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「パンが好きな人も満足のやさしい物語~『うさぎパン』~」【YA52】

『うさぎパン』 瀧羽 麻子 著  (幻冬舎)
                                                                                                 2017.6.13読了

あけましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。

今年はうさぎ年。よって最初にご紹介する本は、うさぎがタイトルについた本にしました。

第2回ダ・ヴィンチ文学賞大賞受賞作であるこの作品。
ほのぼのとした読後感が残る、中高生にぜひ読んで欲しい一冊です。
 
女子ばかりの私立の中学校を卒業するまで過ごした優子は、初めて男女共学の高校に入り、自己紹介でパンが好きだと言ったことで、父親がパン屋をやっているという男子・富田くんと自然と仲良くなりました。
そんな優子は父親が単身赴任で海外へ行っているため、義母で父親の後妻のミドリさんと暮らしていますが、二人はとても仲がいいのです。
 
なぜなら、本当の母親は優子がまだ3歳のときに病死していたので死んだ母・聡子の記憶がなく、物心ついてからはずっとミドリさんがいっしょだったからです。
しかし、祖母はミドリさんのことをなぜかあまりよく思っていないらしいのです。
 
優子の成績があまり芳しくないことを気にしたミドリさんが、ある日いきなり家庭教師の大学院生を家に呼びました。
家庭教師の美和さんは、はじめはちょっと不思議な感じのする人でしたが、すぐに気が合いました。
 
それからというもの優子は、勉強のあと必ず学校でのいろんな話を美和さんにするようになります。
もちろん富田くんのことも次第に話をするようになりますが、盛り上がるうちに美和さんの彼といっしょにダブルデートに誘われてしまいました。
 
そして美和さんたちを眺めているうちに大学生のカップルに憧れる優子。
しかし富田くんは大学へは行かず、パンの修行にフランスへ行くと告げます。
 
「私は富田くんにとって、どのくらいの存在なの?」
「私よりパンが大事なのかな?」
 
その優子の気持がつい言葉の棘となって、富田くんへの態度に表れて二人は喧嘩をしてしまいます。
 
そのことも優子は美和さんに相談します。

しかし悩む優子に、「仲直りして!絶対彼を逃してはダメ」と諭してくれたのは、別の意外な人物でした…。
 
 


家庭教師の美和さんと話しているときに、突然起きるありえない事。
そして過去へと遡り、いつかの記憶がよみがえり、全てが理解できる優子。
 
だれも悪い人はいないし、だれもが愛おしい人ばかりです。
過去に納得して、優子は輝く未来へと歩きだします。
 
 
おだやかな中に進んでいく物語です。
途中からややファンタジーめいた展開にはなりますが、嫌な気持ちになる場面もなく、幸せな気分で読んでしまえると思います。
思春期の初めての恋にドキドキする感覚も愛おしいです。

ちなみにこのリンク先の出版社では、現在取り扱っていません。
私が読んだ本は文庫ではなく上の単行本でした。

現在、単行本自体は古書として取り扱っているところはあるようですが、主に幻冬舎で文庫本の形体で出ています。
表紙絵は全く違いますが、ほのぼのした感じはどちらの絵にも表れているかと思います。


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