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荀子 巻第十八成相篇第二十五 3 #2

前回は、聖王堯と舜の話しでした。
続きです。

堯に徳あり、心力を労し、干戈かんか用いずして三びょう服し、舜をけん(畎)より挙げてこれに天下を任じてみずからは休息す。后稷こうしょくを得て、五穀[繁]殖し、楽正がくせいと為りて鳥獣も服し、せつは司徒と為りて民は孝弟を知り有徳を尊ぶ。禹に功あり、鴻(洪水)をとどめ下す。民の害をひらき除きて共工をい、北のかた九河をきりひらきて十二しょを通じ、三江を疏[通]す。

(金谷治訳注「荀子」岩波書店、1962年)

心力→心の働き。精神力。
労→はたらく。つとめる。仕事をする。
干戈→武器。また、武力。
三苗→(注より抜粋)国の名。
甽畝→畎畝→②はたけ。たんぼ。田園。また、いなか。農村。甽は畎と同じ。
五穀→①5種類の穀物。ふつう、米・麦・あわきび・豆をいう。②穀物の総称。
殖→ふえる。ふやす。動植物がふえる。そだつ。また、財産などがふえる。
楽正→楽官の長。
司徒→中国古代の官名。 司馬、司空とともに三公の一つ。 人民の戸籍、教育、厚生などをつかさどったもの。
孝弟→父母に孝行で、兄によくしたがうこと。
鴻→④大きい。⇛洪。洪→おおみず。川や湖が氾濫すること。
辟→除く。しりぞける。
共工→①官名。(イ)舜の時、百工の事をつかさどった官。
九河→黄河デルタ。
決→⑨おさめる。
渚→す。なかす。河川や湖の中にできた小島。
通→とおる。とおす。つらぬく。つきぬける。とどく。
疏→とおる。通ずる。通じさせる。=疎
三江→①揚子江下流域の三つの川。
拙訳です。
『堯には徳があり、心の働きかけで、武力を用いずに三苗国を征服し、舜を田舎から登用して天下の政治を任せ自身は休息した。舜は后稷こうしょくを採用して穀物の収穫を増やし、を楽官の長に任命することで鳥獣までが服従し、せつは司徒となって教育を施し、民は父母に孝行で兄によく従うことを知り、徳のある人を尊ぶようになった。禹には功績があり、洪水を抑制した。民衆の害を退けて除き、(仕事をしない)共工を追い払い、北の黄河デルタ地帯を治めて黄河の十二の中州を貫いて、三つの江を通じさせた。』

前回に続き、堯と舜の話、さらに今回は禹についての説明が加わりました。
舜を助けた人として、后稷こうしょくせつの三人が登場してきます。后稷こうしょくは農事に優れ収穫量を増やし、は楽官の長となると、具体的に何をどうやったのかは想像もできませんが、結果として人はもとより鳥獣までも従えさせてしまいす。せつは教育者として民衆を導き、孝弟の大切さ有徳者への敬意へとつなげ、民度を上げていきます。これだけで小説ができそうです。
禹については、次回に譲ります。

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