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「駅と人は線路でつながり奇跡を生むのね~『阪急電車』~」

『阪急電車』 有川浩 著  (幻冬舎文庫)
 
あ~…この作者はつくづくロマンティックな話が好きなんだなぁと、そしてこの小説を読んでほんわかした読後感に浸っている自分も、つくづくこういう話が好きなんだなあって思いました。
 
阪急沿線の各駅で繰り広げられる様々な乗客のエピソードが、往路復路と語られていきます。
 
図書館でいつも読みたい本がある男性。棚からその本を取ろうとしたすんでのところで、よく見かけていた彼が気になっていた女性から横取りされてしまいます。
その彼らがどうやって親しくなっていくのか?
 
とても美人の女性が、そこそこ普通なタイプの同僚に婚約者をとられてしまいます。
そこで、彼らの結婚式での決死の討ち入りを決行した女性は、その帰りに電車で出会ったある年配の女性の一言でカチカチだった氷の心が融かされます。
今後の彼女の穏やかな生き方を見つけるまでにいたる街並みの偉大さが印象深く残ります。
 
孫を猫かわいがりしない年配女性。
 
また暴力的で短気な男性と別れる覚悟をした女子大生と、その決心をさせてくれた年上のちょっぴりおバカだけど優しい彼とのエピソードを友人たちと語る女子高生。
 
わりとイケテル見た目なのに奥手の大学生と名前にコンプレックスをもつ同じ大学に通う女の子のかわいい恋。
 
いわゆる大阪のおばちゃんの集まりからなかなか抜け出せない主婦の葛藤。
 
短編で語られるエピソードと登場人物が同じ沿線の各駅でつながっています。
人のつながりと沿線のつながりという、うまい構図で描写されており、それぞれの物語も先はいったいどうなるのだろうとページをめくる手が止まりません。
 
どれもなるほどな~と心動かされるエピソードばかりです。
本のこちら側から、登場人物たちにエールを送りたくなりました。
すべてがいい方向へと解決していくのがいい!
こううまくいくわけがないと思うけど…実際のところ。
でも小説ですもの。フィクションですもの。
せめて、物語の中ではほっと安心する終わり方をじゅうぶん味わいたいですよね。
 


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