振らないようにしています。さらに脊髄損傷者を担当するチームメンバーのチームリーダーが脊髄損傷に詳しくない場合もありますので、その場合は私が指導に当たると言う形で行っています。
しかし良く考えてみてください。脊髄損傷においても経験の浅いチームメンバーが担当せざるを得ないのが当院の状況なんです。公には”脊髄損傷を専門的に受け入れている病院”としてアピールはしておりますが、実際はそうなんです。(*これについては次の章であるエピソードをご紹介いたします)
このように、日本では医者は選べてもセラピストは選べないのです。これが”運”と言われる由縁ではないでしょうか?
壮絶なエピソード
今の病院に就職して様々な脊髄損傷患者さんが入院されましたが、後にも先にもこれほどモメたことはなかったと記憶しています。
■ある胸髄完全損傷患者”Aさん”のエピソード
当院の脊髄損傷リハのことをご自分でお調べいただいて転院されてこられた患者さんです。転院当初からかなり希望が高く、歩行再獲得の希望を訴えられておりました。その当時は脊髄損傷者の受け入れ数も今より多かったため担当割り振りに特別な配慮はしておりませんでした。つまりリハ担当のチームメンバーもチームリーダーも脊髄損傷についてはそれほど詳しいわけではありませんでした。チームメンバーにおいては初めての脊髄損傷担当と言うこともあり、当然のことながら上手くリハが出来なかったわけです。それがAさんの逆鱗に触れ、
「こんな素人でどうしてくれんねん!!」
「お前らのリハビリなんか受けるかっ!!」
この一件、かなりモメました。リハビリテーション部士長・副士長、病棟師長がAさんのところへ謝罪に行くことになりました。
その後のリハビリテーション部の対応ですが、私に取っては「半分理解できるけど、半分は理解出来ない」でした。
確かにAさんの要望を全て飲むこと自体は明らかに無理な話でした。そこはAさんにご理解いただくしかないんですが、”担当は変更なし”と言う判断をしたのです。
それはさすがに無いやろ!
と思いました。Aさんにとっても、元々のチームメンバーにとっても地獄じゃ無いですか、それって。まあ担当をそのままで行ったんですけど、結局チームメンバーが精神的にきてしまって、そこでやっと担当変更になりました。
だから言ってるやん!
こういう対応のまずさからもリハビリテーション部のトップの不甲斐なさが分かるんですが…まあ愚痴はこれくらいにして
最終的にPTとOTの担当総入れ替えということになりました。
この一件、私はある意味別のチームリーダーだったので客観的に見ていました。たまに代行でリハビリさせていただくこともあったりして、Aさんからのお話しも聞いたりしてました。明らかに無理な要望もあったんですが、ご本人の言い分も非常に分かることがあったんですね。それは、
「〇〇〇(当院名)に来ればちゃんとリハビリしてもらえると思ってた」
「まさか〇〇〇(当院名)に来て、脊損の素人が担当になるとは思わんかった」
この言葉を受けて、「そりゃそうやな」と思いました。グサっと来るわけです。なんでかって言うと、そう思われるかも知れないという可能性を分かってて担当を振っているわけですから。申し訳ない気持ちと同時に、実際のところ要望通りに出来ない歯痒さがあります。
起こるべくして起こったエピソードだと思います。
『担当者ガチャ』、患者さんの捉え方の違い
先ほどのエピソードのようなモメることってほとんど無いです。なぜ無いのでしょうか?患者さんからすれば「良いセラピストが担当になって欲しい」と思うのは普通のことだと思うのです。理由としては3つあると思ってます。
■その1:我慢している
日本人特有ですかね、思ってても我慢されている患者さんは多い印象です
■その2:気づいていない
これは偏見かも知れないですが、ご自分の体にあまり興味の無い方がいらっしゃいます。このような方はリハビリ担当がどうこうおっしゃる方はいませんね
■その3:感謝している
これがリハビリテーションの面白いところ?なんて言っても良いのか分かりませんが、どのような結果であれ、とても感謝してくださる患者さんがいらっしゃいます。
