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「親の欲目」

「ちぇっ!なあ~んだ…」ということがあった。

長男のことだが、小学四年生となりだんだんと典型的な理系人間となっていく様相を呈してきた。
漢字のテストは20点をとっても平気の平左衛門であるが、理科となるとけっこういい点を取ってくる。

夏休みの自由研究も、私の小学生時代は大の苦手分野であり、何も思いつかないまま休みが終わる・・・なんてしょっちゅうだった。
ところが長男となると、何も言わなくても適当に電池やソーラーなどの道具を持ち出してきて、学校から電流計まで借りてきて毎日なにやら観測をしていた。

私にないものを持っているというだけで、大げさに言えば尊敬に値するほどなので、「頑張っているな」と感心していた。

その後学校から帰ってきた長男が
「今日ね、賞状をもらってきたよ!」
と言って、現物をぱっと取り出して見せてくれた。
おお!おお!
見れば夏休みの自由研究が郡内の発表会で銀賞を取っている。

「すご~い!あんた、すごいよ!!よくやったね」
と褒めちぎる私。
やっぱ、好きこそものの上手なれ、我が子ながらちょっと鼻高々?

「で、他にも賞取った子はいたの?」
賞取った子なんて長男くらいなんじゃないの?と、高くなった鼻が天井くらいまで伸びてしまった私は、他に賞を取った子は誰もいないことを願いつつ聞くと、
「クラスのほとんどが銀賞だったよ。金賞取った子も何人かいたよ」
と、いともあっけなく言われてしまった。

「へ?な…なんだ。そう…なの?な、なあ~~んだ…」
とすっかり意気消沈の私。
結局、長男はその他大勢の一人に過ぎなかったというわけだ。
私の異様に伸びきった鼻は、ぽっきりとへし折られてしまったのである。

「お母さん、期待したでしょ?」
と、すっかりこっちの思いはお見通しの長男だった。
「そおよ~…」と、苦笑いをせざるを得なかった。

でも、頑張っていたことは確か。
来年また頑張って親を驚かせてほしいと願ったのだった。
あ、でもその翌年もそれほどいい成績はとれなかったので、しだいに長男の才能には限界があるのではないか?と怪しむ母親であった。

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