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「運の悪い男 ふたたび」

「俺はなんて運の悪い男なんだろう。」

そう長男はまたつぶやいたのだった。
なぜって?


めがねを作った同じ春休み。
新学期が始まる直前の日、以前住んでいたアパートのママ友だちからお呼びがかかり、子どもたちとともに家に遊びに行った。(ちなみにその家族も私たちより早く家を建て移り住んでいた。)

毎度いっしょにゲームばかりやっているので、夕方にはいいかげん外で遊ぶように子どもたちみんなを追い出した。(ちなみにその日は三家族で集まっており、子どもが小四の長男たちから年少さんまで全部で七人いた)

そこでたいして時間がたたないうちに長男の声がして戻ってきた。

「お母さん!!釘踏んでケガした!血が出た!!」

なにい!?
見ると確かに血が出ていたが、すぐ止まっているみたいで…でも釘を踏んだという場所はちょっと黒い点になっていた。
縦に落ちていたのだろうか、泥が広がる空き地の地面に落ちていた釘が靴を通り抜けて刺さったようで、考えただけでも痛い!
その家のママ友だちがすぐ応急処置で、消毒ととりあえずの絆創膏を貼ってくれた。

もう夕方だったし、血も止まったし、本人もさほど痛がってないし、その日は家に帰ってからも消毒しただけ。
しかしあの黒い点が気になるし、夫も、もしサビた釘だったらサビが中に残るとやっかいだからと言うので、翌日近所の医院に行った。

やはり医師が診ても、サビが残っていると細菌が体にまわったら大変なので、これは切開してきちんと処置した方がいいだろうということになった。
さっそく麻酔注射を患部(足の裏)のまわりに打たれる長男。

さすがに注射をブスリ、ブスリと数箇所打たれるときは
「痛い!!」と声をあげていたが、麻酔がきいて切開の際はおとなしくなった。

「麻酔が引いたら痛み出すんでしょうか?」という私の問いにも「大丈夫だよ。そんなにひどく痛むことはないと思うから」と言われ、抗生剤だけもらって帰った。

すると夜、麻酔が切れてちょっと痛み出してなかなか寝付けないらしい長男が、ベッドから起き出したので
「じゃあ、今夜はお母さんの横で寝ていいよ」といっしょに寝てあげたのが、最悪の夜に。

痛みがどんどん増して眠れず、しょっちゅう「痛い!足が痛いよ!!」と夜中わめくので、ずっと私は長男の背中をトントンたたいてなだめたりさすったり、
「痛いね、かわいそうに。大丈夫だからね」となぐさめたり声をかけ続けた。
だがウトウトしたかと思うと再びぐずりだし、その夜はほとんどふたりとも眠れなかったのだ。
(夫は、とっとと次男のベッドにもぐっていった薄情な奴である)
あの医者~~!痛くはならないと言ったじゃないかぁ~!!

家にあった鎮痛の座薬を入れてあげたけど、あんまり効き目がなく…(泣)
次の日の仕事は眠くて眠くて仕方なかった。

ガーゼ交換に医院に行ったとき、相当痛がったことを告げると
「怖くて思う以上に痛い気がしたんだろう。じゃあ一応今日は痛み止めの座薬をあげておくから」だって!
はあ~~!?

でもその日の夜はもう痛くて眠れないということはなくぐっすりだった。(長男は昼間もずっと寝ていたのに。私は眠れず…)

そんなこんなで、大騒動の釘ふみ事件はとりあえず収拾できそうだ。もうすっかりよくなっている様子。ちっ!

それにしても、同じところで遊んでいた七人の子どものうち、どういうわけか長男だけが釘なんてのものを踏んでしまうという不幸に見舞われる…。なんて運の悪い男なのだろう。
そういう星のもとに生まれたのか?

写真の黄色い花。
次男がいつか私に摘んできてくれた花だけど、今回は長男にお見舞いとして捧げよう。

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