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「平安時代の東北でおきた出来事を知っていますか?その中で育まれた青春物語~『羽州ものがたり』~」【YA⑰】

『羽州ものがたり』菅野 雪虫 著 (角川書店)
                           2018.2.3読了

時は平安の頃。坂上田村麻呂の蝦夷征伐のあとのお話です。
日本海側、今の秋田県あたりを昔は羽州と呼んでいました。
 
羽州の村の長の娘ムメは、たった一人で村外れで暮らす男の子、カラスとともに遊んでいました。
ある日都から、以前羽州で暮らしたことがあるという役人、小野春風が赴任してきました。
春風といっしょにやってきたその息子、春名丸は初め、田舎に来るのが嫌でたまりませんでした。
 
しかしある日起こった事件で、春名丸はムメとカラスに体を張って助けてもらったたことにより、この三人は急速に仲良くなるのです。
 
それに元々、羽州の人々に対して親しみを感じていた春風も、ムメが美しくて賢いこと、カラスの誰にも染まらないが生きる術を持ち合わせている人柄に感心し、春名丸に学ばせることも多いと感じてムメとカラスをとても可愛がっていました。
 
しかしある日突然、春風が都に戻らなければならなくなります。
穏やかだった日々も、その後羽州を襲った干ばつと飢饉、そして地元の城主の過酷な税の取り立てに苦しみ怒る村人の心に抑えきれないものが芽生え、危ういものに変化していくのでした。
 
そしていよいよ起こった「元慶の乱」。
この乱を鎮め、羽州を治めるためにふたたびやってきた春風たち。
 
しかし再会した三人の若者は、以前とは違う立場で出会うことになるのです。
 
大きな危機が三人を襲います。
しかし、幼い日々をともに楽しく過ごした彼らの絆は、簡単に壊れるものではありませんでした。
いったい三人は、羽州の危機をどう乗り越えるのでしょう…。
 
 
この著者の作品を初めて読みましたが、展開が途中からガラリと変わり一気に読ませてくれました。
歴史ものがあまり得意ではない私ですが、初め坂上田村麻呂とかの名前が出てきた時はやや不安でしたが、全く堅苦しいものではなく、すごく読みやすかったです。
 
物語の出だしは、幼馴染とよそ者が出会うというありがちなパターンではありますが、春風やその妻、ムメの父や祖父たちの子どもたちを見る目が暖かく、やわらかい気持ちで読み切ることが出来ました。
かつて東北で起きた戦乱など、これまで知る由もなかった私ですが、読みやすい物語にからませた歴史的事実を理解できる良書だと思います。


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