荀子 巻第三非十二子篇第六 1 その3
前々回「その1」から続いて今回は「その3」、墨翟と宋鈃を非るところから始めます。
天下を一にし国家を建つるの権称(衡)を知らず、功用を上(尊)び倹約を大(尊)んで差等を■1り、曾ち以て辨異を容れ君臣を県つには足らず、(「荀子」岩波文庫 金谷治訳注)
権称→①はかり。②重さをはかること。
功用→①実際の役に立つこと。実用。
■1り→漢字は人偏に曼
辨異→①(尊卑の別などを)わかちただす。②物事の相違点を明らかにすること。
拙訳です。
『天下を一つにして国家を建てることの重要さをはかれず、実用と倹約を尊ぶ一方位階の差を侮り、すなわち君臣の別を分かち正すには不足がある、しかしその説には理由もあり、筋も通っているので、愚かな大衆を欺き惑わすには十分、それは墨翟と宋鈃である。』
墨翟は、『墨攻』というマンガで知っていました。荀子は墨翟と宋鈃に対し、国家を建てるはかりが不十分、序列があいまいだと論難しています。
法を尚びながら法なく、脩[為]を下りながら作[書]を好み、上は則ち聴を上に取(索)め、下は則ち従を俗に取め、終日言いて文典を成すも反紃(順)してこれを察すれば則ち倜(超)然として帰宿する所なく、以て国を経め分(本)を定むべからず、(同)
脩→②おさめる。おさまる。ととのえる。「脩身」
聴→ ②ゆるす。ききいれる。
倜然→③疎遠な様子。
拙訳です。
『法を尊ぶとする一方で法を守らず、学を修めることを侮りながら一方で書を好み、上位者には許しを求める一方で下位者には許さず従属を求め、日夜かけて文典を作成したが内容を細かく見れば疎遠で結論が無く、国を治める本にはならない、しかしその説には理由もあり、筋も通っているので、愚かな大衆を欺き惑わすには十分、それは慎到と田駢である。』
慎到は、「荀子」を読む端緒となった宮城谷昌光著「奇貨居くべし」にも登場していました。荀子は慎到と田駢の説には矛盾があり、国を治められるものではないと否定しています。
先王に法とらず礼儀を是とせずして好んで怪説を治め琦辞を玩び、甚だ察なれども急ならず辯ずれども用なく事多けれども功寡なく、以て治の綱紀と為すべからず、(同)
怪説→あやしい言説。変わった言論。奇怪な話。
琦辞→普通と変わったことば。常識はずれの言説。
拙訳です。
『過去の聖王にならわず礼儀をも認めず、好んであやしい言説を学び常識外れの言説を玩び、その内容は非常に細かいけれどすぐに必要なことではなく、弁じても用いるべき内容はなく、やる事は多いが効果は少なく以上のことから国の規律にはならない、しかしその説には理由もあり、筋も通っているので、愚かな大衆を欺き惑わすには十分、それは恵施と鄧析である。』
その1にて、恵施は弁舌家、鄧析は詭弁家と紹介しました。踏まえて、荀子は二人は変な説を言うだけで中身がないとこき下ろしているんですね。
ここまででやっと5グループ、10人まで来ました。まだまだ続きます。明日以降も格闘します。
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