これは私が新人の小柄な女性PTに脳卒中患者の歩行介助を指導していた時のエピソードです。長下肢装具での歩行練習と言うのはかなり体力的にキツいんですね。しかも患者さんはまあまあ背の高い男性でした。後方から介助するんですが前からだとその新人PTが見えなくなるほどでした。(昔は私もスパルタでしたね、今ならやらせません)
新人ですし、体格差もあるためなかなか上手く出来ないんですね。でも彼女は患者さんと共に毎日一生懸命歩行練習してました。頑張りのおかげでなんとか屋内は見守りで歩けるようになられました。
退院前、その患者さんとお話しする機会があり
私「頑張られましたね。結構歩けるようになられて」
患者さん「そうやね…(涙されて)あんなちっちゃい手で、ほんまに感謝してる」
そうおっしゃられたんですね。なぜ「手」のことをおっしゃってたかと言うと、長下肢装具を持ちながら後方から介助するんですが、手にマメが出来たりするんです、しっかり持ってないと危険なので結構力がいる介助になります。なんかその話を聞いてて私も泣きそうになったんですけど、それくらい彼女が頑張ったこと、その思いが患者さんに伝わったんだと思いました。
そう考えると、新人だとか経験年数だとか、リハビリが有名な病院だとか有名なPTにリハビリしてもらうとか、そう言う範疇では無い場合もあるのだと思ってます。
では一生懸命リハビリを提供して、思いが伝われば良いのか?と言われると絶対にそうじゃありません。そこに甘えては何にもならないので。綺麗事と言われても仕方ないですね。
そこで私なりに、良いセラピストに巡り合うための具体的方法をお話しして終わりたいと思います。
”運”を引き寄せるための具体的方法
脊髄損傷に限定してお話しさせてください。やることはシンプルです。正直言うと、病院勤務のセラピストの立場から言うと「あまりしないで欲しいこと」を敢えてお話しします笑
■できる限り脊髄損傷を専門的に受け入れている病院を探しましょう
こちらのnoteの4−2に詳しく書いてますので少しはご参考になるかと思います。
■学術活動の有無を確認する
病院の目星がついたら、次は病院の学術活動面を調べましょう。ネットで検索すれば出てくるかと思います。リハビリテーション部のセラピストの名前は学会発表や論文等で出てくればメモしておいても良いかも知れませんね。「〇〇さんに担当してもらいたい!!」と伝えてみてください。
■脊髄障害認定理学療法士・神経専門理学療法士
理学療法士には認定理学療法士および専門理学療法士という制度があります。病院に問い合わせていただくか、見学の時や入院時に聞いてみてください。担当割り振りは通常入院前には決まってますので、色々なお願いは早めにされることをおすすめします。
■もしリハビリ担当、病院が気に入らなければ?
気を遣うことなく要望を伝えてください。リハビリの担当を変更して欲しければそのようにお伝えください。病院が「ここではダメだ」と思ったら「転院したい」と早めに伝えてください。当院でもあったのですが、別の回復期病院から転院されてくる脊損患者さんがいらっしゃいます。回復期は期限が引き継がれるので、できるだけ早く転院されることをおすすめします。
*注意* 病院側からはもしかしたらイヤな顔をされるかも知れませんが、そこは気にせず要望を伝えてください。しかし、必ずその要望が叶うとは限らないってこともご理解ください。しかし要望がもしあっても伝えなければ叶うことは絶対にありません。病院は変化を嫌いますから。
YouTubeでも関連情報をアップしてますので、よろしければぜひご覧ください。少しはお役に立てるかも知れません。
病院探しの情報収集のポイントのお話しです👇
こちらもよろしければぜひ!!
まとめ
『担当ガチャ』についてお話ししました。今の病院の現状では残念ですが端的に表した言葉だと思います。
そうならないためにも日々精進しなければならないと思ってます。
この記事が何かの参考になれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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